38 なんとか、誤魔化せたようです。
『収納魔法<ストッカー>??』
色々な人が驚きを見せるが、一番驚いているのは、受付のおばさんことマリーであった。
『え?・・・あの子は確か無紋のはず。
そう、まだ1週間しかたってないし、わざわざエラー修正登録をしたから間違いないはず。
魔法力検定だって、何も反応出なかったし・・・・。』
もちろん、マリーはベテラン受付嬢(?)なので声には出さない。
ハンターの個人情報漏洩・・・、特に紋については犯罪防止などのために登録の際に必要とするが、その後の確認はほんの限られた者しかできないような仕組みになっている。
しかし、明らかに不審な顔をフェルに向けている。
『やばい・・・かな。』
フェルはマリーの怪訝な顔を横目でチラッと見て冷や汗をかいていた。
そういえば、この受付のおばさんは”知っている”んだった・・・・
ティルクもちょっと嫌そうな顔をしている。
「おまえさん・・・Gランクだよな・・・。
なんで、そんなもんつかえる?」
ネールが確認してくるが、質問の意味が分からずにいた。
「魔法力検定・・・何も反応しなかったわよね??」
今度は、マリーさんがやってきて恐るおそる確認する。
「あ、はい。残念ながら・・・・・」
それを聞いて、マリーはホッとする。
「魔法水晶は、あのあとちゃんと起動する人がいたから、故障じゃないはず。
おかしいわねぇ・・・・」
色々と詮索がはじまる・・・マズいか・・・。
「いや、お前平然としてるが、意味が分かってないんだろ・・・・。
収納魔法<ストッカー>がつかえて、Gランクってのがおかしいのさ。それが使える魔力と実力があればFランクスタートのはずだからな。」
「そうなのよ・・・・。何か試験でおかしなことしたかしら・・・」
マリーはぶつぶつ言っているが、できればここはスルーしてほしいところだ。
「いや、間違いなく魔法水晶は反応しませんでしたし、僕は魔法とか使えませんし・・・」
「ねぇ・・・もしかして試験の時にも収納魔法<ストッカー>を使ってた?」
マリーの質問の真意がわからなかったので、どうこたえようか迷った。
ティルクの方を見てもどうこたえていいかわからない様子なので、ここは勘を信じることにした。
「ええ。旅のときに必要だった水やハンターになる前に狩った狼とかはいってるので・・・」
嘘はつけない・・・。真実の口があるのだから。嘘にならない程度の言い方をしなければいけない。
こういうことも、正式にではないが、飲みながらエドガーから教わっていた。
もちろん、普通の新人教育研修で教育する内容ではないし、エドガーも教えたつもりはないかもしれないが、”そういうこと”もひたすらしゃべり続けたのをフェル達はよく聴いていたのだ。
フェルはそういうと、大狼をさらに”転送”で出す。
『なに!さらに収納されてるのか!しかもこいつは・・大狼じゃないか・・』
別の驚きがネールの口から漏れる。ちょっと考え込んでいるが・・・
「いや、すまない。ちょっと小部屋の方にいこうか」
ネールは査定を同僚に指示すると、フェル達をつれて空いている小部屋に向かう。マリーも一緒だ。
なにかまずかったか・・・・。
「フェルだったか。実は謝らなければならん。
さっきも言ったが、収納魔法<ストッカー>がつかえれば本来Fランクスタートなんだ。
ただ、おそらくになるが、収納魔法<ストッカー>をフルに使っていたために、魔力が感知できなかった可能性がある。お前の収納魔法<ストッカー>はちょっと他の奴が使ってるのと異なってるしな・・。」
最後のは、物を取り出すときの動作の違いだろう。
「ええ。僕も何が違うのかわからないですが、ちょっと違うんですね・・・。」
「ああ、そうだな。なんというか、お前のは手品のようにパッとでたが、普通は異空間から取り出す感じだな。まぁ、そういう細部が違うことは他の魔法じゃよくあることだから、それはいい。いくら新米だからって、ハンターの能力や特技をあまり詮索しちゃいけないのは変わらんからな。」
フェルとティルクはそれを聞いてちょっとホッとした。
そうだった。ハンターにとって、弱み・強味を知られることは命にかかわる場合がある。
そのため、本人の同意なくしてその能力や特技などをあまり詮索しないことは、不文律であると習っていた。
「で・・・だ。問題は、本来なら試験の内容の間違いなら修正してしかるべきなのだが、ハンターの仕組みのなかで、ポイントの修正というのは簡単には出来ないようになっている。まぁ、それができると不正が出来てしまうからな。」
なるほど。それはそうである。
評価ポイントは、ハンターランク・・・すなわち自身の実力を表すものに直結し、貢献ポイントは言ってみれば現金そのものといっていい。
どちらも富と名声という貴重なものだから、簡単に修正できては困るのだ。
そのため、ギルド職員が不正ができないような仕組みがしっかりと組み込まれている。
「そこで、提案なんだが・・・。
評価ポイントは修正できないが、かわりにお前たちには、いつでもタダで研修依頼を受けてやる。
もちろん、空いている時だけだが。これで勘弁してもらえないか。」
そういって頭を下げる。
3人が顔を見合わせて、引き攣った笑いをしている。
たった1日だが・・・あれはキツカッタ・・・・。
ネールは真剣だし、実はそこまで悪い取引ではない。
ネールの講習はきつかったが、指導の仕方は理にかなっているし、今日の魔猪を狩れたのもネールの講習の成果は確実にあったといえる。
ちょっとした実力の差で生死が分かれることもある。指導者がいることはありがたいし、何より研修依頼の受講料は結構お高い。これがタダになるというのである。
だからといって、受けたいかと言えばまた別だが・・・。
マリーも祈るような眼でフェルを見ている。
いや・・・マリーは何も悪くないのだが、自身がミスをしたと感じているようである。
「ちょ・・・。ネールさん頭をあげてください。逆に怖いですよ。
さっきも言いましたが、僕は他に魔法を使えませんし、剣などの腕も知っての通りです。
赤毛熊の時もそうでしたし、今日だって結構ぎりぎりだった。
ちゃんと実力をつけてランクアップしていかないとむしろ危険なくらいです。
マリーさんだって、ちゃんと丁寧に対応していただきましたし。何も問題ないですよ」
「そ、そうか。そういってもらえると助かる。
悪いが、この件は他言無用で頼む。」
そういって3人に念を押したが、皆首を縦に振るしかなかった。
なんだかんだで、ネールは恩人なのである。それには逆らえない。
まずは、最初の目標 評価100Ptまであと少しです。
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