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8. 女神、登場!

ようやくここまでたどり着けた……。

あと1話で1日目終了します。

この話だけで文字数が初期の話と比べて倍増しました。

あれ~??


最終改訂9/18



「生まれた子供は男ばかりだった。唯一女の子だったのが今お前が入っているその子だ。何で取り憑いているんだ。というか何の嫌がらせだ!そこまでお前に止めを刺した俺が恨めしいのか!!」 

 涙目で訴えられた。

 そんな悲痛に訴えられても、私にもこの状況はさっぱりなのだ。

 だがそれ以上に、まず訂正しなければいけないことがあった。


「いや、それに関してなんだが……どうも取り憑いている、という感じがしないんだ」

「どう言う意味だ?」

「他人の身体、という感じではないのだ。一つの身体に二つの意思があれば反発力が生じるだろう。だがそんな感じは一切しない」

「なんだって!?」

 驚く勇者を見つめながら、魔王の脳裏に唐突にある考えが浮かんだ。

「まさかとは思うが……『神』が、絡んでいるのではないだろうな」

 魔王のその言葉に、勇者が素っ頓狂な声を上げた。

「は?神ってあの神か!?」

 そして。


「呼んだ?」


 その声は二人の頭上から突然降ってきた。



   ―――――― ※ ――――――



「だ、だれだ!?」

「うをっ!!」


 唐突に現れた存在に二人して驚きの声を上げる。


「誰かが私の噂をしてると思ってやってきたら、私のお探し二人組みじゃない。ちゃんと揃って居る……けど、なんだかサイズが予定と違ってない?」


 現れた人物を簡単に説明すると、紫の瞳と金の豊かな髪を持つ妖艶な美女。


「……あんた、一体何しに来たんだ?」

 勇者にとっては見覚えのある人物だった。人ではないが。

 以前見た時はミニマムサイズで黒髪だったが、今回は等身大で現れた。こうしてみると神、という威厳はそこはかとなくある……と思う。

 厳かな感じより(なまめ)かしい部分が強調されているため敬う気持ちにはあまりならないが、世の男性としては別の意味で拝みたいと思うだろう。

「お久しぶりね。どれくらいぶりかしら」

 勇者にとっては無理やり祝福を押し付けられて以来である。

「50数年ぶりです。お久しぶりですね、創造神メルタ=シェーン」

「え?ええ!?」

 魔王だけは状況がさっぱり掴めず、何度も視線を目の前に立つ女神と勇者の間を往復させた。


「ど、どういう事なんだ?」

「あら、そういえばこの姿で貴女に会うのは初めてね。初めまして。私はこの世界を創り出した始まりの女神、メルティエリアよ。メルタと呼んで頂戴ね」

 どこかうきうきした様に言われたが、妖艶な女性から発されるとちょっと違和感を感じる。

 神々しさはあるのだが、敬う、という気には今ひとつならないのは何故だろうな。

「は、初めまして。え~と……」

 魔王は名乗り返そうと思ったが、今の自分の名前を知らないことに気付いた。この身体になったからには、以前の名前を告げるわけにもいかないだろう。

 そんな戸惑いを察してか、女神はにっこり笑って言った。

「貴女はアリーシア。春の女神アリア=シェーンの名から(あやか)った名前よ」

「そうなのか?」

 そう問われ勇者は肯く。

 問われなかったから、今までお互い名前を言って無かった事にいまさらながらに気付く。女神が何故彼女の名前を知っていたのか疑問に思ったが、うっかり突っ込むと何かよからぬ事態が引き起こされる気がしたので沈黙を守った。

「で、貴方は……」

「俺はジェイスだ」

 女神の言葉をさえぎるように勇者は名乗った。


 ……以前聞いた事のある彼の名前と、まったく違う名を。


「あら、それは偽りの名よ。神に偽りを告げる気。それでいいの?」

 どこか楽しそうに言う女神に、勇者は逆に泰然と告げる。

「ああ。今の俺の名前はジェイスだ。いまさらあの名前には戻れないし、戻ろうとも思っていないからな」

「そう。当人がそれで良いというのならそれでいいわ。ジェイスにアリーシア、か。……いい名前ね」

 そう言ってニコニコと笑いこちらを見つめてくる女神に、二人は言い知れない予感を覚えた。



   ―――――― ※ ――――――



「ところであなたたち、過去にあった大災害の事、知ってる?」

 唐突にそんな事を聞かれ、二人は戸惑いながらも記憶をひっくり返してみた。


「うん?確かはるか昔に未曾有の災害に見舞われた、とかいった御伽噺があったような気が……」

「……何代か前の魔王が暴挙に出てこの世界の理をひっくり返そうとした、という話があったような」


 大昔のあやふや夢物語と、数代前と記憶に残る出来事。

 思い出の規模が一回り違っている。人と元魔王との寿命の差、といったところか。


「ちょっと待て。なんでその魔王はそんな事をしたんだ?」

「ん?いや、当時その魔王はな、確か何らかの理由で愛した人を亡くしなんだ。その人が亡くなった事が許せなかったとか何とかで、生き返る事を望んだんだ。それは当時の理では死者は生き返らない、というのが絶対普遍の事項だったんだが、その理を無理矢理捻じ曲げその末に何とか彼女を生き返らせる事に成功したんだ」

「ふーん」

「が、それには続きがあってな。やっぱり無理やり捻じ曲げたせいもあってか、生き返った彼女はその愛した魔王も分からない程変質した生き物に変わってしまっていた。そして魔王も自分のした事に気付き狂った。それがあの異変の簡単なあらましだ」

「いろんな意味で規模でけぇぞ……」

「そう。それでこの世界がその歪みを抱え切れないほど軋んだせいで、未曾有の大災害が起こったの」

 勇者のつぶやきはあっさり無視されたが、彼もそれを気にした風も無く続きに耳を傾けた。

「私もそれを何とかしようとがんばったんだけど、それでも歪みは消しきれなかった。苦労の末、何とか事態の収拾はついたけれど、それでもこの世界はかつて無いほど不安定になったのね。それで手っ取り早く事態回復を図ろうとして、生み出したのがあなたたち二人よ」


「「は!?」」


 勇者と魔王の声がハモる。

「ちょっと待て。それじゃ何でこんな事になってるんだよ!」

 こんなこと、と言いながら自分と魔王を交互に指差した。

「それがね。ちょっと失敗しちゃって、この子の魂を落っことしちゃったのよ。見失った子を探して長い時を迷っちゃったんだけど、結局どこに落ちたのかさっぱり」

 この子、と言って魔王の方を指差す。

 てへっ、といった感じで軽く言っているが内容はとんでもなかった。そんな可愛らしく誤魔化す程度で済まされていい範疇を、はっきり言って大きく逸脱している。

「一応神なんだろ。何ですぐに見つけ出せなかったんだよ」

「一応でなく立派に神です!だってどの時代に落ちたのか分からなかったんだもの」

 どうやら時を超越した探し物だったようだ。そりゃ簡単には見つからないのは当然だろう。


「そんなこんなしていたら、いつの間にかもう一つの方も落っことしちゃうし」

 うっかりにも程があるだろう。


「こっちはあっさり見つかったから別に心配するほどの事は無かったわ。でも同時に芋づる式みたいにもう一方も見つかったまではよかったけど、何故か魔王をやってるじゃない。もうショックだったわ」

 こっちと言って今度は勇者の方を指差した。芋づるとはあまりにもひどい表現である。

 どうやら魔王の事は、女神にとってはショックを受けるほどの事だったようだが、何処がどうショックだったのか勇者も魔王も聞きたいような聞きたくないような心境だ。


「その後色々と考えて何とかめぐり合わせようとも考えたけど、どうやっても今更どうにも収拾出来ない事態になると思ったから色々諦めたのよ」

 諦めはやっ!!


「それであなたの後の人生はせめて幸せな人生を送ってもらいたいな~、とか思って一番幸せになれるであろう場所に転生させようと思っただけなのに、なんでこんな事になってるのかしら?」

 その一言を聞いた瞬間、勇者は「今この瞬間、俺が不幸になったわ」とぼやいたが、女神はそんな言葉をあっさり聞き流し、なおも語り続ける。

「後の伴侶となるであろう一番の候補の近くでもいいかな~、とか考えたのがいけなかったかしら。おまけに何でこんなミニマムなサイズでの出会いなのかしら?そもそも出会いはもっと劇的に盛り上がる感じが好みなのに。今は小さくても見た感じ将来はきっと絶対美人に成長するから、色々と期待してるんだけど……」

 後に続く言葉を聞きながら二人は、突っ込みたい要素はいっぱいだと思いつつも何も突っ込めなかった。

 話には異様な熱意が篭っていて、突っ込む間も見せないほどの語り様だった。


 尚もぶつぶつとつぶやき続ける女神をよそに、勇者は魔王に視線を送るとたった一言。

「魔王、後は任せた」

 そう言って、おもむろに部屋を出て行こうとした。

 あまりにも唐突で軽い勇者の言葉に魔王はあっけに取られたが、次には慌てて勇者の下に駆け寄る。

「は?ちょっと待て。どこに行く気だ!?」

「頭痛くなってきたからもう寝るわ」

 そう言いながら頭を抱えて視線を決して合わせようとせず、そそくさと出て行こうとする勇者の服のすそをしっかりと掴む。

「待て!逃げるな!!私一人では荷が重すぎる問題だぞ!!!」

 というか、連帯責任だ!運命共同体だ!!道連れなんだ!!!という視線と力技で勇者を必死に引き止めた。

 サイズの差ゆえに、ズリズリと引きづられていたが。


「ちょっと。話は終わってないわよ、そこのお二人さん」

 魔王の声に勇者が逃げ出そうとしていたことにようやく気付いた女神は、じっと二人を見つめていた。その雰囲気に勇者は小さく舌打ちし、逃げそこなったのを悟ったのか渋面を浮かべつつしぶしぶと元の場所に戻る。


 そして、女神が次に発する言葉に二人は耳を傾けた。

「さてひとまず私のもうそ……じゃなかった、希望と言うか期待はひとまず置いておいて」

 ……ひょっとして、妄想、と言い掛けなかったか?


「とにかく。手っ取り早く事態を収拾するためにも、貴方たち二人がくっつけば問題は無いのよ」

「「は?」」

 女神は豊満な胸を強調するかのように腕を組んで、はっきり言い放った。あまりにも問題ありすぎる言葉に、二人して言われた意味がとっさに理解出来なかった。


「つまり、あなた達二人の子供が事態収拾のためにも一番効率よく、さらに言えばこの世界をより良い繁栄へと導くであろう!ってことで、あんたたち。結婚なさい!!」

 ビシィ!!という音が聞こえるような雰囲気で指差された。


 しばしの沈黙。


 沈黙。


 …………。



「ちょっと待てぇぇぇぇいっっっ!!!」

 案の定、というかやはり叫んだのは勇者だった。

「あら何?」

「問題ありすぎだろうが!!」

「どの辺が?」

 真面目に聞き返される。

 あまりにも真面目に聞き返されたため、一瞬言葉を躊躇ったが勇者ははっきりと言った。

「あんた一応女神だろうが!!世界の神は、近親相姦はご法度と広く厳しく伝えて無かったか!?」

「一応では無く、しっかりと、この世界を創り出した女神です!それと、あなたたちに関しては最初に告げたとおり事情がちょっと違うのよ。だから私が神殿にうっかり神託を落っことすだけで、世界は大歓迎で祝福してくれるわよ」


 心の底から楽しそうに告げられた。



次話では勇者に呪いをかけた人の事情にちょこっと触れます。外伝の補足みたいなものです。

なんて長い一日……というか、半日なんだ(ーдー;)

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