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僕は、魔法が使えない。  作者: アーシェス
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40 必殺技の開発2

「ただいまー。」

クリスは、街はずれの自宅に戻っていた。

丸太で作られたさほど大きくない家で、家の入口は納屋のようになっており、弓矢や様々な罠などの狩猟道具が丁寧に置かれていた。

「おかえり。」

そういって迎えてくれたのは精悍な中年男性-クリスの父親-だ。

いかにも狩人という鍛えられた上半身をしているが、片目は眼帯をしており、片足を引きづって歩いている。


これが、クリスがハンターになった理由であり、お金を稼ぐ必要がある理由である。

クリスの父は、優秀な狩人だったのだが、数年前灰色熊に襲われ、一命はとりとめたものの右目や右足に深い傷をおってしまったのだ。


命は助かったものの、今までのように狩りをすることができなくなったため、今では夫婦で皮なめしの仕事をしているのだが、収入は激変してしまったのだ。

長女であるクリスは、15歳で成人をした際に、なんとか家計を助けたいという思いでハンターになることにした。両親には反対されたが、このままでは食べ盛りの二人の弟をふくめて5人の生計を維持していくには、できるだけの高い収入がいる。

そのために、リスクはあるものの学やコネがなくとも高収入が可能なハンターを選んだのだ。


幸い、狩人の道具はハンターでも使えるものも多い。

一番の主力の弓は残念ながら使いこなせなかったが、ナイフに罠などはそのまま使えた。


一番の悩みであったパーティも、おかしな奴らにからまれることなく、うまく結成できたし、新米パーティにもかかわらず、意外と稼ぐことが出来た。

クリスは、「生活費の足しにして」と金貨10枚を母に渡す。

金貨10枚は皮なめしの仕事の1か月の収入に等しい金額だ。


驚きとともに何かやばいことに手を出していないかと心配する母だが、新しいパーティに採取のうまい仲間がいることや、大型の猪を狩った報酬が手に入ったこと、自分もちゃんと必要なものを買うお金を別にもっていることを話すと、感謝をしながら受け取ってくれた。

ただ、あまり危ないことをしないように注意は受けたが・・・。


クリスは、父に罠や吹き矢がすごく役に立っていることを話すとともに、もう一人の仲間が小さな弓を使っていることと、自分も弓を使ってみたいがこの家にある弓では大きくて使えないことなどを話をしていた。

クリスの父は、自分が教えたことが娘の役に立ったことを喜ぶ一方で、コボルトや魔猪などと遭遇して戦っていることに対して、複雑な表情をみせていた。



翌日、クリスは弟たちに勉強を教えることにした。

勉強と言っても、字の読み書きと簡単な計算のような基本的なことだ。

しかし、これが出来るかどうかで、人生は大きく変わってしまう。

ハンターになるのにも、最低限の読み書きは出来ないといけないのだ。

商家などに勤めるには、さらに様々な基礎学力が試されてくる。

逆に、文字の読み書きができないと肉体労働か低賃金の仕事しかなくなってしまう。

できるだけ、自分の人生を自分で選べるようにするためにも、勉強は必要なのだ。



昼過ぎに、外出から戻ってきたクリスの父はクリスを呼ぶ。

その手には、使い古されてはいるが、クロスボウとその矢があった。

「狩人の仲間で、使っていない道具を貰ってきた。

古くなっているが、ちょっと整備をすれば、まだ使えるはずだ。

弓ほど連射はできない・・・というか一撃しか打てないが、これなら腕力がなくても弓を引けるし、一撃の威力も高い。これなら、戦力アップになるんじゃないか」




・・・・・




バーンは、宿の部屋で採取して売らなかった草や樹皮を石とすり鉢ですりつぶしながら、いくつかの薬を調合していく。疲労回復の薬や湿布薬などフェルに配った薬の他、クリスに依頼されている吹き矢に使う痺れ薬などを作っていく。

この薬は、効果が遅効性であるが、肉などに汚染することがないためなかなか使い勝手が良いようだ。

昨日の打ち合わせでは、フェルの矢にも塗布できるように矢筒の底にスポンジ状のものを入れて液をしみ込ませるようにすることを決めていた。


バーンは、手書きの紙を束ねて作った本を見ながら、今の自分で作れそうな調合を考える。

この調合は、修行に出る際に渡されたバーンの父からの贈り物であり、調合のバイブルである。


バーンの家は、王都の家で大手の薬屋をしている。バーンはその家の7男。

裕福な家庭に生まれたとはいえ、流石に7男ともなると店を継ぐこともできないので、自分のしたい仕事ということで選んだのが、父と同じ薬師の道だった。

何度も聞かされた父の立身物語に憧れ、この道を選んだ。

わざわざ自分の事や父の事を知らない街を選び、容易に帰れない環境にまでしたのだ。


「試してみるか・・・」

そういって、めくったページにあったのは傷薬だった。ただし、”魔法薬<ポーション>”の。




・・・・・




フェルとティルクは、街から1kmほど離れた荒地に来ていた。

流石に、ここまで街に近いと盗賊も魔物もまず発生しない。

「あ、これとかいいかな。それもかな・・・・」

そういうと、ティルクに次々と”転送”を依頼していく。


”転送”はかなりの容量が入るが、収納魔法<ストッカー>はそこまで沢山の容量はないらしい。

そのため、人前であんまりとんでもない量を”転送”することは出来ないが、命には代えられない。

今度、赤毛熊のような敵が出た時には、自重してはいられないのだ。


そのために昨夜二人で決めた必殺技なのだ。

凄い魔法や必殺の剣技などカッコいいものではない。

フェルとティルクならではの技であるが、有効なはずだ。


「使わずに済めば、それに越したことはないけどね。」

そう言って、何度も技のテストをする二人だった。













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