表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生!我らは勇者なり!  作者:
第一章『初めての転生』
14/18

初めての邂逅


「そういや、武クンに言わなあかん事あんねん」


街を出て、少し歩いた所で桐生がそう零す。


「キミのスキルに野生化があったやろ?」


確かにあった…桐生は固有技能(ユニークスキル)だったのに対し、何故か俺は才能技能(クラススキル)だったのが気になっていた。


「あれを使うんはまだやめとき」


「何故だ?」


確かに不確定要素が多いが、せっかくの戦う力なのだ。


使わないのは勿体無いと思い、それを伝えるが……


「あれは亜人だけに許されたスキルや! 人間のキミが使ったらどうなるかわからん! せやから、時期を見てからにしてくれ」


いつになく真剣な表情の桐生に押され、渋々了解し、そう言えばと俺は話題を変えた。


「所で、この世界について聞いていいか?」


この世界の事──主に歴史や魔王についての事と、俺と桐生の才能(クラス)についてだ。


「じゃあ、エルフとドワーフの歴史について語るか」


この世界では、唯一魔法が使えた種族であるエルフと、魔法具(マジックアイテム)を作ったとされるドワーフの歴史を天恵が語り始める。


「魔法こそが至高と謳うエルフと、魔法具(マジックアイテム)こそが至高と謳うドワーフは長い間戦争をしていたんだ」


天恵曰く、エルフとは体内の魔力を使い攻撃から補助や回復に至るまで、魔法を使い、人里から離れて暮らす種族らしい。


そして、ドワーフとは道具や武器を作るのを得意とする鍛冶師の種族だそうで、この世界の殆どの魔法具はドワーフと、伝説の錬金術師の母の作品らしい。


「ほんで、絶滅した訳か……ほんなら、キミはなんでエルフに転生出来たんや?」


俺も気になっていた事を、桐生が問い掛ける。


「さぁな……両親は確かに人間だったが……お陰で散々な目にあったよ。だから冒険者になったんだ」


そう語る天恵は、どこか悲しげな表情をしていた。


「まぁ、その辺は置いといてだ。とにかく、エルフとドワーフはお互いに全滅させて、ドワーフはこの世に多くの魔法具を遺したって話だ」


表情を一変させて、笑いながらそう語るが、どこか無理に笑っているようにも見えた。


「ほんなら次は、ワシの話でもしようかの」


桐生もそれを感じたのか、半ば強引に話を逸らす。


「まぁ、先ずは亜人についてやけど──その昔、とある国の奴らが、魔物と人間を融合させたのが始まりやったらしい。それが原因で、亜人は人間達に忌み嫌われて、隠れるように住んどるらしい」


「らしいって、お前はそこで産まれたんじゃねぇのか?」


「いや、ワシはサンミーからちょい南にある街の孤児院の前に捨てられたわ。ほんで、五年前に冒険者になった訳やね」


桐生の過去も中々に重いが、俺が気になったのは別の所だ──魔物と人間が融合させられたのが亜人なら、俺のクラスは何故魔物なのか……


「先祖返り…」


ふと、そんな言葉を天恵が零す。


「何か知っているのか?」


「いや、知ってる訳じゃねぇが……こいつの話が本当なら、刃夜の先祖は魔物だった……正確に言えば、魔物と人間が融合させられた最初の亜人の子孫だった」


「なら、俺の先祖も亜人だったと?」


俺の問に、天恵は無言で頷く。


そう言えば、父のスキルも血液を操ると冴島が言っていた事を思い出し、それを知らない筈がない女神は最初から俺の約束を守るつもりなど無かったのだ。


俺は思わず拳を握り締め、怒りに震える。


「まぁ、実際わかんねぇし、手っ取り早く力が手に入った事を今は喜べばいいんじゃねぇか?」


そんな俺を見て、天恵は励ますような言葉を投げ掛ける。


確かに、天恵の言う通りだなと、俺は気にしない事にした。



「さてと、それじゃ手を合わせるか」


サンミーから一時間ほどで、かつての家があった小高い丘に着き、両親を埋めた場所で俺達は横並びになり手を合わせる。


「今度一緒に、ちゃんとした墓建ててやろうぜ」


黙祷した後、天恵がそんな事を言う。


他の皆もそれに同意する。


「そうだな。このままではあまりに不憫だからな」


両親の墓は、俺が端材で作った十字架を刺しただけの質素な墓だ……だから、天恵の提案は素直に嬉しかった。


「照れてんちゃう?」


「そうなのか?」


「体温の上昇を確認」


ここぞとばかりに二人がからかい始める──珍しく冴島も加わっていた。


「そんな事より、さっさと行くぞ!」


俺は話を逸らすついでに、本来の目的である地下室に行くことを提案する。


「これだ」


俺は土を被せて隠した、地下室の入り口がある場所に手を翳す。


「おぉー」


「なるほどな」


鋼鉄製の扉が開き、それを見た色白がはしゃぎ、天恵も少し驚いている。


石造りの階段を降り、部屋の中を調べ始める。


「色白、お前は壁をすり抜けて周辺を探してくれるか?」


「わかったー」


色白は俺の言う通り、壁の中へと吸い込まれる様に消えていく。


「ほんならワシらも探すか」


「だな」


桐生の嗅覚や天恵の魔力感知に、冴島の熱源感知で部屋をくまなく調べるが、何も収穫は無かった。


「多分、この部屋で魔法具(マジックアイテム)を作っていたんだろう」


「分かるのか?」


「あぁ、僅かだが魔力の残滓を感じた」


部屋に唯一ある机を撫でながら、天恵はそう呟いた。


「だが、その魔法具はどこに行ったんだろうな」


次いでそう呟く──確かにそうだ。


もしも、天恵の言う通りならここに無いのは何故か……そこで二つの可能性が浮上する。


「持ち去られたか……あるいはら転移の魔法具を完成させていたか」


俺がそう呟くと、天恵と桐生の二人が溜息を吐きながら反応を見せる。


「ギルドでも言うたけど、転移の魔法具なんか聞いた事無いねん」


「桐生の言う通りだ。エルフが存在しない今となっては、極稀にスキルを持った奴がいる位だ」


「検索しましたが、該当無し」


俺が確認するよりも早く、冴島は検索したらしいが無しと言う答えが返ってきた。


だが、それなら新たな問題が浮上する。


「なら、持ち去られた事になるが、犯人はどうやってここに入った?」


そうだ…ここには俺の持つ指輪が必要だが、見た通り、ドアには傷一つついていなかった。


「壁をすり抜けた? いや、まさかな」


沈黙が流れ、一度サンミーに戻りこれからの事を相談する事を提案する。


「色白、探索はもういいぞ」


「はーい」


探索中だった色白を呼び戻し、俺達は外に出る。


「どうだった?」


「んーなんにも無かったー」


だ、そうだ。


「ほんなら、さっさと戻ろか」


「だな」


「街に着いたら先ずは、ギルドに向かうか。」


「突然で悪いけど、死んでくれるかい?」


地下室を出て、目的地についての話をする中、背後から身動きが取れなくなる程の殺気を感じる。


「命ちゃん! 二人連れて逃げぇ!!」


空気が震える程の声で桐生が叫び、冴島は俺と色白を抱え、機械製の羽を生やし、その場を離脱しようとするが…。


「させないよ」


突然現れた何者かに叩き落とされる。


「っ…!?」


「大丈夫か?!」


咄嗟に冴島に庇われたお陰で、俺は無傷だった。


「霊華だけでも逃げろ!」


「わ、わかった!」


色白は天恵に言われるがままに、気配を消して地面に潜る。


「……ふむ、彼女は最後でいいか」


その男は空中に留まりながらそう呟く。


「まさか、こんなに早く来るとはな」


「武クンは命ちゃんと隙見て逃げや……こいつはヤバすぎるわ」


天恵と桐生は知っているような口振りだった。


額から二本の角を生やし、肌は薄い紫の様な色をしていた。


形容し難い、酷く濁った様な色の双眸をこちらに向け、殺気を放つ。


「さて、それじゃあ誰からにしようかな」


こうして、俺達の命をかけた闘いが幕を開けてしまった……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ