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僕は、魔法が使えない。  作者: アーシェス
44/106

44 薬師

「素材購入、依頼報酬すべてあわせて金貨31枚だな。報酬ポイントでいいか?」


岩蜥蜴は、尻尾がそれぞれ金貨5枚と6枚。胴体が10枚の買取金額であった。

一人あたり金貨9枚ちょっと。なかなか良い稼ぎである。

ただ、岩蜥蜴は積極的に人を襲わないこともあり、評価ポイントは僅かしかなかった。

魔物の強さや討伐難易度と評価は必ずしも正比例するものではないらしい。


「あと、依頼の分の評価ポイントは、依頼主からの評価をもらってから反映するからな。」

依頼の評価ポイントは、依頼主の満足度によって上下する仕組みらしい。

通常問題なく依頼をこなした場合の評価がB。

それに対してA評価は、依頼主が満足度が高い場合に適用されるが、1割増の追加報酬をギルドに払う必要があるため、なかなか無いらしく、C評価もクレームやトラブルなどの場合につけるものであるが、C評価を乱発するような依頼主は依頼を受注してもらえなくなるので、こちらもそう多くはないらしい。




「そういえば、この肝は、薬の材料に使うという話でしたよね。ということは、依頼主の方は薬師の方ですか?」

バーンは、何気なく問い合わせたが、ネールは苦笑する。

「基本的には、ギルドには守秘義務があるから、依頼主が希望しない限りは、依頼主のことを明かすことは出来んな・・・。ただ、今回は相手も急いでいるようだったから、すぐに使いを出しているから、そのうち来るんじゃないか。」

たしかに、いくら受注者とはいえ、依頼主の情報をしゃべるようなことは出来ない。

だが、ハンターが個人的にギルドに来た人に話しかけるのは自由だ。


バーンは、自分の見たことも聞いたこともない薬材がどのように使われるのかに興味があるようで、受取人に会いたいと2人に頼む。

特に、断る理由もないし、バーンが珍しく力をいれるため、3人は依頼主を待つことにした。


その間、フェル達は訓練依頼の方向性を決めるため、岩蜥蜴とのやり取りについてネールと話をすることにした。前回の訓練のキツさを思い出すと嫌だが、間違いなくフェル達のレベルアップにはネールの指導は近道だ。


「そうなんですよ・・・。僕の弓では岩蜥蜴の皮膚に負けてしまって・・・。」

「まぁ・・その弓じゃぁなぁ・・・。眼などの急所にでも当たらん限り、ちょっと無理だな・・。」

「剣を使おうにも、岩蜥蜴って素早いうえ、直ぐ逃げるから近寄るのが難しくって・・・」

「なるほどな・・・。じゃぁ、次は剣と一緒に弓もみてやるか。」



そんなやり取りをしていると、ギルドのドアが開き、白髪の老人がはいってきた。

ネールが、バーンに目配せをする。


「はい。岩蜥蜴の肝の依頼ですが、さきほど入荷いたしました。直ぐに確認されますか?」

若い受付の方が、ネールから肝を預かり、老人に渡す。

「おお、助かった。岩蜥蜴の肝なんぞ、何処にも売っとらんからなぁ。ただ、これがないといかんかったんじゃ。感謝するぞ」

そういうと、依頼完了報告にBのサインをする。


“肝“を受取った老人が帰ろうとするのを見て、バーンがすかさず声をかける。

「すみません。私、バーンと申します。いきなり声をかけさせていただき申し訳ございません。

私、薬師を目指すものなのですが、大変失礼ですが、高名な薬師の方とお見受けしてお声をかけさせていただきました。」


老人は、急に声をかけられて驚いたが、『高名な薬師』といわれて、まんざらでもなさそうな表情をする。


「いやいや、薬師には違いないが、さほどの者ではないぞ。

ただ、ちぃとばかし歳をとっておるがな。そうか、お主も薬師を目指しておるか。」


回復魔法のあるこの世界では、薬師は比較的マイナーな職業である。

回復魔法は万能ではないのだが、それでも事故やケガなどの外傷はほとんど回復魔法で直るし、効果も眼に見えてわかる。そのため、医師という職業がない。

薬というものは効果が遅く、しかも様々な得体の知れないものを混ぜたものを飲まされたりする。値段も決して、安くはない。

医術が発達していないため、その薬の価値を正しく判断できるものがいないのだ。

そのため、即効性のある“魔法薬<ポーション>”だけがもてはやされ、高値で取引される一方、一般の街では、普通の薬は誰もが知る”解熱剤“や”鎮痛剤”以外はあまり売れない。

なので、薬屋というのはあまり無いのだ。


「して、どうした。」

どうやら、薬師を目指すというバーンに老人も興味を抱いたようだ。


「はい。実は、今回岩蜥蜴の肝を採取したのは私たちなのですが、お恥ずかしながらその使い道が全くわからず、興味を持ち、声をかけさせていただきました。

いきなりで、不躾なのですが、その薬効や使い方を教えて頂けないかと・・・・」


老人は、ちょっと驚いてバーンを見つめる。

言葉は丁寧だが、いきなり初対面の商売敵になるかもしれない相手に対して、秘伝ともいうべき薬効や調合などを聞こうとしているわけだから、言葉通り不躾である。


バーンは、腰を90度近くまで折り頭をたれている。

しばらく、バーンの様子を見て黙っていた老人は、バーンの肩を軽くたたいて話しかけた。


「頭をあげなされ。

なかなか若いのに、大した志じゃないか。ただ、薬師っていうのは楽ではないぞぃ。

わしも歳だし、教えてやってもいいが、いくつか条件がある。」

「な、なんでしょう。」

バーンは、その返事を聞いて、興奮した様子で顔をあげる。


「1つは、うちの調合を手伝うこと。わしも歳なので、ちょっと力仕事は疲れるんじゃ。

もう1つは、基本は教えてやるが、最後は自分で考えること。これは、本当に薬師を目指すつもりならなぜかはわかろう。そして、最後は、教えたことは秘密としてわしが店をたたむまでは商いで使用しないこと。」


「あ、ありがとうございます。」

そういうと、バーンは再び大きく腰を曲げて頭をたれた。


3つの条件は、どれも魅力的であった。

1つ目は、手伝いといいながらも、ベテラン薬師の技を見たり指導を受けられるということだし、2つ目や3つ目は自分の商売敵を増やさないために、当たり前のことを言われただけである。

バーンは、まだ店を持つ目処はたっていないし、老人の年齢を考えれば3つ目の約束もそんなに厳しい制約ではない。


あとの問題は、バーンが今フェル達のパーティに所属していることである。


「フェル、クリス。すまん。

折角パーティーを組んでもらったのだが、私は薬師としての修行をしたい。

店の準備金は返すので、離脱させてもらえないだろうか。」

そう切り出したが、あわてて老人が静止する。


「まてまて。そこまですることはない。

弟子を獲るわけじゃあるまいし、手伝うといってもせいぜい1週間じゃ。

わざわざパーティーを離脱してまでのことを教えてはやれんぞ。」


老人は、パーティーを解散してまで教えを請おうとするバーンの熱意とやる気を見て若い者も捨てたものではないと関心するのであった。

いつも応援ありがとうございます!

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