使いこなすためのトレーニング検討
マラソン、柔軟、水泳、障害物アスレチック、射撃、組手。
世界観的に銃器の分解組み立てと座学は無いだろうという感じで
予備役の基礎トレーニングを当てて試みる。
さて、どれほどの段階まで体を慣らせばいいか。
エルダーテイルにの職業に準拠した辺りでやめておくのか?
現実に近い水準まで持っていく必要があるのか?
ここまで出張ってくる連中は居ないだろうが
アキバのPK禁止指定区域外は
未だに鬱憤を晴らすだけのために
PKやMPKを行っている馬鹿が居るという話もある。
この世界に拒絶されたと感じ、
ひざを抱え込む連中と大して変わりはない。
こうなってしまうと亜人の略奪旅団と大差がない。
なまじ、高性能な体をもっているだけに厄介とも言える。
まぁたいした戦闘訓練はしていないだろうから
フルには使いこなせていないだろうし
現実の武術や格ゲーとなぞってみるような事も試していないだろう。
ヒーラーを用意していても
流石に切るために体を差し出すなんて事は毛頭考えないだろう。
やはりその一段上を行く事を考えた方がいいのだろうか。
今の守護戦士の特技に関しては音声入力と動作入力が出来ている。
フィールドアスレチックに水泳にマラソンに柔軟に組み手、
射撃の変わりに弓とボウガンかぁ
一人で出来ない組み手が難関だな、
今の騎士団員に組み手をやらせるわけには行かないし。
ネイチャー系のモンスターでもそう高レベルのものは居ない。
いいとこ勝負出来そうなのはベヒの幼生体くらいか。
とりあえず、出来るところからだ。
街の朝は早い、日の出と共にゆっくりと動き出す。
「サザンまで往復走りこみ出るが、付き合うものは居ないか?」
と宿舎住まいの若手に一応声をかけてみる。
休息日とはいえ、装備の手入れには余念が無い者も。
三々五々、自主練する者たちも居る。
レベル40代後半の者たちがこぞってよってくる。
「街道をですか? 砂浜をですか?」
「砂浜を予定している、変えてもいいが慣れぬ街道はひざに来るぞ?
また、交易と旅の者たちに迷惑もかける。
砂浜は全身に来るがな。
帰りはボクスルトの温泉まで山駆けだ、おまえらは帰りは馬で良いぞ。
各々訓練日ではないことを念頭に無理はしないように。
どうする?」
「お供します。」
「では、行くか。」
「はい。」
浜までは町の様子を見ながらゆっくりと歩く。
初日の対処が効をそうしたのか、落ち着いた賑わいを見せている。
装備類はマジックバックの中。
皆も護身用の短刀かナイフを身につける程度。
アプリコットくらいなら彼らにはそのくらいの装備で十分だ。
力は護るもののためにあるもので、忍従をばら撒くものではない。
街の中を歩くのに物々しいのは警邏の者たちだけで十分だ。
浜に着き、装備をつける。一緒に重りになるようなものを取り出し
かつて仕立ててもらった背嚢に大体100Kgほど詰め込む。
現実世界だと歩兵パラシュート部隊の装備くらいといえば良いか。
「えと、それはいったい?」
「ハンデだ、当然だろう?」
「はぁしかし・・・・」
「私が居た世界の軍隊、この世界でいう騎士団はな、
この位軽々で無いと歩兵は勤まらないんだよ
外聞が悪そうだが、
サザンまでは漁師村も無いことだし、大丈夫ではなかろうか?
それに何も身に付けていないと置いて行ってしまうぞ?」
「それは困ります」
「なら付いて来い」
「は」
重装備の私を先頭に遅れまいと着いてくる。
砂地はバランスを取るのが難しい。
特に海辺は湿った砂と乾いた砂が入り混じる
独特のトレーニングフィールドだ。
意図せずとも体幹を鍛えてくれる。
馬上訓練の役には立ってくれるであろう。
一人だけ金属音を鳴らしながら走る。
脱落者も無く、無事にサザン付近までたどり着く。
「とまれ~」
「はい」
「この格好じゃ街中に入るのに外聞悪いから外すぞ
ま、さして時間は掛からん。」
サザンで遅めの朝食を取る。
みな健啖だ、そうでなければ体が持たない。
この辺りにも「美味しい食事」が浸透してきて
海の幸に恵まれた美味しいものが多い。
「呑むのは屋敷でな
好きなものを頼むといい」
手の込んだものより、丼物に当たりが多いのは
やはりメインユーザーが若者、独り者と言うのせいもあるのだろう。
自分は無発酵パンと魚の香草焼きを頼む。
皆には先に西の街外れに待機して置くように命じ、
勘定をすませ、中心に向かって街を歩く。
商館にたどり着く前にここの顔役であろう者たちと出会う。
少し緊張をした面持ちだ。
「こちらへのご用向きは何用で?」
「警戒せずとも良い。
使いを出すような用向きではなく
訓練後の朝ご飯を食べに寄っただけの事だ。
顔を出すくらいは礼儀かなと思い向かっていたところだ」
「ならば、この場で十分でございますな」
「ちょくちょく来る事にはなるが食事が目的だ
他意はない。
ついでだが、護衛が必要な者たちは?」
「とりあえず、西に向かうものは居りませんね」
「そうか、では帰るとする。」
待機している者達に告げる。
「西に向かうものは無いという事で帰りも訓練とする
騎乗するものは先に向かってよい
私は走るが。
それとボクスルトの領主に伝言を頼みたい」
「私が参りましょう」
「では、頼むか
湯場を適当を借りたい旨だけなのだがな
この街のように
無用な猜疑をかけさせても困るのでな」
「湯場のひとつを借り受ける事、晩餐は無用な事
この二つで?」
「そうだ、
湯場は用意せずとも良いとも伝えてくれ
迷惑はかけぬ場所を択ぶゆえ配慮は無用と
よろしく頼む
皆も先に向かってよい
屋敷で愛馬に乗り換えるが良かろう
慣れぬ馬の騎乗訓練だ
私は今朝の装備で走る
各々準備が出来次第出発
仮の集合場所はボクスルト砦」
「では、お先に参ります」
カチャカチャと五月蝿いので帯剣はせず、盾も持たない。
その代わりに荷を増やす。
街道より海よりの林を走る。
元々は砂防林だったのであろう植生が続く
流石にこれにはついて来れるものが無く
街道に出、騎乗するものが増える。
最後までついて来れるほどの猛者は居なかった。
装備を外し、屋敷に戻り、
決済用の箱から書類を持ち出し
皆の待つボクスルト砦に向かう。
トレイル・ランなんて何時ぶりだろうか。
体が若く高性能なのは良い事だ、思ったままに動ける。
しかし、この体は一体何歳なんだろうか・・・・。
街道は狭いので昔から知る山道を行く。
砦の場所は旧跡箱根の関所だ。
ここで合流し、反転硫黄泉の谷に向かう。
ここから途中までは馬で移動する。
馬を御しながら書類に目を通す。
必要事項は宝珠を使って家令に指示を出し
暮れまでには帰宅する事を告げる。
この湖の周囲には大地人さえ知らない湯場が幾つかある。
これから行く先もそんなところ。
神代の遺構が植物に侵食され、湯ノ花が咲き
石組みの隙間を埋めていたコンクリートが
すべて硫黄と置き換えられてしまっている。
湯口も硫黄で覆われて
天然の温泉場になっているところだ。
「ここで一休みする
体を癒すにはいい湯だ」
臭いに訝しげながら湯につかる姿がなんとも面白い。
少しずつ頬が緩んでくる。
リラックス出来ているようだ。
「皆の習慣には無いのか?」
「そうですね、お湯自体が貴重ですから」
「まぁここなら宿と違って金貨の必要は無いからな
そして自然の中だ」
「敵性動物は?」
「熊か猿に猪と言ったところか、
この場では、こちらに敵意が無ければ問題ない
彼らも癒しに来るだけだ
オーガはもっと山奥だ、食に窮すれば降りては来るだろうが
普通に皆が来る分にはここまで上がらずとも温泉場はある
宿なら食事も出てこよう」
ひとしきり、訓練の話に花が咲く。
「暮れる前には街に帰るぞ」
声をかけ、帰りを促す。
「ま、そのうち付き合ってくれ
他の訓練も考えてはいるが
騎士団の訓練から外れるから
そちらは誘わないがの
今回の砂上訓練については各部隊長に追加の検討を出しておく
決まれば、そちらには顔を出そう。」
こうして一つ目のトレーニングは決まった。
翌日
書類に目を通しながら水中訓練について検討する。
さて、泳ぐのに適した場所か。
海は外したい、サファギンはどうでもいいが、現実世界には居ない鮫型モンスターが居る。
川は酒匂川があるんだが、現実世界では遊泳可能な場所は無かったはず。
後は足を伸ばして人造湖の丹沢湖、この世界に遺構として残っていればだが。
あとは芦ノ湖だよな~。
他領地で訓練と言うのはいかがなものかと思うので外す。
サザンまで走った事を考えると外さざるを得ない。
この世界で生きて抜くだけなら水泳訓練と言うのは要らない。
陸棲モンスターとの対戦訓練だけで十分。
水棲モンスターとの戦闘も基本は浅瀬か陸上で、完全な水中戦闘は少ない。
ただこの体を使いこなすとなると話は変わってくる。
職業を超えた運動能力があることは分かっているわけで
潜水活動はできたほうがいいわけだし
泳ぐ事に体を慣らしたほうがいい。
川での泳ぎ方、海での泳ぎ方もプールでのそれとはまた違う。
流れや潮流という負荷が有った方がより良い。
現実よりも若い体はどのくらいの事まで出来るのかも確認しておきたい。
まずは、一番外したい海に行くほか無いようだ。
ま、何かあってもアキバの大神殿だ。
水着で復活してその足でギルド会館まで歩くというのは
かなり問題ではあるが致し方あるまい。
家令に「水中訓練」に出向くとだけ告げる。
「行ってらっしゃいませ」とだけ。
漁村に寄り、鮫型モンスターの出没情報などを集めて海に出る。
懐かしい潮風だ。
トライアスロンで大島を泳いだ事を思い出す。
ま、あんな感じでぐるっと泳いでくればよいでしょう。
一応護身用に短剣だけは挿していく。
泳ぎだしは問題ない、体がスムーズに動く。
途中で海中にもぐってみる。
潮流とは面白いもので、深さによって流れが異なる。
こんなところにも「現実」を感じる。
地球のようで地球ではないセルデシア亜世界。
現実の世界には
「同じ宇宙にある同等の他知性体とは遭遇できない」という仮説があるが
地球型の惑星は沢山ある。
光速以上の速度航行技術が開発されない限りは出会えないというだけの事。
そんな事を考えつつ、泳ぐ。
ここはどこの時空間のハザマにある世界なんだろうなとも思考をめぐらす。
やっぱり「水の中」はいい。
一人、考え事を巡らし調査したこの世界の現象を整理していくのにも丁度いい。
何時間泳いだのだろう。
運良く、攻撃性の高い海棲モンスターとは遭遇していない。
正面に島陰が見える、正しければ現実世界の大島だ。
かなりの距離を永続的に泳げるほどにはこの体は高性能だという事だろう。
日常訓練からは除外する事にする事を決め、上陸する。
サザンのときのように大事にならないうちに帰還呪文を唱え、アキバに戻る。
偽装し、大地人が経営する貸し馬屋から馬を借り受けサザンまで走る。
サザンからは別の馬を借り受ける予定だ。
荷物も無さそうな大地人は襲う価値が無いのだろう。
無事にヨコハマまで抜ける。
途中、商務に関して判断を仰ぎたい旨の通信が来る。
この辺も自立型に移行しなければならないな~と思いつつ返答する。
屋敷に戻り、夕飯までたまった書類を整理していく。
夜間はフィールドトレーニングだ
単純に山岳行軍するだけなら特に訓練も必要は無い。
暗殺者並みの敏捷性がどこまであるのか確かめたいといったところか。
山岳エリアが一番いいのだが、領内でいい場所が浮かばない。
もう少し山深い場所まで行く必要があるのだろう。
候補地を挙げていく。
他の領主の守護範囲から外れるのでこれは特に除外項目にならない。
丹沢山系に行けば良いだろうとあたりをつけてみる。
丹沢山系から大山山系に抜けて現実世界の相模川の流域まで。
途中幾つか川を渡ることも出来るし、このあたりが妥当な線だろう。
手製の脛当てに靴、篭手をつけて山に分け入る。
一応、オーガ対策に短刀を腰に差し。
適当な太さの枝を択び、飛びわたる。
オーガの領域に入らないように気をつけながら
北東に進む。
幾つかの尾根を超え、川を渡り、台地の草地に出る。
このあたりは遺構が無いのか、旧軍飛行場跡そのままって感じだな。
大地人の村も流石に上には無いか。
ここまでくれば、ゴールは目の前。
下れば目的の河岸だ。
大地人の村に入らないように崖を下る。
河岸段丘の底に横たわる川にたどり着く。
今日はここまでとするか。
とりあえず、軽武装であれば問題なく動けるな。
となると、これも日常訓練では必要なしと。
問題は「組み手」か。
わざとPKに絡まれてみるのも有りか。
多分、実戦の方が分かりやすいだろう。
3つか4つに分けて書こうと考えていましたが、ちょっと無理がありました。
ロケーションに困り果て
湘南海岸を走り、
伊豆から大島まで泳ぎ、
小田原、開成、松田、山北、清川、愛川と駆ける羽目に・・・・。
そして能力確認して終わる・・・・。
組手は対PK戦で試すことになります。