11 愚か者の末路
「ミンツさん、フェル大丈夫か?」
エドガーは、投降した盗賊を睨み剣を突き付けたまま叫ぶ
「あ、少し腕をケガしたようですが大丈夫です。」
ミンツの左肩が、やや不自然に下がっている。
どうやら盗賊に投げられる際に、脱臼でもしたようだ。
だがそれ以外に外傷はない。御者に一人がミンツを起こして手当をはじめる。
「こちらは大丈夫です。」
フェルはエドガーの方へ近づきながら答える。
威嚇の為に手には小弓を構えたままだ。
「オッケーだフェル。悪いが荷馬車からロープを2本持ってきてくれ。捕縛する」
「わかった」
エドガーの指示に、フェルは後ろの荷馬車へ向かう。
「ティルク助かったみたいだ。ありがとう。
あと、悪いんだけど、後ろの馬をまた荷馬車に使うからつないでおいて」
荷馬車で、ロープを調達しながらフェルはティルクに話しかけた。
先ほどフェルは盗賊に突っ込む前にティルクに盗賊の短刀を”転送”するように依頼をしていた。
そのため、フェルが突っ込んだ際に盗賊は反撃が出来なかったのだ。
それでも、背中をしたたかに殴られることとなったが、刃物があるのとないのでは大違いだ。
”転送”は、ティルクが触れさえすればできる。
そして、ティルクはフェル以外には見えない。
そのため、盗賊は最後の瞬間までなにが起きたのか把握できなかったに違いない。
まぁ、把握したところで結果は変わらないのだが。
ロープをもって、エドガーの方に向かおうとすると、ミンツと御者さんも荷馬車の方に来てロープを半分持つと、リュークの方へ向かう。
捕縛にも縛り方があって、ハンターに任せた方が安全だからだ。
エドガーは剣を突き付けてけん制している間に、リュークが素早く二人の盗賊を縛り上げる。
そして、盗賊の乗ってきた方の馬車の荷台に括り付ける。
盗賊などの犯罪者は、討伐をすればわずかだが国や領主から報奨金が出る。
多くの衛兵詰所やギルドには、”真実の口”手を口に入れて、偽りの証言をするとは手が抜けなくなり目が光るという魔法具がある。
製造方法は、ハンターギルドのトップシークレットらしいが、初代ギルドマスターにして偉大なる魔術師のレオナルドの発明品らしい。
この”真実の口”の発明によって、虚偽の報告をしたりする者が減るだけでなく、討伐証明などを提出する手間などが大幅に減ったらしい。
そのため、衛兵詰所に行き、馬車が襲われたことや相手の人数、手段などを申請すれば、それだけで報酬は得られる。
だが、戦闘における勝敗は、何も全滅だけではない。
盗賊が商隊を襲った時と同様に、盗賊にも降伏勧告ができる環境を用意する必要がある。
さもないと、盗賊は最後まで抵抗して、余計な被害が出るからだ。
もちろん、降伏したからと言って明るい未来があるわけではない。
が、その場で殺され、魔物の餌になるよりは幾分もましというものである。
これまでの盗賊歴や被害状況にもよるが、殺人歴などがなければ、犯罪奴隷として炭鉱や奴隷船で数年程度の服役で済む場合もある。
お世辞にも良い環境とはいわないが、最低限の食事や雨風のしのげる場所は提供されるようになっている。
そして、降伏を受け入れて生きたまま捕縛した場合は、犯罪奴隷としての売り上げの3割が捕らえたものに支払われる。その報酬は、討伐に比べて10倍以上になることも稀ではない。
「あとは、盗賊の持ち物で使えそうなものを俺たちの乗っていた馬車に詰め込んでくれ」
エドガーが指示をする。
金目の物はほとんど持っていないが、それでもいくらかは盗賊も金は持っている。
武器や防具なども、粗末とはいえいくらかは金になるし、金にならなくてもハンター仲間では欲しがるものがいるかもしれない。
運悪く、降伏をして装備を奪われたハンターもいる。それの判断で助かった場合も含めて。
そんな時のために、ギルドでは不要な武器道具を引き取り、貸し出したり譲渡する制度がある。
しかも、それらはポイント制になっており、万一無一文になっても最低限の武器・防具を得られるようになっているのだ。
「どちらが強盗かわからないが、まぁ、自業自得だ。」
エドガーがいうと、馬車に程度は悪い者のそれなりの装備が集まる。
売れそうなものはほとんどないが、ギルドポイントにはなるだろう。
金は全員分あわせて、ざっと金貨が17枚、銀貨が30枚、小銀貨は50枚ぐらいはあった。
小銀貨は10枚で銀貨1枚なので、銀貨換算で1735枚ほど。結構なの額である。
これらは、戦闘に参加した者で分配するのが通例である。
「とりあえず、俺が預かっておく。それでいいか?」
エドガーがミンツやフェルに向かって同意をもとめる。
もちろん、それを拒む理由はないし、そもそもフェルは戦闘後の処理についてはどうしていいかわからず、エドガーの指示通りに動くことしかできない。
あらかた処理が終わるとさらにエドガーは指示を出す。
「街道沿いに死体をそのままにしておくと、魔物がわくからな。
あっちの馬車にほりこむぞ。ちょっと手伝ってくれ。」
倒した6人の盗賊を縛られた盗賊の乗る馬車-盗賊たちが乗ってきた馬車-に次々に放りこむ。
「じゃぁ、この馬車は・・・リューク頼む。俺は、後ろの荷馬車を担当しよう。」
そういうと、街道を少し離れて進行方向のやや左側に向けて出発した。




