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転生!我らは勇者なり!  作者:
第一章『初めての転生』
15/18

初めての解放


「最初から全力で行くぞ!」


「待て! 俺も……」


「邪魔や! 引っ込んどれ!」


元の姿に戻った天恵と野生化のスキルを発動した桐生は、空中に留まる謎の男に向かってゆく。


冴島はそれを観察し、俺を逃がす為の隙を伺っている様だ。


「やれやれ…自己紹介もさせてくれないのか」


二人は、男の左右から挟み込むように剣撃を放つが、いつの間にか俺の後ろに移動したことで、二人の剣はぶつかり合い、火花を散らす。


「さて、私は魔王様直属の配下、六災騎士(デザストルゼクス)が一人──ハイド。冠する災は神隠しだよ」


「はっ! 大層な名前やけど、一人でワシらを倒せるんか?」


「試してみるかい?」


魔王の配下を名乗る男──ハイドは、桐生の挑発を余裕の笑みで返す。


「その余裕も今の内や!」


桐生が地面に手を置くと、ハイドの影が動き出してハイド自身を拘束する。


「喰らえ! 」


その隙を着き、ハイド目掛けて剣を振り下ろす天恵だが、奴はまたその場から消え、桐生の後ろに移動している。


「逃げるんが得意みたいやのぉ」


「まぁね」


桐生は、奥歯を噛み締めながら皮肉を漏らすが、ニヤリと笑いながらそう答えるハイド。


だが、桐生の影は完全にハイドを捕らえていたにも関わらず、奴はそれから逃れて見せた。


「ほんならこれでどないや!」


その答えも聞かないまま、桐生は自分の影でハイドを拘束するが──


「無駄だよ」


次は桐生ごと消え、上空に現れたハイドは桐生を地面に叩き落とす。


「ネコ科舐めんなや」


華麗に着地をした桐生は、いつの間にか前に立っているハイドを睨みつける。


「影ってね? 光を遮れば生まれるもの…つまり、闇に溶け込んでしまう」


「それがどないしたんや」


「この程度の拘束は転移すれば解けるし──たとえ君が自分の影で縛っても、君ごと転移すれば済む話だ」


不敵に嗤い、拘束を解いたタネを明かすハイドの隙を着き、天恵は背後から切り付けようとする。


「だから甘いよ」


だが、それも転移によって躱されてしまう。


「テメェなんだろ? あの時大量の魔物を送り込んだのは」


「そうだよ♪ だけど、君達の強さが予想より上だったからね……だから、直接殺しに来たのさ」


「狙いはこいつか?」


「そうだよ。あの方を封印した伝説の冒険者の息子──障害になるのは明らかだからね。」


そう言いながら、俺に殺気を向けるハイド。


「一つだけ聞いていいか?」


その殺気に思わず体が硬直するが、どうしても気になる事があった。


「俺の両親を殺したのは──」


「あぁ、私だよ。彼等から魔王様を封印した魔法具を奪う為にね」


「そんな事はいい! 命! 武を抱えてここから離れろ!」


冴島は、天恵に言われた事を即座に実行に移し、両親が眠る場所からの離脱を試みるが──。


「何度言えば分かるんだい?」


十数メートル程離れた所で、転移によってハイドが目の前に現れる。


近接格闘機構クロースコンバットシステム…起動」


「邪魔だよ」


「損傷率63%……戦闘の続行不可能……スリープモードに…移行」


抱えてた俺を下ろすと同時に戦闘態勢に入る冴島だが、攻撃する間もなく胴体を切断され、そのまま動かなくなってしまう。


「何をしやがった?!」


「私の能力の本質は空間の支配……能力を使えば、防御など関係なく、あらゆるものを切断出来るんだよね。」


「つまり、ワシらを一瞬で殺せるワケかい」


「安心したまえ。簡単には殺さず、ひたすらに痛ぶってあげるから」


言い終えると、ニヤリと嗤いながら俺に殺気を向ける。


「くっ……」


俺は父からもらった短剣を抜き、反撃しようとするが、ハイドに向けた短剣も両足も震えが止まらなかった。


「させるかよ!」


「やれやれだね」


背後から天恵が剣を振り下ろすが、ハイドは剣を躱して回し蹴りを決める。


「……っ!」


鳩尾に足がめり込んだ事で、声にもならない吐息が漏れ、くの字に折れ曲がった天恵はそのまま数メートル後方に飛ばされる。


「ファイヤーアロー!」


天恵は飛ばされながらも、空中で魔法を放つ。


「へぇ」


矢の形を成した炎がハイドに一斉に襲い掛かるが、気が付けば天恵の頭上に降り注ぐ。


「天恵!」


「キミは逃げる事だけを考えろや!」


咄嗟に名を叫んだ俺に、桐生はそう言いながら、ハイドに斬り込むが、当然転移する──


「これならどないや!」


だが、桐生の影が十数本の剣の形を成し、ハイドに向かって伸びて行く。


「面倒だなぁ」


「今やチーちゃん!」


「次にその呼び方したら許さねぇぞ!」


桐生の影を、転移を繰り返す事で避けるハイドに、天恵が手を翳す(かざ)


「タケミカヅチ!」


晴天だった空は黒く染まり、光の柱がハイドに降り注ぐ。


「だから無駄だと……」


転移しようとするハイドだが、桐生の影に捉えられた事でほんの僅かの隙が生まれる。


「収束した雷か…流石やの」


「今の内に逃げるぞ!」


粉塵が舞い、地面には巨大な穴が出来ていた。


ハイドの生存は確認する事も出来ないが、その隙に離脱しようとする。


「逃がさないと何度言えばわかる!」


「ぐっ?!」


「がぁっ?!」


殴り飛ばされ、地面を転がる天恵と桐生。


「流石に、今のは肝を冷やしたよ」


そう呟き、片手で俺を持ち上げるハイド。


「やめろ!」


「その手離さんかい!」


ハイドの背後から桐生が剣を振り下ろすが、それを躱し、宙へ蹴りあげる。


「桐生!」


俺を乱暴に地面に叩き付け、更に追い討ちをかける。


「いい加減しつこいんだよ! 君たち如きが、魔族である私に敵う筈ないだろう」


転移を繰り返し、桐生をあらゆる方向から攻撃するハイド。


「ぐっ……うっ…」


地面に叩き付けられ、立つ事もままならない桐生はハイドを睨みつける。


「次は君の番……彼等の目の前で殺してあげる。」


「やめろ! 頼むやめてくれ!」


「今動かんでどないすんねん! 動けやワシの体!」


魔力が尽き、動く事が出来ない天恵と痛みで動けない桐生。


そんな二人を嗤いながら見下ろし、俺を蹴り飛ばすハイド。


吹き飛んだ俺を、桐生が影を使って受け止める。


「このままじゃ全滅だな……どうせなら賭けてみないか?」


「せやな…どうせやったら思い切りやれや」


「あぁ…そうだな…やっちまえ」


「まだ抵抗する気かい?」


「当たり前だ! 行くぞ!」


痛みに耐えながら、立ち上がった俺は最後の手段を取る。


「どうせ無駄だけどね」


野生化(ザ・ビースト)!」


無駄な足掻きかも知れない──だが、それでも俺は決死の覚悟で、スキルを発動した。



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