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転生!我らは勇者なり!  作者:
哭く兎と吼える狼と嗤う道化師
18/18

初めての修行


そして、一週間が経った朝──


「さて、では始めるとしよう」


村から少し離れた森の中──傷の癒えた俺は、兎の亜人であるサキと修行を始める事になった。


「よろしく頼む」


俺が言い終わると同時にサキが肉迫してくる。


「くっ…!」


「どうした? そんなものか?」


驚異的な速さで打ち込まれるサキの足技をなんとか躱すが──


「んっ……ぐぅっ……」


「そんな事では誰にも勝てないし、誰も救えないぞ?」


躱し切れなかった回し蹴りが鳩尾にめり込み、俺は片膝をついてしまう。


「強くなりたいなら立て」


そして、再びサキは高速蹴りを連続で繰り出してくる。


「くっ……!」


右足による中段蹴りを左手で受けつつ、右拳を突き出すが──


「手を使わないと言った覚えは無いが?」


「ぐっ……ぅぁ……」


突き出した拳を掴まれ、サキの膝が脇腹にめり込む。


「隙を狙ったのはいいが、足技しか無いと思い込んだのが間違いだ」


「全くその通りだ……」


「そんな事ではスキルを使いこなせるのはいつになるやら」


膝をつき、脇腹を押さえながら見上げる。


「使いこなしてみせるさっ……」


「そうか……取り敢えず、今日はここまで……だっ!」


言い終えると同時に俺を蹴り上げ、再び回し蹴りを喰らった俺は後方の大木に打ち付けられる。


「かひゅっ……!」


背中を打った事で、肺の中の空気が全て出てしまった俺は変な声を漏らす。


「明日は別の者が相手をする──せいぜい死なぬ事だな」


その言葉聞いたのを最後に、俺は意識を手放した。



そして翌朝──


「そ、それじゃあ始めるよ?」


サキが言っていた別の者──狼の亜人が修行開始の合図を唱える。


やや細身の体躯──上半身は何も着ておらず、革製のハーフパンツを履いており、裸足だ。


野生化(ザ・ビースト)! このガル様が付き合ってやるんだから感謝しろよ?」


スキルを発動したガルの肉体は肥大化し、鋭利な爪で俺を引き裂こうと迫ってくる。


「避けてちゃ強くなれねぇぞ!」


性格も好戦的に変化したガルは更に攻撃の手を早める。


「俺達狼の武器は! 爪と牙と! この肉体だ!」


ガルの猛攻に対して、俺はなんとか避けるのが精一杯だ。


「ちっ……テメェスキル使えや」


攻撃の手を休め、そんな提案を持ち掛けられる。


「生憎と、まだ使いこなせそうにないんだが」


「俺様が止めてやる……だから、安心しろや」


「しかし……」


「このスキルは俺達の野生を呼び覚ますスキルだ」


戸惑う俺をよそに更に続ける。


「人間も亜人も関係ねぇ! 男ならテメェの野生くらい飼い慣らしてみろや!」


ガルの言葉に思わず震えた俺はスキルを発動する事を決める。


野生化(ザ・ビースト)!」


身体中の血が熱くなるのを感じる──


「グルァァァァァ!!」


意識が薄れて行くのを感じる──やはり駄目だった様だ……


「この様子じゃ無理そうだな」


意識が朦朧としながらも必死に抑えようとするが、体はガルに向かって行く。


「とりあえず、寝てろや」


殴り飛ばされた俺は、そのまま意識を手放した。


「今日はここまでだが、次からは覚悟しとけよ?」


ガルの言葉は既に俺には届かなかった──


「い、いい感じだね。 そ、ろそろスキルの修行にうう移ろうか」


修行開始から一週間が経ち、ガルがそんな提案を持ち掛ける。


確かに野生化が当てに出来ない以上、他のスキルアップは急務だろう。


「わかった。 なら先ずは【血流操作】だな」


俺は集中してゆっくりスキルを発動させる。


「むむむむむむ無理はしししししししないで!」


「集中させてくれ!」


先ずは右手の人差し指から、血液を細く伸ばしてみる。


「い、いかか……か感じ」


それを空中に留まらせようと試みるが、指から離れた血はそのまま地面に落ちる。


「先ずは、ててて……手に巻いてかか固めてみたら?」


言われた通り、右手の人差し指から出した血を右手に巻き、固めようとする。


「ちちち血の量をふふ、増やして更に固めたりすれば篭手の代わりになるるると思う」


こうして、新技赤き篭手(ブラッドガントレット)が完成した。


「後は、血を固めて剣を作ったり、短剣に纏わせたり、いいい、色々試してみよう!」


試して分かった事は、血の作用なども操作出来る事が分かった。


例えば、血中の鉄分と凝固作用を操ればかなりの硬度を得る事が出来た。


体術の修行と並行して、血液操作の修行を始める。


「たた、短剣とかも修行にいい、入れようか」


そう言われ、腰に差していた短剣を抜く──父からもらったオカリナイフだ。


体術と短剣術、そしてナイフに血を纏わせ血の剣を作り、剣術の修行も視野に入れる


「まぁ、短剣とかは他の奴に頼めや」


スキルを発動したガルと体術の修行に移る


 「行くぜ?」


飛びかかってくるガルを躱し、回し蹴りを決めようとするが──


「まだまだだな!」


止められた挙句、吹き飛ばされてしまう



ガルとの修行を終えた翌日


「おし! 始めんぞ!」


短剣術の修行をつけてくれるのはレッサーパンダの亜人──レッパーだ。


「よ、よろしく頼む」


「テメェ今俺の事ナメたろ? あぁん?」


「いや、そんな事はないぞ?」


「行くぞゴラァ!」



決して油断していたわけでは無かった。


「おっせぇな!」


早すぎて見えなかったのだ。


「ちっ……仕方ねぇから一から教えてやる」


「あ、あぁ…よろしく頼む」



「それじゃあ、剣の使い方を教えるんダナ」


レッパーによる修行の翌日──剣術の指導をしてくれるのは、(わに)の亜人であるワーニーだ。


「先ず、剣には色んな形があるんダナ! 君は血で色んな剣を作るといいんダナ!」


ショーテルの様な歪曲した剣やソードの様な真っ直ぐな剣を勧められ、多種多様な剣の修行を行う。



体術やスキルなどの修行を開始して、更に一週間が経った。


「いい感じじゃねか!」


「ボクもそう思うんダナ!」


レッサーとワーニーの二人に褒められた事で、強くなった実感が湧く。


「今日はここまでなんダナ!」


「しっかり休めよ!」


二人に礼をして宛てがわれた部屋に戻ると、食事が用意されていた。


「頂きます」


手を合わせ、用意された食事を摂った俺は眠りにつこうとしたのだが──


「敵襲!」


そんな声と同時に鐘の音が響く。


「なんだ!」


慌てて部屋を飛び出した俺は状況の確認を急ぐ。


この警鐘が俺の人生で最も長い夜を知らせる物になるとは、まだ気づいていなかった──







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