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僕は、魔法が使えない。  作者: アーシェス
17/106

17 ハンター試験 2

無紋・・・

正確なデータはないが、1/10,000~1/20,000に一人の割合で生まれると言われる魔法の才能のない子供である。その中には生まれながらに手がないなどの障がいのある者も含まれる。

その人数の少なさなどから、地方によっては差別の対象になったり、場合によっては生まれて直ぐに捨てられたりすることもあったらしい。


近年では、英雄 “鋼の”グランツ将軍や 稀代の商人であるマーカスが無紋であったことを明かされたことなどから、明確な差別などは禁じられているが、永年人々の意識に刷り込まれた偏見はなかなかとれるものではない。


「あ・・・・。そ、それはすみません。」

受付の女性は、少し取り乱したが、すぐに落ち着きを取り戻し、石版を操作する。

本来、紋に関することは、ギルドでも機密事項であり登録の際も中央基幹ネットワーク<アーカイバ>に直接送られ、一般の職員では見ることが出来ない。

紋に関する照会は、各ギルド支部のギルドマスターもしくは同等以上の権限を持つもののみが行うことができ、その利用目的もギルドメンバーの粛清や極めて緊急かつ重要な事態の場合のみと定められている。


エドガーも、フェルが無紋であることに驚きの表情をみせたが、すぐに表情を元に戻した。

幸い、エドガーと受付の女性以外にこの話が聞こえたと思われるものはいない。

無紋であることは、“魔法を使ってくるかもしれない“という選択肢を消してしまうので、特に対人戦では不利になる。

それに、この街でならともかく、小さな村などではやはり古い風習が残っている場合も多く活動はしにくくなる。

だが、魔法が使えないこと自体は、そこまで大きなハンデにはならないかもしれない。

実際にハンターの中でも、魔法を実践レベルで使えるものは半数もいない。戦闘向きではない紋も多数あるし、鍛錬や知識が足りなければそもそも魔法は発動しない。なまじ上位紋であるがゆえに、使いこなせないハンターというのは、結構いるのである。


「はい。以上で筆記試験は終了。合格です。」

笑顔になった女性が告げた。


エドガーの言うとおり、筆記試験はハンターに必要な最低限のリテラシーが備わっているかどうかの試験である。

そのために、筆記試験はこのような受付との書類のやり取りで確認され、しかもそれがハンター登録書類にもなるという実に合理的な方法になっている。


「休憩はいるかしら?」

フェルが首を振ると、受付の女性は裏庭へいくように支持する。


「ネールさん。試験官をお願い。」

女性が、買取窓口の奥で猪の皮をはいでいた隻眼の中年男性に声をかける。

ネールは事故で片目を失明しギルドで働くことになったが、元々腕利きのCランクハンターである。

経験豊富で武器などの目利きの他、買取った動物や魔物の加工、そして新人の試験官などを勤めている。


ギルドには、このような元ハンターの職員というのが何人かいる。

ハンター独自の経験やスキルが必要なこともあるが、荒くれ者の多いハンターに舐められないためにも、元ハンターの雇用は必要不可欠であった。

昔お世話になった先輩にたてつくと周りが黙ってはいなし、なによりも、自分自身もいつ負傷したりしてハンターが出来なくなるかもしれないわけだから、貴重な就職先を減らす愚は避けたい。

そんなわけで、ギルドの職員というのは中々な猛者が多いのだ。

だいたい、ギルドマスターも大体が有名な元ハンターである。


ネールは、低い声で短く返事をすると、壁から2本の木剣をとると裏庭に向かう。

エドガーと何人かの好奇心旺盛なハンターも裏庭へ向かった。


「坊主。得意な武器は剣でよかったな?」

ネールはフェルに木剣を渡しながら確認をする。

頷きながら、フェルは剣を受取る。

木と入っても、その剣は鉄のように重い。

ウリンと言って、水にも沈み、鋸でも簡単にきれない木で作られているらしい。


「まずは、武術戦闘試験を行なう。いつでも好きなようにかかって来い。」

そういって、ネールは右手で握った剣の原で右肩にポンポンと軽くたたきながら、フェルに向き合う。

戦闘をするような体制ではない。それだけ余裕ということか。


距離は5mも離れていない。一気に走り込めば剣が届く距離である。

しかし、フェルにはネールと自分の距離が倍ほど長く感じた。


フェルは、落ち着いて両手で剣を握ると腰を低くして構える。

そして、ネールの眼帯のある左側へゆっくりと少しづつ動きながらジリジリと距離を詰める。

ネールの死角に回り込む作戦だが、ネールは全く動く様子がない。


突然、フェルは剣を下段に構えたまま突然一気に距離を詰める。

そして左にステップをすると身体を小さく丸めて懐にもぐりこむと同時に、剣を突き上げる。

フェルの力では、この剣で切りかかっても重過ぎて振り回されるだけだし、とてもではないが当てられる自身がなかった。

しかし、死角にもぐりこみ、全身のバネを使って鋭く突くのであればスピードもあり、勝算がある。


カーン


甲高い音が裏庭に響くと、フェルの木剣が、地面にバウンドして跳ねる。

フェルは、体制を崩し、尻餅をつきそうになるのをかろうじてこらえながら、後にとび下がる。

フェルの両手はジンジンとしびれて感触がない。


一瞬であった。

フェルが突き上げた剣をネールは上半身を少し動かすだけでかわし、その体制のままフェルの剣を自分の剣で打ちつけたのだ。


「ここまでだな。」

ネールが試験終了を告げて、木剣を拾うとそのまま裏口からギルドへ入っていってしまった。

見物していたハンターもギルドの中へと向かう


フェルは、呆然としていたが、しばらくすると何が起きたかを理解したようで立ち上がる。

ティルクは、フェルの周りをうろうろしているが、オロオロして、何も声をかけられないでいる。


「負けちゃいました・・・。」

エドガーに向かって、そういうが顔には涙がうかんでいる。

「惜しかったな。」

そういうと、フェルの肩を軽くたたく。


「いくぞ。」

そういうと、エドガーは落ち込むフェルをつれてギルドの中へと向かった。


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