02 妖精 ティルク
成人の儀といっても、中身は大したことがない。
町の聖堂で司祭が簡単な祝福の言葉をかけて終わりだ。
一応は、祝福<ブレス>の魔法を使っているが、この魔法は本来戦闘中に使用する魔法免疫力を高める魔法だし、継続時間も10分程度しかない。
要は、見かけだけなのである。
フェルは、成人の儀が終わると、町の知り合いに簡単に旅立ちの挨拶をする。
フェルは、時々角うさぎの肉や花や木切れを使ってつくったアクセサリーなどを孤児院にプレゼントしたりしていたので、結構悲しまれた。
それが、フェルの旅立ちに対するものか角うさぎの肉がもらえなくなることに対するものかはわからないが、おそらくは両者である。
挨拶が終わると、フェルは途端にやることがなくなった。出発は明日の朝だ。
「うーん。剣は昨日もらっちゃったし、明日までやることがないなぁ。
せっかくだから、また角うさぎでもとってこよっか。」
フェルは独り言をいいながら、近くの森に向かう。
名前もない森だが、ここはさして強い魔物もおらず、薬草や角うさぎなどが獲れる絶好の狩場だ。
町から小一時間。いつもの角うさぎの狩場で獲物を探す。
武器は手製の小さな弓だ。
いつもなら、30分もかからずに1匹は確実に仕留めることが出来るのだが、今日に限って一匹も獲物を見かけることがない。
「おかしいなぁ・・・・。ティルク?」
フェルは、また独り言をいう。
『うーん。おかしいわね。近くに魔物の反応がないわ』
フェルの頭に、直接声が答える。可愛らしい声の主が姿を見せる。
フェルの顔の半分ぐらいの身体は、緑色のチュニックを来ており、背中からは薄い羽根が生えている。
顔は、少女の顔立ちをしているが、耳がややとがっており、顔全体のバランスの中で眼や口がやや大きい。『妖精』である。
妖精の名は「ティルク」という。正式には「ティルトムート=ラ=シルヴァ=ルー=エトウィック」というのだが、とてもではないがフェルが覚えられなかったのだ。
そもそも発音も人間の発音と少し違うので、ティルクもそう呼ばれることに違和感はないらしい。
いや慣れたというべきか。
フェルがティルクを見ることが出来るようになったのは、7歳になったあたりだと思う。
ティルクに言わせると、フェルがほとんど生まれた時から近くにいたらしいのだが、フェルにはそれが見えなかったようだ。
実際に話すことが出来るようになったのは9歳になったあたりか。
その頃、フェルは乳母もいなくなり、家の中で孤立していたからティルクの存在はフェルにとって救いであった。
もっともその事を知るものは誰もいない。フェル以外には見えないのだから・・・。
「あ、奥1.0kmに魔物の反応があるわね。でも、いつもの反応とちょっと違う?・・・」
「違う反応?やばいやつかな?」
「反応そのものは、角うさぎよりは大きいけど、そこまででかくはないわ。魔力反応も大したことないし。」
「そっか。じゃぁ、ちょっといってみるか。今日は新しい剣も持ってきてるし、その反応なら問題ないのかな。」
フェルは、獲物が近くにいないことを知ると、魔物の反応があったほうに向かう。
大角鹿でも獲れれば、孤児院に最後の大プレゼントができる。
しばらくして歩いていくと、獲物を見つけることができた。
ただ、予想と違ったことがあるとすれば魔物が角うさぎでも大角鹿でもなく、大狼であったことぐらいだ。
小説のコンセプトは決まったんですが、どうもタイトルが・・・
タイトル迷走していて、すみません。