54 エリー湖
丘の越えてしばらくいくと、森に囲まれた湖が見えてきた。
あれがエリー湖だろう。
丘を越えるといっても、街道よりはかなり標高が高い位置にあるはずだ。
そう、なだらかな山の一部がくぼんでいて、その一部が水をたたえているというイメージだ。
広さは、20〜30k㎡ぐらいだろうか。ところどころ森の切れ目のような場所があり、おそらくそこが教えてもらった狩場であろう。
「幸い、今までリザードマンとかには会わなかったけど、こっからは未知の領域だし、彼らの巣のある方へ向かうことになるから、特に気をつけていこう。」
バーンはそういいながら、丘陵をゆっくりと降りていく。
しかし、この見晴らしといい気持ちの良い風といい、魔物さえでなければ、ものすごくいいポイントである。シルヴェストル達も気持ちよさそうに踊っているのが、ちらほら見える。
ティルクもかなり気持ちがよさそうだ。
・・・
丘陵をおりると左右を森に囲まれた道にでた。
街道のように整備された道ではないが、おそらく何度も人などが通って草などが生えにくくなっているのであろう。
「この道沿いでいいんだろうな。荷車のあともあるし。」
そういいながら森の中を進む。時々、遠くに角ウサギや小猪をみかけるが、流石に狩るのは難しい。
それに、下手に茂みに入らぬようにネールから釘を刺されていた。
まれに、陸に上がったガーアリゲーターが、茂みに潜んでいる場合があり、運悪くそれに気づかずに茂みにはいると、大けがを負う可能性があるのだ。
しばらく進むと、湖畔が見えてきた。
流石に道はまっすぐというわけではないし、途中段差やぬかるみがあるなどの歩きにくい場所はあったが、難所というほどではなかった。ただ、荷車などだと大変なのだろう。
湖畔の岩場には、巨大な鰐が何匹か登って寝そべって日光浴をしている。
大きな口からは鋭い歯が見え、特に中ほどの上顎からは牙といってよい歯が2本生えている。
「あれね・・・」
一番大きなガーアリゲーターにむけて、少し背をおとしながら、ゆっくりと接近していく。
ガーアリゲーターは、水中にもぐって獲物を狙う習性から眼の位置がやや上の方についてり、視界が狭いらしい。
何匹かのガーアリゲーターは、フェル達の接近に気づき、水中に潜っていくが、狙うガーアリゲーターはいまだ気づいていないようだ。
「いくわね。」
投げ縄を投げるのはクリスだ。
隣では、フェルも縄を投げる準備をしている。
一投でうまくいかなかった場合に、すぐに第2投ができるようにしているのである。
バーンは、戦闘ではほとんど役に立たないのが定番となっており、周りの警戒要員を自らかって出ている。
クリスの一投が、ガーアリゲーターの口を見事に縛り上げる。
しかし、ガーアリゲーターが大きく首を振ると、逆にクリスが引っ張られ、体重を崩す。
「バーン!手伝って!!」
たまらず叫ぶと、バーンも投げ縄をつかむが、それでもガーアリゲーターは大暴れをしてしまう。
「くらえ!!」
そういうとフェルは剣を抜き、後ろからガーアリゲーターに馬乗りになり、頭蓋の上から両手を打ち付けるように剣を突き刺す。
剣は、ガーアリゲーター頭蓋骨を突き破って深々と刺さった。
一瞬大きな反動がおこり、フェルは投げ出されそうになるが、その後は痙攣をおこしてやがて絶命した。
「ふぅ・・・緊張した。」
鰐の類は、強力な咬む力に対して、口を開く力は驚くほど弱い。
そのため、投げ縄で口を縛られると、口を開けることができなくなる。
しかも後方は完全に死角になるうえ、頭蓋は熱い鱗がないため、馬乗りになってそこを攻撃をするのが有効なのだという。
ある意味では予定通りなのだが、それでも聞いていた力と実際の力はかなり違っていた。
あそこまで暴れるとは思っていなかったので、フェルもかなりの躊躇した。
今のガーアリゲーターが暴れたことで、大部分の獲物が水中に避難してしまったが、それでもまだ数匹は日光浴をしている。
「今度は、交代しよう。」
そういうと、今度はフェルが1番縄を投げる。
今度も口に投げ縄がかかるが、逆に奥までかかりすぎて首を絞める形になる。
このままでは、口を塞ぐことできておらず、近づくと危険だ。
「しまった。」
フェルがそう言うと、クリスが続けて縄を投げる。
しかし、暴れている物のうまく投げ縄をかけるのは難しい。
輪はガーアリゲーターの右足にかかるが、口を防ぐことができなかった。
「バーン、クリスの縄をもって、奥へ。クリスはクロスボウで攻撃して!」
とにかく、水辺に逃がさないために反対側引っ張ることが必要だ。
しかも、うかつに近づくのは逆に危険なので、多少の時間はかかっても、遠距離での攻撃しかない。
このパーティで一番最適なのは、クリスのクロスボウだろう。
「おまたせ!」
そういって、クリスはクロスボウを準備する。
流石にすぐにというわけではないが、以前よりはかなり、早く弓を引くことができるようになってきている。おそらく40秒ぐらいか・・・。及第点である。
今回は、暴れてはいるものの縄で捕縛されているのでかなり近くまで近づくことが出来る。
ズシャ!!
クロスボウの矢が頭蓋を貫く。しかし、動きは鈍るが、まだ動きが止まらない。
第2射を放つと、ガークロコダイルは動かなくなった。
念のために第3射をうって反応がないことを確かめてやっと力を抜いた。
「いやぁ・・・ごめん。やっぱり甘くないね。」
「まぁ・・・初めてだからね。でも、まぁ・・・なんとかなったわね。」
そういって、クリスは矢を抜き、フェルが”転送”を行う。
実際に、力も使ったのだが、それ以上に疲れを感じていた。
「2匹狩れれば十分だろう。あまり欲張らずに撤収しよう。」
そういって、周りを見渡すとバーンが撤収を提案する。
まだ、狙えそうな獲物はいるが、深追いをしないようだ。
うまくいっている時こそ、しっかりと引き際を見極める能力と勇気というのは、意外と難しい。
そういう面では、バーンはリーダーの資質を備えていた。
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