番外編. とある日常のこぼれ話
行き詰まったための苦肉の作。
小話集みたいなものです。
最終改訂4/11
① 悪い子にはお仕置きが必要です
魔王が魔物狩りというお仕置き行動を、子供たちと一緒にするのを見て勇者は聞いてみた。
「一応元でも魔王だったんだろ。何で普通に魔物をやっつけに行っているんだ?」
「勇者。悪い事をしたら怒られるのは当然の事。そしてお仕置きされるのは当たり前なのだぞ」
胸を張って言われた言葉に思わず、そうだな、と一言。
後でこの言葉にうなずいてよかったのかどうか。
ちょっと悩む勇者だった。
―――――― ※ ――――――
② とある少女の日記。
「
このまえ、とってもすてきなことがありました。
あたらしい『おともだち』ができたのです。
なまえは、アリーシアちゃん。
わたしより3さいもとししたなのに、とてもしっかりしていました。
くりいろのふんわりとしたながいかみに、みどりのきれいななひとみ。
なによりすごいのが、とってもびじんなのです。
またあしたもいっしょにあそぶやくそくをしたから、たのしみです。
」
日記を閉じて少女は思った。
新しく友達になった少女について、そういえば不思議なことが一つだけあったな、と。
ときどきアリーシアちゃんの目の色が紫色ににみえる気がするんだけど、気のせいだよね?
だってお母さんが言ってたんだ。
紫って色は神様の祝福を受けた証なんだって。
前に「貴重で尊重されるべきとても大切な研究材……じゃなくって、特別な存在なのよ!!」って力いっぱい叫んでいたから、とっても珍しくてとっても特別なんだろうと思う。
そのときのお父さんがなんだか変な顔をしてたけど、なんでだろ。
ところで、祝福って何?
それって美味しいの?
(アマルさんの娘視点。初めての遭遇した頃の就寝前の出来事)
―――――― ※ ――――――
③ 勇者一家の前と後
――娘(魔王)が生まれる前。
「そういや兄さん達ん所って何人か子供が生まれてるけど、驚くぐらい娘って生まれてこないな」
「言われてみればそうだな。俺達兄弟も男ばっかりだし」
「なんだか呪いにでもかかっているみたいだな」
そんな冗談を言い合って笑った。
――娘(魔王)が生まれた後。
「そういや兄さんの所に待望の娘が生まれたんだと」
「そりゃ目出度いな。祝いの品でも持って行ってこようかな」
「この間も漸く結婚にこぎつけられた兄貴んとこにも娘が生まれたらしいな」
へー、などと相槌を打っていた時、ある一人の兄弟がポツリと言った。
「……そういやさ」
「ん?何だ?」
「今、気が付いたんだが……親父の所に娘が生まれてから、兄さん達の所にも娘が生まれてくるようになったよな」
「……いや、まさか関係は無いだろ」
「そ、そうだよな。まさかこんな馬鹿馬鹿しい話、関係ないよな」
そう言って笑いあった。
が。
まさか自分の所に娘が生まれないのが恨めしい余り、こっちに生まれてくるなとか思って呪いでもかけていたんじゃないだろうな。
まさか、という思いと、実際あの父親ならやりかねない、という思いで兄弟たちは顔を見合わせた。
最終的に顔を青ざめさせ乾いた笑いを上げた、兄弟達の一幕だった。
―――――― ※ ――――――
④ 元凶は家に居た
ふと勇者は思い出していた。
魔王が過去の告白の時に言っていた場所。
ジェズラの森。
特殊な結界に覆われた土地で、入るのは容易いが出るのは危険と隣り合わせの魔の領域でも危険度第一級の場所である。
そしてそれ以上に興味をひかれたのが魔王が口にした生き物の名前だった。
後に色々と詳しく聞いたのだが、どの生物も一度は耳にした事のある名前ばかり。
と言うのも、その生き物達について某所の研究者達が、
――何故この生き物がこんな進化出来たんだぁぁぁっ!!!
と頭を抱えて絶叫していた場面を見かけた事があるからだ。
何気に家にいた存在が、進化の途中経過を飛び越えさせた元凶だったようだ。
―――――― ※ ――――――
おまけ① 勇者の○○
俺はあの時思った。
魔王のあの美貌は一体どういうことだぁぁぁ……!!!
と。
ちょっとだけでも目を奪われたなんて事は無い。絶対に!何で一瞬でも憂いのある表情でこっち見てるんだ、とか思ったわけじゃないぞ。いやいや、そんな事一片たりとも考えもして無いからな。あれでにっこり笑った日にゃ男でも落ちるかも、とか欠片ほども考えたりしてない!無いんだ!!なんだか羨ましいほどの長身、とかも考えたりもしていないぞ!負けた、とか戦う前から何を考えてるんだ、俺。というか相手は魔王だぞ、これから戦う相手だぞ。そんな見当違いの事を考えている場合じゃないだろ。何でこんな事を暢気に考えているんだよ、俺。しっかりしろ!真面目に戦わないと絶対負けるって。瞬殺で。こんな尋常じゃないプレッシャーもつ存在だとか詐欺だろ。それなのになんで皆平気な顔してるんだ!?もしかして隠してるのか?え?もしかしてこの事に気付いてるの俺だけ?俺だけなの!?
(最終決戦の初対面時の勇者の心情。無表情の下での考え、この間たった3秒(笑)勇者が壊れた話し)
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おまけ② ちょこっと話。
魔王と勇者が生まれるきっかけを作ったお二方の、その後について。
女神様は暴走しながら嘆く魔王を見つめ、「これは愛なのね」と感動していたそうな。世界の危機に何やってんだ、女神様!
その後、魔王は倒されたのだが、それをみていた女神様はかわいそうだから、とちょっと小細工を。
と言うのも、未来にはきっと幸せになってもらいたいと願っての行動だったらしい。
そういう理由で、二人を転生させる事にしたのである。
女神様が関わっている時点で、二人の行く末には既に暗雲が。
……時間がどれ程過ぎたのか。
魔王はとある国の王子として、娘は一介の城下に住む娘として生まれ変わったのである。
ここで二人は偶然出会い、恋に落ち…………ればなんら問題は無かったのだが、ここにきて最大の問題が起きた。
何と娘の方には、何故か前世の記憶が残っていたのである。
不運と言うか幸運と言うか魔王様のほうには残っていなかったのだが、しっかり立派にその片鱗は残っていたらしい。
外面は高級でも中身は真っ黒。そして人間の範疇に納まる程度の、最上の力持つ存在。
一方、娘の方は前世を覚えていたからこそ今度の人生は真っ当な人生を送りたいと望み、その上で外見が極上や身分の高貴な存在には近づくことは決してしない事を自分に誓っていたのだが、不幸な事に前世の旦那様と巡り会ったのが運の尽き。
こっちは分かっているから逃げようとするのだが、向こうは知らないまま惚れてくれて、親切設計用意周到準備万端な状態でさらに追いかけてくる、というひどい事態。
彼女が彼を初めて見た瞬間、思わずといった感じで零したある一言がある。
「人間なのに、なんで前世よりキラキラしいのよ」
と言うのも彼女としては、前世は人外だったから人外魔境の美貌はある意味納得出来ていたのに、今生においては同じ人間でありながら、前世以上の輝きを放つ存在にランクアップしていることが信じられなかったが故の一言。
彼女に出会って、前世を覚えていないのに前世以上の黒さを発揮。同じ轍を踏むまい、とした行動から、その黒い思惑に幾人かが犠牲に。
彼女の存在を目ざわりと、陥れようとして手を出したが故にその黒い思惑の犠牲になった一部の者達は、ある意味自業自得。
彼女の方は何とか逃れようと足掻くが、計画的な包囲網は完璧、周囲の根回しも言わずもがな。
結局最後は、その後結婚。
今度は幸せに暮らしました、とさ。
なんだかんだと言いながらも、子供も5人生まれて夫婦円満。
旦那が何気に年下?城内の一部にしか知られていない腹黒さ。
世間一般には似合いのカップルとして祝福されました。
(本編のどっかに放り込もうと考えて断念。走り書きのようにここに投入(笑))
今更にして思いますけど、
この話って一体どこへ向かって突き進んでいるんだろう……(汗)