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第1章:平和な日常

第1章



「はぅぁっ!」

ランドは悪夢を見たのであろうか、汗だくで起き上がる。

外は、まだ暗かった。

満月が、外を照らしている。

ランドの隣のベッドには、2人の"子分"達がスゥスゥと寝息を立てていた。

「またあの夢か…。」と毒つく。


そして、また布団を被り深い眠りに落ちた。


・再び目が覚めた。

太陽の位置からして、昼くらいであろう。

ランドは上半身だけ起こし回りを見渡した。

子分達は、ベッドを空にしていた。

多分、また町へ出掛けたのであろう。

町は、ランド達の家からさほど遠くない場所にあった。

彼等は、名目上"盗賊"なので、町から離れた丘に家を建てて3人で住んでいる。

町の名前は…何だっけ?と思い出せない。

山に囲まれた小さな町なのだが、人は沢山居た。


ランドはベッドから飛び降りて、子分達を追い掛けるように町へ向かった。


町に着くと、商店街みたいな集落がある。

どうやら、祭の準備をしていた。

その中を歩いていると、あちらこちらから、人が挨拶をしてくる。

ランドは盗賊の親分なのだが、悪さは一切せず、また2週間ほど前に、この村で起こった"ある事件"を解決し…この町では英雄扱いになっていた。

ランドは軽く会釈をして、奥へと進む。

すると、古ぼけた小さなBARの看板が目に写る。

どうやら、彼はそこを目指していたかの様に、ドアを開け中に入る。


中に入ると"珍しく"お客が沢山入って居た。

しかし、奇妙な事に全員まだ酒も飲めないような17〜20歳くらいの女の子が沢山居た。

と言っても、ランドもそれほど変わらないが…

ランドが入るや否や、今までピーチクパーチク騒いでいた女の子達が静かになった。

ランドはカウンターに座りいつものご飯を注文した。

飯をガツガツと頬張っていると、女の子が1人ランドの方まで歩みより、聞いてきた。

「あ…あのぉ〜、もしかして英雄ランドさんですか?」

ランドはまたか…と言う顔で、

「俺は英雄なんかじゃ無いが、ランドだけど…」と言う。

すると、女の子は急にキャッキャキャッキャ言い出した。

周りの女の子も、それを聞いてランドの方へと集まって来た。

「今、歳はいくつ何ですか?」

「彼女はいるんですか?」

ウルサイ…とランドは思った。

たかだか、"あの事件"を解決したってだけで、こんなに騒がれるとは思わなかった。

「王女様と付き合ってるんですか?」と質問が来た。流石にそこは無視出来なかったのであろう、質問に答えた。

「やめてくれっ!俺は、もっと優しくておとなしくて、静かな女の子が好きなんだ。」と答えるとまた女の子が騒ぎ出す。

「私!優しくておとなしいわよっ!」

「何よっ!私の方が静かよ」

「誰が、優しくなくてうるさい奴だって?」

と殺気がする。

ランドは思わずフォークを落としてしまった。

すると、入口の前に金髪にポニーテールをし、ランドよりかは1〜2歳年上の女性が怒った顔をして立っていた。

もし、この場に女の子が居なかったら…

もし、あの時、王女を見捨てて逃げて居たら…


ランドは自分の過ちを恨んだ。

父さん…母さん…僕もそっちに行きます。

と天を仰いだ。




「マスター、いつもの頂戴!」とプリムは注文をする。

店内は女の子達の姿は無く、カウンターにマスターとプリム…

そして、少し離れた部屋の隅にボロボロになった物体が横たわっていた。

「あ〜あ…ねぇ?マスター、私ってガサツでウルサクて可愛いくないのかな…。」

プリムはかなり根にもつタイプだった。

「ねぇ?ランドもさぁ、いつまでも倒れて無いで、隣に座ったら?それとも私の隣はイヤ?」

とランドは素早く立ち上がり目にも止まらないスピードで隣に座る。

殺気がビシビシと顔の横に当たる。「ねぇ?ガサツでウルサクて優しく無いお姉さんのお願いを聞いて欲しいんだけど…」

と殺気が更に突き刺さる。

これを断ったら、本当に命が無くなるな。と思い、目一杯の笑顔で答える。

「本当!?嬉しいわ!こんな私のお願いを聞いてくれるなんて!」

ランドは泣きそうになっていた。

「実はね、ランドが何で狼の"魂"を持っているか知りたいの」

それは興味ある!とマスターも身を乗り出して来た。

断りたかった。

でも、断ったら殺される。

いっそ、狼になって高速で逃げるか?とも一瞬思ったが、直ぐに却下した。

絶対に逃げられない!と直感したからである。

ランドはしぶしぶ話し出した。

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