48 ゴブリン退治だって、新人には大変なんです1
4番の廃坑へ向かう為に、宿を出たのはまだ日が昇る前であった。
昨日のうちに頼んでいた堅パンを軽く食べながらの行程だ。
日が昇る前に向かうのは、相手の警戒が薄いこともあるが、討ちもらさないためだと説明を受けた。
ゴブリンは、繁殖力が強いので、しっかり殲滅しておかなければすぐにまた増えてしまうのだ。
昼間では、狩に出ているなどで討ちもらしが発生してしまう。
かといって、夜間の移動はこちらもリスクが高い。
そのため、明け方がベストのタイミングなのだ。
「説明があっていれば、今回の廃坑はそこそこの規模だが、居住区が構えられている可能性が高いのは、入り口付近と少し奥にある2箇所の休憩所だろう。
正確の数はわからんが、運がよければ数匹・・・多くても20匹といったところか・・。
いや、50匹いてもおかしくは無いから、あまり過信はするなよ。なにせゴブリンだから。」
宿を出る前に、簡単な作戦がエドガーからされた。
今回は、出口が1箇所しかなく狭い炭鉱なので、“炙り出し”を行なうらしい。
狭い構内では、十分に剣を振るったりできないし、弓などは誤射のリスクが高くなる。
多数対少数の場合、一度に相手に出来る人数を減らすのは定石ではあるが、こちらが実力を十分発揮できるというのが大前提である。
そこで、入り口で焚き木をたき、煙を炭鉱内に送り込むことで、火事と錯覚させ“炙り出す”のだ。
・・・・
4番炭鉱に着いた時は、ちょうど空が白ばみはじめた頃であった。
洞窟の周りは、なにやら火を炊いた後などがあり散らかっているが、人影はない。
「ここに間違いないな。」
エドガーはそういうと、入り口近くにゆっくりと近づき、来るまでに集めておいた葉のついた小枝を何本か積上げ、その下にぼろ布を置く。
「クリス。ここに縄と杭を打てるか?静かにだぞ。」
リュークはその間に、炭鉱の入り口の両サイドに杭をうたせ、その間に縄をはわさせた。
「クリスとフェルはあそこの茂みから飛び出したやつらを弓で射てくれ。
バーンは、俺たちと炭鉱の入り口の横で待機だ。
乱戦になるまでは、俺たちで対応するが、乱戦になったら対応をしてくれ。
落ち着いて対応すれば、1対1なら、バーンでも問題ないはずだ。」
各自が作戦位置につき、クリスとフェルが弓を構える。
今回のフェルの弓は、ギルドで借りた中古の合成弓だ。
基本の木材に、動物の腱や銅の金属板を張り合わせて作られており、今までの小弓とは比較にならないぐらいの強力な張力がある。
本当は、新しいものを買おうかと思っていたのだが、練習にあわせてフェルが引ける弓の張力が伸びているため、今回の依頼の間だけ適度なものを借りたのだ。
中古といっても、一応はギルドが貸し出すものなので、不具合などは確認済であるから、そこまで悪いものではない。
フェル達の準備が整ったのを確認すると、エドガーが、着火の魔法でぼろ布に小さな火をともすと、その布を大きく振り回す。すると、空気を取り込んでぼろ布が一気に燃え上がる。
それを、焚き木の下に掘り込むと、木がいぶされて煙が立ち込め始めた。
しっかりと乾燥されていない木というのは、燃やすとかなりの臭いと煙がでる。
煙が目に入ると、涙がでてくるアレだ。
しばらくすると、ギャギャギャっという騒ぎ声と共に、数匹のゴブリンが奥から飛び出してきた。
廃坑の外から視認できる場所まで来た瞬間、フェルとクリスの矢がゴブリンに襲い掛かる。
「ギャッ!ギャッ!!」
悲鳴ともとれる声と共に、2匹のゴブリンが倒れこむ。
何が起こったかわからなかったのだろうか、他のゴブリンは崩れ落ちたゴブリンを押しのけるようにして出口に向かう。おそらくは、寝起きであったこともあり錯乱しているのかもしれない。
フェルの第二射が炭鉱目掛けて飛ぶが、残念ながらゴブリンにはあたらない。
洞窟は、自然の風が少ないし、他のメンバーもいるので特に精霊に依頼はしていない。
洞窟から飛び出そうとした先頭のゴブリンは、入り口に張られた縄に気づかずに足を引っ掛けて転倒する。
「ギャギャギャッ」
その上に突然倒れた同胞を回避できなかったゴブリンが覆いかぶさる。その数4匹。
倒れたゴブリンの左右から、エドガーの剣とリュークの槍が襲い掛かった。
坑道の入り口付近に6匹の死体が積みあがる。
その後、全員がしばらく待つが、奥からゴブリンが現れる気配はなかった。
念のために、バーンが全てのゴブリンの心臓を剣で貫く。
これは、一時的な失神や、死んだふりなどをして逃げる者がでることを防ぐために必要なことである。
「これで終わりかしら?」
クリスがクォレルを回収しながらエドガーに尋ねる。
あまり何度も使用した矢を使うことは良くないが、金属製のクォレルは貴重なので、できる限り再利用する。
「いや・・・。おそらく坑道の奥にもいやがるな。外の状況に対して死体が少ない。」
今回燻した木の量では、奥までは届かない。
炭鉱すべてに煙を充満させようとすると、とてつもない火の量になるし、それでは、あとで自分達が討伐確認に炭鉱を探索するさいに邪魔になる。想定する数の半数から1/3程度が、苦労もケガもなく討伐できたのだから、これはこれで良しとすべきであろう。
「よし、じゃぁ坑内にはいるぞ。
灯りは、俺とバーンで分けて持つ。前衛は俺たちがいく。こっから先は誤射をふせぐためにも弓は締まってくれ。」
フェルはうなずくと弓とクロスボウを“転送”し、抜刀をした。
「それ・・・、本当に便利だな・・・。」
リュークはその様子を見て、そうつぶやいた。
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