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気の合う仲間

今回はずーっと過去に遡って、黒くなる前の俊平、香也達が仲間になるきっかけです。

「もうーこうなったら勝負よ!放課後覚悟しときなさい!」


「あー望むところだね。」


木内美佐子と海原大地のこの言い合いが俺達の友情の始まりだった。



小学4年俺達は同じクラスになった。

当時から身体の大きかった大地と、はきはきと物を言う美佐子。

それに背も低く、あまり目立たない俺に、ちょっと大人しめの香也。

そんな俺達は夏休み前の席替えで近くになり、夏休みの宿題であるグループ発表のメンバーになったのだった。

そして、その宿題のテーマで揉めることになった。


虫の生態を調べたい大地と物の腐り方の違いを調べたい美佐子。

何処まで行っても平行線でとうとうケンカのようになってしまった。

まさに売り言葉に買い言葉だ。


俺と香也は傍観者として2人を眺めていた。

「そろそろ止めた方がいいかな?」

と心配そうな香也。

「大地だって、手を上げたりはしないよ。放っておけばそのうち収まるんじゃない?」

との俺の言葉に


それもそうだねと香也は返してきた。

今はまだ3時間目。

放課後にはまだ時間がある、そう思っていたのに。


ついに放課後。

「海原、勝負よ。」

美佐子はやる気満々だった。

そして大地も

「お前こそ、逃げるなよ。」

大地もだった。


そして、行き着いた先は美佐子の家だ。

大地がぼそっと


まさか、でっかい兄ちゃんがいるとか言わないよな。


少しだけ不安そうな声をだした。

俺は何も言えなかった。


仕方なくついていくと、やはり玄関には大きいスニーカーが脱ぎ捨ててあった。

俺達が玄関先で上がるのを躊躇していると、部屋から美佐子の母さんがやってきた。


「いらっしゃい。さあさ、上がって。」

それは拍子抜けするような明るい声だった。

まさか、これから娘とこの男が決闘するなどとは思ってもいないようだ。


スリッパまで出して貰っては後には引けない。

気合を入れて美佐子の家に上がった。

そして、行き着く先はリビングだった。

隣り合わせのキッチンには美佐子の母さんがいる。

まさかここで、言い争いをするつもりじゃないだろうな。

そう思っていると、その張本人美佐子が


「あんた怖気づいたんじゃないでしょうね。」

と言い放った。


「そんな分けないだろ、それより勝負って何するんだよ。」

ここに来て大地が一番の疑問をぶつけた。

すると美佐子は

「あんたね、勝負って言ったら、格闘しかないでしょ。」

自信たっぷり、そしてバカにしたようなにやりという笑い。


まさか、ここでするのか?

いろいろな疑問が駆け巡ったが1分後それは杞憂に終わる。


美佐子が持ったのはゲームのコントローラー。

そして、画面にいっぱいに広がった某ゲーム会社の格闘ゲーム。


もしかして、これやるのか?


素っ頓狂な大地の声。


「まさか、あんた私と本気で決闘しようと思ったの?私があんたとやりあったって、勝てるわけないでしょ。さぁ、これ持って。」


その時の大地の間が抜けた顔が何とも言えなくて。

今思い出しても笑える。


そして、美佐子と大地の戦いが始まった。

日頃から、あの靴の持ち主である兄さんとしているせいか、何度やっても大地が勝つ事はなかった。

その間、俺と香也はおばさんの出してくれたおやつとジュースを腹に入れ、画面を見ていた。

何度対戦しても諦めない大地だったが、おばさんにストップ掛けられて終了になった。


納得いってない大地だったが勝負は勝負。

最後は負けを認め、しぶしぶながらも美佐子の意見に従う事になった。


香也はもう少し残ると言ったので、俺は大地と2人で帰ることに。

2人共無言で歩いた。


でも、俺の家に着く間際。


本当はどっちでも良かったんだけどな


とぽつりと呟いた。

これが、俺達の始まりだった。

グループ発表のためと言いながら、夏休みは毎日のように誰かの家を順に通う俺達。

美佐子の家になった時は必ず美佐子に決闘を申し込んでもいたのだが。

結果はいつも同じで、大地は肩を落として帰ることになる。


夏休み最後の日曜日。

それは大地の誕生日。


普段から物をねだった事の無い大地。

しかし、今回は違ったようで。

大地の母親は珍しく物をねだった大地に条件つきで買ってくれたそうだ。

嬉しそうに話す大地を覚えている。

そうあのゲーム機を。


そこからまた、飽くなき挑戦が始まったのだった。


その後、夏休みの宿題も無事に終わり、秋を迎える頃には席替えもしたのだったが、俺達は以外にも気があっていつもつるむことになった。

気が付いたら一緒にいるそんな感じ。


今思えば、俺達が他の奴らよりも思春期に入るのが遅かったからかもしれない。

男だ女だなんて考えなくて、仲間意識だったと思う。



それは中学に上がっても同じだった。

クラス替えを重ね、みなバラバラのクラスになっても、部活が違っても、ふと気が付くと一緒にいる。

それは、休み時間の廊下だったり昼休みの校庭だったり。



大地は相変わらずのムードメーカー、身体もでかく運動神経もまあそこそこ、美佐はいうと、こいつも中学に入ってから始めたバスケットのせいか、グンと背が伸びてすらりとした長い腕と足は他人をひきつけるものがあった。

おまけにあのさばさばとした姉御肌も変わらずで、男女問わずに人気があったようだ。

香也は……このときの香也はそんなに印象がなかった。

大地と美佐に挟まれて、まあよく笑う子だけれど、そんなとこだ。


でもそれが、ある出来事によって大きく覆される事となったんだ。

そう香也のこと全てにおいて。






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