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僕は、魔法が使えない。  作者: アーシェス
21/106

21 メリアの森3

「じゃぁ、いってきますね。」

「ああ、頼む。正午には一度戻ってきてくれ」

野外活動試験がはじまって半刻ほどすると、試験管のフェスカが森の奥に向かう。

”見回り”である。

試験者の安全の確保や不正の防止、そして”採点”のための。


この試験は”野外活動”試験であり、採取試験ではない。

採取結果は配点の高い重要な項目であるが、そもそも採取というのは”運”の影響を排除できない。

ベテランのハンターや猟師でも”坊主”の場合だってあるのである。

植物系の採取も課題によって当たり外れがある。

そのため、受験生には知らされていないが、この試験では試験官による採点によって加点や一部減点をすることになっている。


フェスカは周りを見回しながら、受験生がどちらの方向にいったかを確認する。

すると、やや西の方角で何やらキノコを採取をしているバーンを見つける。

バーンはそれほど遠くには行かずにエドク茸の採取を選んだようだ。


「どう、調子は。」

「ああ、フェスカさん。エドク茸は5本ほど獲れました。」

そういって、バーンは麻袋からエドク茸を取り出す。

まだ獲れてから時間がたっていないため、傘の色が青白く、軸には偽エドクだけの特徴である斑点はない。正真正銘のエドク茸である。


「それはおめでとう。エドク茸はそのサイズだと銀貨1枚ぐらいで買い取りかしら。

採取も丁寧ね。ところで、5本にしては袋の中が大きいけれど・・・」

フェスカがそうきくと、バーンは袋の中身を見せる。

「いや、つい売れる薬草なども生えていたので、採取してしまいました。

カレー草、フィロルの葉、ルーバブ、チコルの実・・・。たしか、常時依頼で買い取ってもらえるんですよね?」


フェスカは中身を見せてもらう許可をとると、薬草類を確認する。

間違いなく、バーンがいった種類なのだが驚くべきはその保存方法であった。

ちょうど店で売りやすい量で麻ひもで縛ってあるだけでなく、各薬草の重要な部分をうまく外して商品価値がさがらないように工夫されている。

そもそも、麻ひもを持ってきているだけでも褒めるべきであるが、これはなかなかの手並みだ。


「あなた、すごいわね。薬草に関する知識も採取後の管理も。

何か経験があるのかしら・・・・」

「ええ、薬草に関することは少しばかり。実は父が薬師なので・・・・」


魔法のある世界でも薬師は重要な存在である。

治癒の魔法を使えるものはあまり多くないし、魔法はどうしても”外傷”を中心に発達してきた文化があり、病気に対してはうまく作用しないことが多いのだ。

外傷は原因がわかりやすいので上位の紋の使い手であれば部位再生まで確立されているのだが、病気は原因も複雑であったり不明であることが多い。

なにより体温を1度~2度下げるというような魔法は”調整”がしづらいのだ。

下手をすれば氷漬けにしてしまう。


どうやら、この男は”合格”のようだ。


・・・・・


「”生体探知”」

フェスカは地面に何やら魔法陣を書くとそう唱える。

フェスカの脳に、いくつかの光と方角と距離の情報が入ってくる。

数は大小あわせて10ほど。

ひときわ大きいのはネールであろう。一番近いのはバーンだ。あと、いくつか小さいものがあるが、これは角うさぎか小猪か・・・。

「結構遠くまでいってるわね」

1kmほど離れたところに人間のものと思われる反応があった。


フェスカがそこへ向かうと、クリスが30㎝ほどの小猪をさばいているところであった。

顔と服に泥がついているが、ケガらしきものはない。


「大丈夫かしら?」

フェスカがそう尋ねるとクリスは笑いながら答える。

「あ、大丈夫です。ただ・・・角うさぎじゃなかったです。」


小猪は、子供の猪ではなく、成体になっても60㎝程度にしかならない猪の一種で、食用肉としてポピュラーな存在だ。

猪の類のご多聞にもれず、その牙で噛みついてくることはあまりないものの、敵と認識すれば全力で突進してくるのが特徴で、小型とはいえ油断すればケガをする。

試験の課題ではないが、角うさぎよりもレベルの高い獲物だ。

獲れる肉の量も多く、牙や皮もアクセサリーや紙などの材料になるのだが、全体を持って帰るとなると重くてかさばるため、価値の高い場所だけを持って帰るのがセオリーだ。


クリスは、あどけない顔に似合わず、手慣れた手つきでククリナイフを使って皮をはぐと、頭と足を切り落とし、肉の高く売れる場所だけを麻袋につめる。

麻袋は、血が何度もしみ込んだくすんだ色をしており、クリスが狩りに慣れていることを表していた。


「この猪は、クリスが殺ったの?凄いわね」

クリスは虎挟のついたままの切り落とした小猪の足をもちあげると

「思ったより抵抗されちゃったので、泥だらけですけどね。」

と返す。確かに、近くの木には黄色の布がまかれている。

これは他のハンターに罠の存在を示す合図になっている。


この子も合格。そして、この調子なら賭けは勝ったわね。

フェスカは少しニンマリとしながら、再び生体探知の魔法を使いだした。





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(特に、どこでみかけて読んでくださっているのかとかは、知りたいです。)

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