04 妖精の倉庫
「ひぇー。血まみれだよ。」
「血も滴る良い男ね。」
フェルが、絶命した大狼の下から剣をぬきながら出てくる。
次の瞬間、支えていた根がしぼんでどさっと大狼が地面に打ち付けられた。
「ありがとう、ドリュアデス、あとシルヴェストルも」
フェルは、血をぬぐいながら、森に向かって話しかける。その時、ふわっと風が起こり、フェルの黒髪を舞わせた。
「どういたしまして。だって」ティルクがそういってどこからともなく出した濡れたタオルをフェルに渡す。
渡すと言っても、タオルとティルクでは、タオルの方が少し大きいぐらいだから、フェルの手に落としたと言う方が正しい言い方かもしれない。
「助かるよ。」
そういって、顔や手についた血を拭きながらフェルはティルクに話す。
「相変わらず、ティルクは不思議だね。どこから、これを出してくるんだい?」
ティルクが、今までも飴などを手品のように出すことは度々会った。
飴玉ひとつと言っても、ティルクにしてみれば人間が巨大な球を出すのに等しい。
まぁ、そもそも妖精という存在自体がちょっと普通ではないみたいので、フェルは今まで気にもしていなかったのだが、このタイミングで濡れタオルというのは流石に驚いた。
「これ?これは私たちの家からよ。
私はこの世界と妖精の世界を行ったり来たり出来るの。
といっても、この世界 ―私たちはマナの世界って呼んでる― から、繋がっているのは、私たちの家だけなんだけど。だから、こんなこともできるわよ。」
そういうと、大狼の死体の近くにいくと指を鳴らした。
(といってもフェル以外には何も聞こえないのだが。)
すると、2ⅿはあった大狼の死体が跡形もなく消えた。
驚いているフェルにティルクが少し自慢げに言う。
「あたしたちの家の倉庫にほり込んでおいたわ。
このままおいておくのもなんだし、もしかしたら売れるかもしれないし。
あ、掘り込む際に、血はのけて掘り込んだから取り出したら血だらけってことはないから大丈夫。」
フェルは、ティルクの説明を聞いたが、良く理解が出来なかったようだ。
「すごいなぁ。妖精って力持ちなんだね。」
それを聞いて、ティンクは、指をチッチッチッチと横に動かしながら言う。
「んー。持っていくのじゃないのよ。わかんないかなぁ。
いーい?この術は妖精界とこの世界を繋ぐだけなの。だから、この世界で荷物を持ち運ぶわけじゃないのよ。そうねぇ・・・例えば、フェルの屋根裏部屋にいつでも帰ってこれる扉があって、そこにいつも荷物を置いておける感じ。必要になったらいつでもどこからでも部屋に戻ってその荷物を取ったり、そこに置いておける感じかな。」
ティルクは、フェルに教師にでもなったように話す。
「えーっ。それってすごいじゃん。じゃぁその屋根裏部屋の大きさってどれぐらいなの?」
「いや、屋根裏部屋じゃないんだけどね。私たちの家の倉庫は、大体フェルのお家3つ分ぐらいはあるわよ。ドラゴンだってはいっちゃうわ。まぁ、全部フェルが使っていいわけじゃないけど、今は半分も使ってないから結構自由にしていいの。」
「それって・・・ベットとか食料とか大事なお金とか全部もっていけるってこと?」
「持っていけるよ。普通の人でも原理は違うけど、ストッカーっていうのを使う人はいるよ。紋章にもよるけどね。まぁ、フェルは魔法が使えないからその代わりって思えばいいんじゃないかな。どうせ、普通の人には僕は見えないからね。他の人にはストッカーの魔法って説明しとけばいいんじゃない。」
「そっか。じゃぁ、僕もその部屋にいけるの?」
フェルは、期待をこもった眼輝かしてをしてティルクに話しかける。
「んー。それは無理だね。
生き物は持ち込めない。というか、空気とか言う概念が違うから生きていけないという方が正しいかな。」
それを聞いて、明らかに落胆するフェル。
「ただし、メリットもあるよ。妖精界ではこの世界のものが腐ったりしにくいんだ。」
「へー。それはそれで便利だね。でもそれって初耳なんだけど、どうして今まで教えてくれなかったの?」
ティルクは、不思議そうに簡単な返事をした。
「今まで使う機会がほとんどなかったし、聞かれなかったから。」
いやぁ、道具をいかに持たせるかって難しいですね。
やっぱり・・・四次元ポケット 欲しいなぁ