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僕は、魔法が使えない。  作者: アーシェス
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01 無紋のフェル

薄暗い屋根裏部屋で粗末なベッドに座った少年が何もない空間に話しかける。


「ティルク。明日はいよいよ成人の儀の日だ。一応は、社会勉強という名目だけれど僕はこの家を放りだされることになる。

まぁ、特に感慨深くもないけどね。問題は、その後だね。どこに向かうかだ。」


しばらく、沈黙があったあと、また少年は話しかける。

「そうだね。当面の生活を考えると冒険者になるのがいいよね。

商売をするにも、僕の年齢ではなかなか信用もえられそうにないし。

うん。わかってる。この町からは少し離れたほうがいいよね。

まぁ、流石に世間体もあるから、近くの町ぐらいまでは、馬車にでも乗せてくれると思うんだ。うん。それから考えよっか。」


少年の名はフェル。地方の貧乏貴族の三男である。

一応は、貴族といっても爵位は最下位の準男爵。

領地も町とはいっても村に近い田舎が2つばかりである。


そして、三男ともなれば幼少の頃であれば長男・次男に何かあった時の予備という意味はあるが、二人が成人した後であれば、もはや余分な食い扶持でしかない。

そして、フェルにはもう一つ問題があった。「無紋」である。


この世界では、大多数の者が人は生まれた時に左手の甲に紋章をもって生まれる。

紋章の種類は、わかっているだけで1000種類以上あるが、一定の体系があり、それによって得意な魔法の属性や特性などの適正などが決まっている。

たとえば、火矢の紋は火属性の魔法を得意とし、魔力の特性は放射系になるし、土盾の紋は土属性の防御系の魔法を得意とする。

これが、才能に恵まれていると炎射の紋などの上級紋になったりする。


紋章は、紋章学という学問が成立するほど奥が深いが、生まれ持った紋というのは、極まれな場合を除き変わることがないといわれている。

しかし、極まれに紋がない状態で生まれるものがいる。「無紋」と言われるものだ。

なぜ、そのような者が生まれるのかは解明されていない。いや、正しくはなぜ「紋」が刻まれた状態で人が生まれるのかが、解明されていないのだ。


遺伝によるものではない。上位紋同志から「無紋」者が生まれた例も、また少ないながら「無紋」の者から上位紋やさらに高位の紋の者が生まれた例もある。

ただ、「無紋」の者は、魔法を扱うことが出来ない。初歩的な炊事で使う発火の呪文ですら使えない。

これは、この世の中ではかなり不利なことであり、世間体を気にする貴族にとっては隠したい事実である。


貴族といっても、自身が手柄を立てたわけではない。

大昔に先祖が立てた手柄を血縁で保っている者が大半なのである。遺伝によらないといわれているとはいえ、その血の質が低いと思われることを極端に嫌う。

事実、貴族家当主は上位紋や高位紋の所有者が多い。爵位の継承権がそのようになっているのだ。


「フェル、今日はいよいよ成人の儀だな。今年儀式を受けるのは残念ながらお前だけだから少し小規模にはなるな。これで、晴れてお前も一人前ということになる。お前は、一応冒険者志望という事だったが、本当にいいのか?」


フェルの父親のウィッド準男爵は、フェルに眼も合わせずに聞く。一応、自身の子供である魔法も使えないフェルを冒険者にというのは、酷と思っているのか確認をする。ちなみにフェルの母は既に死別してしまっておりいない。


「はい。幸い剣術には少しばかり自信がありますので・・・・」


確かに、フェルは時折近くの森で角うさぎを木剣で倒して捕まえてくることがあった。

ただ、角うさぎは魔法が使えれば子供でも簡単に捕まえることが出来るレベルのほとんど危険のない魔物だ。冒険者として対峙する魔物とは、レベルというか次元が違う。


まぁ・・・よいか。

ウィッド準男爵はそう考えた。成人の儀までは流石に養育を放棄するわけにはいかない。世間体というものがある。しかし、その後であればフェルがどうなろうと問題はない。

自身の子供ではあるが、フェルは「無紋」であり一族の恥である。しかも、フェルが生まれてまもなく妻が無くなった。直接関係があるわけではないかもしれないが、どうもそういうこともあってフェルは乳母まかせであったからか、愛情があまりわかないのだ。


「わかった。まぁ選別として、うちにある好きな剣を持っていけ。あ、ただ陛下から賜った魔法剣はだめだぞ。あれは特別だからな。そうだな、最近レオンの作った魔法剣は結構いい出来だったから、あれはどうだ?」


レオンは、この家の次男で氷付の紋の持ち主だ。主に氷の魔法と付与魔法を得意とする紋様だ。

レオンは、爵位を継ぐことはないが、付与魔法は魔法道具を作り出すことができ、重宝される。彼の作る武器や防具は、この領土の貴重な収入源である。


「ありがとうございます。ありがたくいただきます。」

「あとは、金貨を20枚を用意しよう。当面はこれで生活にこまらないはずだ。」

金貨20枚は。一般的な家庭の2ヵ月分の生活費といっていい金額である。

決して小さな金額ではないが、手切れ金のようなものとしては少ない気もする。

まぁ、無一文で放り出されるよりはいいだろう。


「あと、旅立ちはいつにする?エルアの町へ行く馬車なら、明日出発するが・・・」

エルマは、この辺ではかなり大きな町らしい。たしか領土もどこぞの子爵領だったはずだ。


うん。ここなら、とりあえず何か職にもありつけそうだ。


はじめて、小説を書きます。

気軽に読んでいただければ幸いです。

そして お手柔らかにお願いいたします。

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