表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生!我らは勇者なり!  作者:
第一章『初めての転生』
12/18

初めての異常事態


 前方にはゴブリン、後方には復活したスケルトン──更に上空にも魔物が集まって来る。


 「固体名、ハーピー。数、およそ300──ドレインバット500──キラービー500」


 胴体と頭部が人間で、それ以外が鳥と言うハーピーと少し大きめの蝙蝠と蜂が空を蠢いている。


 いよいよ死を覚悟したのだが──


 「やっぱりボクも戦うよ!」


 色白がスケルトンの前に立ち、奴らに向って右手の人差し指を差す。


 「みんな仲良く! ボクのトモダチになれーー!!」


 「なんか、昔見たアニメにこんなんおらんかった?」


 「確かにな」


 色白の声で、スケルトン達は融合し、巨大化した。


 「命! お前は色白と空の敵を頼む!」


 「了解──強襲戦闘(アサルトコンバット) 機構(システム)起動」


 「いいのか? 色白に戦わせても」


 「仕方ないだろ。状況が状況だしな……それに──命もいれば大丈夫だろ」


 そう言って見上げる視線の先には、巨大化したスケルトンの頭に乗りはしゃぐ色白と、背中から生やした機械仕掛けの羽で飛行する冴島の姿があった。


 「さて、上はあいつ等に任せるとして、問題はこいつらだな」


 言いながら視線を前方のゴブリンに向ける天恵。


 「なにか策はあるのか?」


 「桐生…やるぞ」


 「せやね」


 二人は俺の質問を無視して、あるいは問いの返事なのか──アイコンタクトを取り、構える。


 「野生化(ザ・ビースト)!」


 「魔の象徴たる者よ! 我が腕に宿りて全てを砕く篭手と化せ──悪魔の篭手(ベリアルガントレット)!」


爪は鋭く、毛は逆立ち、琥珀の双眸は瞳孔が縦に細く裂け、より獣のそれに近づいている桐生──そして、天恵の両腕は黒く、禍々しいモノに変化していた。


 「来いよ…本気で相手してやっから」


 「ガアァァァァァァァ!!」


 眼を見開き、挑発する天恵と野獣の様な叫びで魔物を威嚇する桐生。


 一瞬怯んだ様にも見えたゴブリン達だったが、負けじと叫びだす。


 「行くぞ!」


言い出し駆ける天恵と、それに続く桐生。


二人の戦いは先程とはあまりに対極的だった──圧倒的なただの暴力。

魔法もスキルも使わず、ただただ迫るゴブリンを殴り飛ばしていた。


頭を握り潰され、胴を裂かれ、夥しい量の血が辺りを赤く染め上げる。


 500いたゴブリンの数は、すでに半分程にまで減っている。


 空の魔物達も、色白と冴島の活躍でかなりその数を減らしていたのだが──


 「チッ……また増えやがった」


 ゴブリンの後方に突然、鎧を着た騎士達が現れる。


 「イビルアーマー…こいつらもアンデッドだ。つまり、光属性の魔法じゃなきゃ倒せねぇ」


奥歯を噛み締めながら、そう呟く天恵を見ながら、俺も次の一手を考えるが──


「だが、手がねぇわけじゃねぇ」


「それは本当だろうな? 無理なら早く逃げ──」


「桐生!」


言い終わる前に天恵は桐生の名を呼び、指示を出す。


「少し時間稼げ」


減ったとは言え、まだかなりの数が残っているゴブリンと同等の数がいる鎧達。 それを一人で時間を稼げと言われた桐生は異を唱えるが、「やれ」の一言で終わり、腹を括った様子だ。


「どうする気だ?」


「聖属性の魔法を今から作るんだよ。」


言い終わると、天恵は目を閉じて集中し始め、周りの空気が震え始める。


「生の理を侵した者よ…浄化の光にて、在るべき場所へと帰りやがれクソ共が!」


若干だが、後半に本音がポロリした様な呪文を唱え、天恵の手には光の球体が生じ、それを空に向かって放つ。


浄化の雨(セイクリッドレイン)


放たれた球体は弾け、光の粒になって降り注ぎ新たに出現した鎧達は悉く倒れてゆく。


不死者(アンデッド)系以外にはただの光と変わんねぇから心配するな」


俺の心配を察したのか、唱えた魔法の効果を教えてくれる天恵。


余談ではあるが、その雨を受けたにも関わらず、色白と巨大スケルトンは何故か平然と暴れていた。


「さてと……残りを片付けるとするか」


「天恵! やはり俺も…」


「そろそろ時間切れだ。いいから休んでろ」


俺も闘いに参加しようとするが、どうやら強化魔法の効力が切れたらしい。


ただの子供と化した俺は、天恵と桐生の闘いを見ている事しか出来なかった。


「行くぜ? 剣技! 劫火剣乱(ごうかけんらん)!」


天恵は剣に炎を纏わせ、まるで踊る様にゴブリン達を斬り伏せて行く。


「熱っ!」


天恵の動きに合わせて揺らめく炎が美しくて。


「せやから熱いって!」


真っ赤な炎は辺りを照らし、それが月明かりに照らされてより煌めいて見せて。


「アカン! 森ん中でそれはアカン! 大火事になるわ! ワシは焼虎になるわ! 滅茶苦茶になるわ!」


熱がりながら炎を避ける桐生だが、炎は何故か桐生を追いかける。


「わざとやろ!? ワシなんかした!?」


若干、涙目になりながら叫ぶ桐生を無視して、全てのゴブリンを焼き払った天恵は上空にも炎を飛ばす。


「目標撃破確認──これより戦闘態勢を解除します」


残り僅かだった魔物達は、天恵の炎によって悉く焼き尽くされた。


「ようやく打ち止めみたいだな」


「せやったら、早いとこ帰ろか」


長かった異常事態の終わりを確認し、俺達は足早にサンミーの町へと向かい始める。



「いーやーだー!! 連れて帰るー!!」


「ワガママ言うな! こんな巨大な奴連れて帰ったらパニックだろ!」


「まぁまぁ、そない怒鳴らんでも」


いざ帰ろうとした矢先、色白と天恵が巨大スケルトンの事で揉め始め、かれこれ数十分だ。


「あのな? 死んだ人は天国に行かなきゃダメなんだぞ? 」


天恵がそう言っても色白はただ泣くばかり…どうしたものかと俺達が頭を悩ませていると──。


「ナカナイデ」


「喋った?!」


驚く俺達を余所に、スケルトンは色白を慰める。


「ズット苦シカッタ…ケド、キミガタスケテクレタ。アリガトウ」


言った直後に淡い光を放ち始める。


「お別れなんてやだよー!うわぁぁぁん!」


「ゴメンネ。バイバイ」


「ほら、ちゃんとバイバイしな?」


「うん! バイバイ! 元気でね!」


満足そうに、スケルトンは光になり空へと登って行った。


「昔こんな映画なかった?」


そんな事を言う桐生を無視して、今度こそサンミーへと向かい始めた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ