表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/6

第4章:魂の鼓動

第4章


何故だろう…。不思議な感覚を覚えた。

今まで一緒に、狩りをして獲物を食べていた兄が血まみれで倒れている。

呼吸はまだあるが、虫の息であった。

すると、ロクサスの声が聞こえた。

「ランド…逃げろ!人間がやって来た!」

ランドは首を横に振る。

「馬鹿野郎!意地を張ってないで逃げろ!俺を置いてさっさと逃げちまえ!」

「嫌だ!兄さんを置いて逃げたくない!母さんに頼んで治してもらおうよ!それで、また狩りをしようよっ!」とランドが叫ぶ。が、また乾いた音が聞こえた。


ランドは後ろに吹き飛んだ。右肩に激痛が走る。「くそっ!頭を狙ったのに、ズレちまいやがった!」と森の中から猟師が沢山出てきた。

猟師達は倒れてる死体を見ると、1人の子供を見つけた。

右肩から血が流れている。

「しまった!子供を撃っちまった!大丈夫か?坊主!」とランドに駆け寄ろうとした瞬間…。

ロクサスは最後の力を振り絞り駆け寄って来た猟師の喉に噛みつき切り裂いた。

ロクサスの足元には、首の無い死体が転がっている。

そして、猟師達に牙を向き威嚇していたが、2〜3度乾いた音が聞こえる。

ロクサスの頭を吹っ飛ばし、体中を穴だらけにし血を吹き出しながらロクサスはその場に倒れた。

ロクサスが倒れる瞬間、ランドの頭の中に最後のロクサスの言葉が聞こえた。

「さよならだ…弟よ…」と。

ランドは、目から出てくる涙を止める事は出来なかった。

「父さん!父さん!」と叫び続けるが、ロクサスにはもう聞こえない。

ロクサスを殺した猟師が近付いて来た。

ランドは脅え、そして全速力で走る。

しかし、後ろから追い掛けてくる足音が聞こえてくる。

「母さん…母さん…」と声を出しながら逃げるランド。

なんとか振り切り、自分の家に帰る事が出来たランド。家に着くと、クルシスが静かに眠っていた。

「母さんっ!」と叫ぶランド。

クルシスは、はっと気付き頭を上げた。

目の前に居たのは、血と泥で汚れた息子"ただ一人"。

息子は泣いていた。それは怪我をしたから泣いていたのでは無い。

周りを見てもロクサスの姿が無い。

クルシスは悪い予感がしたが、ランドの言葉を聞き予感は的中してしまった。

「母さん…ごめんなさい…兄さんを…兄さんを…」と泣きながら謝る息子。

しかし、クルシスはそんな息子を優しく抱き寄せた。

「何を謝るの?ランド。お前は無事に帰ってきた。悪いのは人間。お前は、悪くないわよ。」と静かに語る。

「さぁ、傷を見せて。治してあげるから。」

そう言うと、クルシスの目が優しい青へと変わっていく。

優しい光がランドを包み右肩の怪我を癒してくれた。

しかし、その瞬間である…


パンッ!パンッ!


と2回乾いた音が聞こえた。

目の前で倒れる母親。

ランドの腕の中で、段々と冷たくなっていく。

ランドは振り向いた。

洞窟の入り口に、猟師が3人立っていた。

コイツらが…コイツらが…父さんと母さんを…。


「おいっ坊主!こんな所を1人で歩いて居たら、今みたいに狼に食べられちゃうぞ。」と笑っていた。

ランドの頭の中には復讐と言う言葉で一杯になっていた。「おっコイツは珍しいな…金色の狼だぜ!町に持ってかえって魂を引き出してもらおうぜ!きっと高値で売れるハズだ」

と言って、ランドの横に座りクルシスに触ろうと腕を伸ばした瞬間である。

ランドは、その男の喉に噛みつき肉を食いちぎる。

男は、叫ぼうとしたが声は出ずそのまま絶命した。

男の食いちぎった肉を、口に挟みながらランドは2人の猟師に襲いかかる。

猟師達は再度、ランドに発砲した。

一発は反れて、もう一発はランドの腹に命中したがそれでもランドは襲いかかった。

猟師の一人は、銃を逆に持ちランドの頭を殴るが怯まずにその男の喉に噛みつき食いちぎる。

そして、そのままもう1人にも襲いかかる。

猟師はまた発砲し、左肩に当たるが怯まず、もう1発発砲。顔を反れて壁に当たる。ランドは飛びかかり猟師を押し倒した。

その猟師は泣きじゃくっていたが構わずに顔に噛みつき顔の皮を剥ぎ、腹を食いちぎり内臓を引っ張りだし最後に喉を噛みつき食いちぎる。


すべてが終わり、クルシスの元へと駆け寄るランド。

クルシスはもう冷たくなっていた。

「母さん…母さん…」と呼び掛けるが、何も答えない。

ランドは泣くしかなかった。だが、洞窟の外が騒がしい…。何人もの人間の声がする。

ランドはもぅ助からないと思った。

殺される。人間に…。

しかし、次の瞬間であった。

クルシスの体から、光る球体の様な物が出てきた。

傷を癒してくれた時と同じ優しい光。

ランドは、そっとその光に触れた。

光はランドの体を包み、そして光は体の中に入ってきた。

優しい光…。

目を瞑ると母さんと父さんが、自分の中に居るような感覚を覚えた。

そして、目を開ける。

「母さん…行ってきます。いつか、必ず戻ってくるからね。」

そう言い残し、洞窟の外に出た。洞窟を出ると、猟師が5〜6人くらい居た。

猟師達は、洞窟の中から血だらけの少年が出てきたので不気味に思い銃を向けた。

ランドは静かに言う。

「お前ら人間のせいで、父さんと母さんは死んだ。」ランドは泣いていた。恐怖では無い、悲しみから涙が止まらない。

ランドは続けた。

「人間!人間は殺す!俺は復讐の狼!ランド・ウルフだ!」と叫ぶと同時に乾いた音が一斉に鳴り響く。

しかし、ランドの姿はそこに無かった。

そこに居たのは、金色の狼の姿だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ