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6. あれから何年か……

勇者の過去(黒)がちょっぴり出てきます。

11/4、勇者のぼやき内容微妙に変更。


最終改訂9/18



 あの後、お互い落ち着こうと家路についた。


 帰り道は沈黙。


 帰り着いてもしばらくの間、沈黙は続いていた。


 それも当然の事だろう。

 落ち着いたからといってこの状況が何なのか、お互い説明が出来なかったからだ。

 テーブルを挟んで向かい合って座っていたが、ただじっと椅子に座っていても何も変わらないし何も会話が浮かばない。

 そう思い立ち上がると、勇者は気持ちを切り替える意味も込めてお茶を淹れた。


 その淹れたお茶をお互い飲みながら、とりあえずお互いの記憶の補正に取りかかったのだった。



   ―――――― ※ ――――――



「ほら、飲め」

 そう言って差し出されたカップを受け取り口をつけた。

「ありがとう。あつっ」

「それにしても何の冗談だよ。俺の娘に元魔王が入ったなんて笑えねえ話しだぞ。おまけに俺がかつて討った魔王だと!?冗談にしてはあまりにもひど過ぎるぞ」

 などと勇者はぶつぶつ文句を言っていた。

 すまない。私はそれに対する回答を持っていない。言ってやれることがあるとすれば、運が無かったな、だけであろう。


 実際その発言をした場合、勇者はきっと「元凶のお前が言うな!」と叫んだだろう。


 とりあえず話題を変えようと、魔王は一番気になっていた事を聞いた。

「そういえば、私が倒れてからどれくらいの年月が経ったのだ?」

 この言葉に正気を取り戻した勇者は、だが言葉を躊躇った。

 苦虫を噛み潰したかのような表情で、小さな声で答えを返す。

「……年だ」

 あまりにも声が小さくて聞き取れなかった。

「え?何年だって?」

 聞き返すと勇者の手に握られたカップが、異様な音を立てて罅を走らせる。

 魔王は勇者の異様な様子に首をかしげつつ答えを待った。

「50年だよ!!」

 黙って待っていたら、半ばやけくそのような返事が返ってきた。

 聞いただけなのにそんな反応を返すことは無いじゃないか。それにしても切りのいい数字だな。


「ほー、お前は結構若作りなんだな」


 とりあえず正直な感想を言ってみた。

 すると、勇者の身体が大きく傾いだ。


 魔王が最後に直接見た勇者の姿から1,2歳ぐらい年を取ったか、といった程度だ。


 50年も経っていてこの若さである。どう間違っても、その一言で済ませられる程度ではない。

「……色々と突っ込みたい事はあるが、何より一番訂正させて欲しい事が一つある!この姿は、あの後、色々とあったせいであって、若作りと言うものでは、決してない!!」

 一言一言区切りながら力説していた。

「ふーん」

 いまいち納得したのかどうなのか判断に悩む返事だった。


「じゃあ何でだ?」

 この質問を返した瞬間、勇者の背後に黒いオーラのようなものが立ち上った気がした。

 ふはっ、と突然噴出した勇者を訝しく思う間も無く次には、はっはっは、と暗澹たる気配を背負ったまま笑い出していた。

 その姿をみて魔王は、どうやら非常にまずい質問をしたのだとようやく気付く。


「あのくそ忌々しい野郎のせいだよ。あの通りすがりの外見詐欺中身猛獣野郎が俺に不老の呪いを掛けたんだ。そのせいでどれほど苦労したと思っている。まったく人生計画斜め方向に曲がったんだぞ。俺が何をしたっていうんだ。何もしてねえよ。ただ単に問われた質問に正直に答えただけで気に入らないってどう言う意味だ。そのお礼に呪いってありえねぇだろ。本気で喧嘩を売ってやりたくても、もういないんじゃどうしようもねえし。けどこの腹の内はおさまらねぇ。くそっ。今だったら全力でかかりゃ何とか一撃でもお見舞い出来ただろうに。あの野郎、人の隙をついて問答無用のこの呪いを掛け逃げしやがって。おまけに何だ。自殺でもしようものなら不老だけじゃなく不死の呪いだと。どれだけ手の込んだ嫌がらせだ…………」



 尚もぶつぶつと何かを呪うかのように言い続ける勇者の姿に、魔王は思った。


 何だが一筋縄ではない事情があるんだな、その若さについては。

 この事に関してはそっとしておいてやるのが優しさだ。きっと。


 ……と。


 こんなこと考えている途中で勇者の「ジヴラ山を潰しただけじゃ」云々発言を聞いたがあえて聞かなかったことにする。

 あの景観が美しい、と言われていた山が消えたのか、と思ったがあえてコメントは控えさせてもらおう。

         

 あの山がただ景観だけ(、、、、)はすばらしい山だったとか、実情は魔物に支配され、さらには何も対策をせずに人が踏み入れる事は不可能な毒に犯された土地だったとか、そんな事は今となっては関係の無い話しなのだ。










 さらに言えば、あの山でしか取れない貴重な薬草が群生していた場所だったとか言う事も…………今はもう、どうでもいい話しだろう。


 そんな事を考えながら、黒い空気を背負い呪いのような言葉を吐き続ける勇者を、そっと見つめつつお茶のお代わりを注いだ。




だんだん文字数増えてきてる気が……。

未だに一日目が終わらない。

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