10 あるいは裏切りという名の・・・
フェルの目の前で、それは起きていた。
御者の一人が、ミンツさんの首を後ろから締めて、短刀を首元にあてたのだ。
そして、すぐに投げ飛ばすと馬乗りになる。
「そこまでだ!」
戦場に大きな声が響き渡る。
「うごくんじゃない。こいつがどうなってもいいのか!」
御者はさらに大声で怒鳴る。
エドガーとリュークは、反射的に相手をしていた盗賊と距離をとる。
「なるほど・・・。道理で襲ってくるはずだな・・・。」
エドガーがまだ相手を警戒しながらぼやく。
馬乗りになった御者、いや盗賊はもうフェルともう一人の御者に対して、武装解除を支持する。
「おら、その危なっかしいもんを捨てな。そんな弓やへっぴり腰じゃぁ、俺は倒せねえよ。」
幸い、もう一人の御者は盗賊団ではないらしい。
「フェル、まずいよ。ミンツさんが停戦命令を出したらつかまっちゃう。」
ティルクがあわてて、フェルに告げる。
今ならまだ逃げれるかもしれない。
「ティルク、ちょっと頼みがある。」
そういうと、フェルはティルクにしかわからない声で何やらつぶやく。
それを聞くと、ティルクは大きく頷いて元御者の盗賊の方へかけていく。
ハンターは、一瞬の決断力とタイミングが、生死をわける。
さっきエドガーがフェルに教えてくれたことの中にそんな言葉があった。
そして、フェルはすぐにそれを実践した。
「わかったよ。」
と小弓を地面に投げ捨てる。
それを見ていたもうひとりの御者も短剣を捨てようとする。
”今だ”
もう一人の御者が短刀を捨てる動作をした瞬間、盗賊の意識がフェルからそれる。
フェルはその瞬間を逃さずに、駆け出しながら、左腰の小さな矢筒から木の矢を引き抜きながら、まるで、投げナイフをなげるかのようにそのまま盗賊に投げつける。
木の矢といっても、ほとんど先をとがらせただけの木である。
普通であれば、投げても相手に刺さるようなことはない。
ところが、フェルが投げた矢は、盗賊の首筋に刺さる。
「ひぃ」
ミンツが、盗賊の首筋から噴水のように出る血を見て悲鳴を上げるが、致命傷ではない。
フェルは、腰につけていた剣を抜きながら盗賊に迫る。
「こぉのガキがぁぁあ!」
吹きあがる血はすぐに止まったが、首からは矢が生えたままであり、血まみれの顔は悪鬼のようだ。
フェルが、剣を構えたまま突撃してくるので、盗賊は、短刀を両手で真下に突きつけるように背中に刺す。
背中から肺まで短剣が刺さって一撃のはずだ。
だが、次の瞬間崩れ落ちたのは、盗賊の方だった・・・。
「いってぇぇえ」
フェルが大きな声で叫ぶ。
背中に大人から両手で殴られたのだ。痛くないはずがない。
が、フェルはそういいながらも、盗賊の胸に深々と突き刺した剣をさらに押し込む。
盗賊の口から血の塊がドバっとでて背中にかかる。そして急に重たくなる。
また血まみれだよ・・・
フェルはそういいながら、剣を盗賊から引き抜きながら叫ぶ
「エドガーさん!リュークさん!こっちは片付いた。」
もっとも、二人ともフェルが叫ぶ前に盗賊との戦闘をはじめていた。
エドガーの剣が一人の盗賊の首を突き刺し、リュークは先ほど敵の持っていた槍を奪っている。
足元には、すでにその持ち主であった盗賊の死体が転がっている。
残りは、もう4人だ。
フェルは、ミンツさんを起こすと小弓を拾って、弓を構える。
まだ背中は痛いが、我慢できないほどではない。
「シルヴェストル お願い」
そう小声でつぶやきながら矢を放つ
「ぎゃぁ」
矢は槍を持った盗賊の首に刺さり、血しぶきがあがる。
そして、次の瞬間にはエドガーの剣がその盗賊の脇腹に刺さる。
即死ではないだろうが、致命傷だ。
そして少し隣では、リュークの槍が、盗賊の口の辺りから貫いている。
残るは二人・・・。
「こ・・降参だ。命だけは助けてくれ。」
最後の二人は、投降することを選んだようだ。
台風ですね・・・。
読者の皆様に被害がないことを祈っております。




