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僕は、魔法が使えない。  作者: アーシェス
10/106

10 あるいは裏切りという名の・・・

フェルの目の前で、それは起きていた。

御者の一人が、ミンツさんの首を後ろから締めて、短刀を首元にあてたのだ。

そして、すぐに投げ飛ばすと馬乗りになる。


「そこまでだ!」

戦場に大きな声が響き渡る。


「うごくんじゃない。こいつがどうなってもいいのか!」

御者はさらに大声で怒鳴る。


エドガーとリュークは、反射的に相手をしていた盗賊と距離をとる。


「なるほど・・・。道理で襲ってくるはずだな・・・。」

エドガーがまだ相手を警戒しながらぼやく。


馬乗りになった御者、いや盗賊はもうフェルともう一人の御者に対して、武装解除を支持する。

「おら、その危なっかしいもんを捨てな。そんな弓やへっぴり腰じゃぁ、俺は倒せねえよ。」

幸い、もう一人の御者は盗賊団ではないらしい。


「フェル、まずいよ。ミンツさんが停戦命令を出したらつかまっちゃう。」

ティルクがあわてて、フェルに告げる。

今ならまだ逃げれるかもしれない。


「ティルク、ちょっと頼みがある。」

そういうと、フェルはティルクにしかわからない声で何やらつぶやく。

それを聞くと、ティルクは大きく頷いて元御者の盗賊の方へかけていく。


ハンターは、一瞬の決断力とタイミングが、生死をわける。

さっきエドガーがフェルに教えてくれたことの中にそんな言葉があった。

そして、フェルはすぐにそれを実践した。


「わかったよ。」

と小弓を地面に投げ捨てる。

それを見ていたもうひとりの御者も短剣を捨てようとする。


”今だ”

もう一人の御者が短刀を捨てる動作をした瞬間、盗賊の意識がフェルからそれる。

フェルはその瞬間を逃さずに、駆け出しながら、左腰の小さな矢筒から木の矢を引き抜きながら、まるで、投げナイフをなげるかのようにそのまま盗賊に投げつける。


木の矢といっても、ほとんど先をとがらせただけの木である。

普通であれば、投げても相手に刺さるようなことはない。

ところが、フェルが投げた矢は、盗賊の首筋に刺さる。


「ひぃ」

ミンツが、盗賊の首筋から噴水のように出る血を見て悲鳴を上げるが、致命傷ではない。

フェルは、腰につけていた剣を抜きながら盗賊に迫る。


「こぉのガキがぁぁあ!」

吹きあがる血はすぐに止まったが、首からは矢が生えたままであり、血まみれの顔は悪鬼のようだ。

フェルが、剣を構えたまま突撃してくるので、盗賊は、短刀を両手で真下に突きつけるように背中に刺す。

背中から肺まで短剣が刺さって一撃のはずだ。


だが、次の瞬間崩れ落ちたのは、盗賊の方だった・・・。


「いってぇぇえ」

フェルが大きな声で叫ぶ。

背中に大人から両手で殴られたのだ。痛くないはずがない。

が、フェルはそういいながらも、盗賊の胸に深々と突き刺した剣をさらに押し込む。

盗賊の口から血の塊がドバっとでて背中にかかる。そして急に重たくなる。


また血まみれだよ・・・

フェルはそういいながら、剣を盗賊から引き抜きながら叫ぶ


「エドガーさん!リュークさん!こっちは片付いた。」


もっとも、二人ともフェルが叫ぶ前に盗賊との戦闘をはじめていた。

エドガーの剣が一人の盗賊の首を突き刺し、リュークは先ほど敵の持っていた槍を奪っている。

足元には、すでにその持ち主であった盗賊の死体が転がっている。

残りは、もう4人だ。


フェルは、ミンツさんを起こすと小弓を拾って、弓を構える。

まだ背中は痛いが、我慢できないほどではない。

「シルヴェストル お願い」

そう小声でつぶやきながら矢を放つ


「ぎゃぁ」

矢は槍を持った盗賊の首に刺さり、血しぶきがあがる。

そして、次の瞬間にはエドガーの剣がその盗賊の脇腹に刺さる。

即死ではないだろうが、致命傷だ。

そして少し隣では、リュークの槍が、盗賊の口の辺りから貫いている。

残るは二人・・・。


「こ・・降参だ。命だけは助けてくれ。」

最後の二人は、投降することを選んだようだ。


台風ですね・・・。

読者の皆様に被害がないことを祈っております。

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