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閑話3. 夕刻から何処かへかけての事情通

前半村の男達、後半異次元での人外達の会話です。


最終改訂4/11



 辺境に位置する村、カリスタ。

 村の建物が赤く染まる時間、男達が各々の家路に帰る頃一人の男がこの村にやってきた。






 ――質問です。この村で面白い事と言ったら何ですか?



 証言者1。村人A。

「え?この村で面白い事?そんなもの無いよ。あえて言うなら面白い人間ばかりが集っている、って事ぐらいだろ」


 ――あ、じゃああなたの特技は?


「そんなに他人に自慢できるような特技は無いよ。せいぜい剣の腕がたつぐらいか。まあちょっと剣の大きさが俺の身長サイズってぐらいで。

 それを言ったら隣に住んでるボレットに比べたら俺なんてまだまださ。あっちは魔法使いだったんだが、そのせいで学院を追われたって話だし。何でも異常すぎる威力に学舎を一部ふっ飛ばしたとか言っていたな。

 イディオとかは無実の罪で追い回されたとかなんとか、って話を聞いた事があるな。まあ、あれは見た目悪人面ってのが一番の理由だな。中身は至って善良な市民なのに、って同情してたら結婚しやがって。どんな物好き、と思っていたらお相手は絶世の美女。どんな奇跡!?って皆で噂しあったのが懐かしいな。

 あとは斜向かいに住んでいるゾーンは幽霊が見えるらしいぞ。実際の所、俺はそういった関連の話は苦手だから詳しくは聞いた事無いがな」




「なに?何の話をしてるんだ?」


 ――証言者2。村人B。


「この村でなんか面白い事は無いかって質問されたんだよ」

「へー。って言ってもなぁ……面白い事……うーん」



「何の話をしているんだ?」

 そう言って何人かの男達がやってきた


 ――証言者3。村人C+その他大勢


「お前らも来たのかよ」

「いや、なんだか面楽しそうに話しこんでるみたいだったから来てみたんだが、何の話をしてるんだ?」

「この村でなんか面白い話は無いかって」

「面白い話って……この村自体、変り種の集い、って周りの村からある意味有名だって事お前達知らなかったのか?」

「!!?」

「え!?そうなの?あまり村の外に出る事無かったから知らなかったよ」


 そう言って何人かは驚きの表情を見せる。


「とりあえずどんな話をしたんだ?」

「ボレットとイディオとゾーンの話かな。あいつらが一番面白いだろ」

「確かに。でもそれを言ったらフィオスも……って言ってたらキリがないな。語り甲斐のある人間ばかりが揃ってるものな、ここ」


 その言葉に一同爆笑。


「そういやゾーンって言えば、前に無理矢理ジェイスさんに引っ張って行かれてたのを見た事があるよ」

「あ?何で?」

「いや、何でもある要人が殺された事件が起こったんだと。結局犯人が見つからない、ってことで現場で本人に犯人を聞くためだ、って」

「…………ジェイスさんも酷な事をするよな」

「そうだよな。オレ、思わずゾーンに同情したよ。あいつ幽霊の血みどろとかは普通に見れるのに、生身の血みどろは本当に苦手だったはずだからな」

「あ、たぶん俺その場面見た事があるわ。なんか問答を繰り広げていたんだよな。ゾーンが『冗談ですよね』って引きつった表情で言ったのに対し、ジェイスさんは笑顔で『なにが?』って。聞いてるようで全く聞いていない会話になっていない会話だったな。まあそんな感じでじりじり追い詰められるゾーンの姿を哀れに思いつつこっそり木の陰から眺めたんだよ。他にも何人か面白そうに観察してたのがいたなぁ。で、結局最後は半泣きで『人でなしぃぃぃ~~』って叫びながら引きずられて強制連行。あれみて某歌を思い出したよ。売られてゆ~く~よ~、ってやつ。問答無用ってああいう事をいうんだな~、ってしみじみ思ったものだ」

「ひでぇ」


 同情半分面白半分に男達は話を聞いていた。


「ジェイスさんに関しては、村に格言があるぐらいだものな」

「ああ、そういえばあったな」

「確か『興味は持っても持たれるな』ってやつだろ。あの人、使える物は何でも使えっていう行動理念で動いているから結構犠牲者いるんだよな」

「そうそう。それで友の会が出来たんだよな。ジェイスさんには内緒で」

「それを知っているって事は、もしかしてお前も『なんちゃって犠牲者友の会』の会員だったりするのか?」

「いや、直接は係わり合いは無いんだが、存在してる事は知ってる。あとは会員条項第一項に、絶対ジェイスさんにだけはばれないように、ってのが掲げられた秘密の会だってことぐらいかな」

「けど名前はそんなでも、基本内容はただの飲み会って聞いた事があるぞ。あとジェイスさん知ってるぞ、その会の事。面白いって笑ってたのを見た事がある」

「それにしてもそのネーミング、えらく微妙だな。その友の会の発起人、誰だよ」

「ああ、それ発案したのボレットさんだよ」


 その発言に、皆思わず頷いた。


「あー、あの人かぁ。確かに一番被害にあってたな~。でもそれって、半分ぐらい自業自得じゃね?」

「確かにそうだよな。なんて言ったって、自分から勝負を仕掛けていって全敗してるんだもんな」

「そうそう。それも敗者は一つだけ言う事を聞く、って条件付きで。だから『なんちゃって』なんだと。けどその言う事を聞くって内容も最初は本当に些細な事柄だけだったのが、ここ最近になって容赦なくかつ高度な事を要求されるようになってきたらしいんだと。これにはボレットさんも『これは私は試されているのだな!負けるものかぁぁ~~~!!!』って叫びながらむきになってやり遂げようとするし。それには他の犠牲者の何人かも同意の声を上げていたな。あれはもう見ないふりが一番正しい行動だと思う」

「あ、それ知ってる。一回だけその友の会を見学に行った事があるんだが、何人かはジェイスさんの要求に何処までついて行けるか燃えてるのがいる一方で、それを対象に賭けしてのが何人かいたな」



 そう言って笑いながらさらに話を続ける男達を眺めながら、質問した彼は思った。


 やはりここは一筋縄ではいかない、一癖も二癖もある人物の揃った村なのだ、と。


 この村の噂は周辺地域のみならずこの国では有名な話ではあったのだが、その噂の内容の真偽は定かではなかった。

 曰く、殺人犯が逃げ込んだとか。曰く、誘拐犯が逃げ込んで果ては住んでいるとか。曰く、守り神と呼ばれる魔獣に守られているとか。

 どの話を聞いても、自分たちの知る一般常識を疑うような話ばかりが耳に入ってくる村だった。

 そして今現在、目の前にいる人々を眺めていてもそれは実感できていた。

 一人はヴィーデと呼ばれる男で、確か某ギルドの上役の人間だったと記憶している。

 他にも有名そうなのを挙げれば、ミディオと呼ばれる男も混じっていた。彼は確か最近、難しい病気の新薬を開発したばかりだ。

 それに話の内容にあった人間も、聞いた事のある人物ばかりだ。ボレットという人物は、20代で新しい魔法を編み出したと有名な人だ。建物を吹っ飛ばした、って話は初耳だったが。

 この場に集っていて自分の知りうるどの人物も、何でこんな辺境の村に?と思うような人物ばかりだったが、それ以上に不思議に思うことがあった。

 目の前にいる有名な彼らだが、そんな彼らが会話からして別格扱いしているジェイスという人物だ。

 そんな名前は聞いた事がない。

 はて、と首を傾げていると、突然村の男の一人にのしかかられた。

「な、なんですか?」

「ところで君はもしかして、ロイスの孫だったりするのかな」

 ニヤリ、といった感じに笑顔を向けられた。

 その言葉に顔が引きつる。

「な、何故……」

 その言葉に、男はやっぱりな、と言って顔をほころばせた。

「いや、誰かに似てるな~、と思っていたんだよ。あいつがここから去ってどれくらいだ?確か情操教育に悪いからって言って出て行ったんだよ。酷い科白だと思わないか?」

 確かに祖父は以前ここに住んでいた、という話は聞いた事があった。皆何かしらの事情があってここに住み付いたやつらばかりだが、本当に気のいい人間ばかりが集ってくる貴重な場所なのだと。

 だが、とも言った。

 いかんせん常識破りの掟破りは当たり前の集団である。そんな中で育った子供の将来が危ぶまれる。そう言って祖父は15年近く前に、この村から出て行ったのだそうだ。

 その話を聞いたときには不思議に思っていたが、この村の内情を目にした瞬間、内心祖父に感謝した。

「いや~、懐かしい気がしていたんだよな。よし、皆の衆!昔の仲間の帰還を祝って飲みにいくぞ!!」

 その言葉に、いっせいに男達がおお、と声を上げる。

「はいぃ!?」

 状況が理解出来ないままで立ち尽くしていると、そのまま酒場へと問答無用で連れて行かれたのだった。




 じいちゃん。ここは常識を国外に置いてきたような人達ながらも、とても居心地のいい場所なんですね。

 そう考えながら、彼は賑わう酒場で酔い潰されたのだった。




   ―――――― ※ ――――――




「あら?何かメモが落ちて……なになに?」


『勇者と魔王についてか、その他の人物について面白そうな話は何かありませんか?』


「面白い質問が書いてあるわね。

 勇者と魔王ね。あの子たちは本当に波乱万丈な人生を送っていると思うわ。

 あの二人の最後の戦いの時は、私達も本当に心をいためたものよ。あまりの辛さにあの最後の戦いには私達精霊は参加しなかったのよね。

 そういえば、お互い真逆の精霊に恨まれていたわね。勇者が闇の精霊、魔王が光の精霊に。といっても、理由なんて至極単純で些細な事よ。


 構ってもらえなかったから。


 もうこの一言に尽きたわ。

 なんだかお互いイメージ戦略?とかで使うのを控えていたらしいのよね。そしたら二つの精霊、盛大に拗ねたのよ。

 それはもう可愛かっ……ゴホン。間違えたわ。可哀相だったわね。

 それでも勇者の方はあの戦いの後、色々とあって暴走した時期があったんだけど、それはもう盛大に精霊たちに協力を求めてたのよ。一番嬉しそうだったのは闇の精霊達。漸く構ってもらえる上に一番頼りにされたんですもの。ここぞとばかりに、嬉々として協力してた姿がすごかったわ」


 一区切りついた所で、遠くからもう一人やってきた。


「なに?何を喋ってるの?」

「なんかね、面白い事を喋れって」

 そう言って拾った紙を見せた。

「へー」

「なに?二人して何を話しているの?」


 立ち話を見つけたのか、次々と集まってきた。

 一通り集まりきったのを確認すると、改めて事情を説明する。


「で、私はとりあえず勇者と魔王のあの最後の戦いの時の事を喋ってたんだけど、そっちは何かある?」


「あ、勇者といえばほろ苦い思いでがあったわよね」

「どんなの?」

「初恋が男だったっての」

「……ほろ苦いを通り越して、最早葬り去りたい過去と言った方がいいわね」

「あ、周りの人達もなんか同じような事を言ってたわ。それでね、結局は盛大に騙されていたって話なんだけど、その後証拠隠滅しようと全力で力を振るおうとしているのを必死に仲間達に止められている場面を見た事があるわ」

「ちょっと同情するわ」

 勇者に、ではなく苦労した仲間達に、である。

「そのときの勇者、かなりキレてたみたいでね。そりゃもう悪い笑顔で一国の消滅を図ってたのよ。面白そうだから協力しようかどうか悩んだんだけど、その前に仲間達に止められちゃったから結局実行出来なかったんだけどね。残念。でも旅の終わった後で色々と頑張ってたからちょっとだけ協力しちゃった」

「もしかして、期間限定で荒地になってたファーラ地方の事?」

「あ、もしかしてばれてた?」

「あれだけ派手にすれば誰だって気付くわよ」


 ファーラ地方。

 肥沃な土地として有名である。そこで育った野菜の美味しさは、周辺諸国でも有名だった。

 そんな場所が、何故か一年間限定で何も生えてこない不毛の大地に変化していたのは世界の七不思議として有名な話だ。


「あ。私一つ知ってるわ。面白い話」

「どんな?」

「精霊王さまね、本当は女王様やりたかったんだって」

 その一言に、微妙な空気が流れる。

「……それだけ聞いてると色々と誤解が生じそうなんだけど」

「正確に言えば、本来どっちの性別を選ぶかという時に女性を選んでいたらしいんだけど、シェーンの意向というか趣味で男性として創り出されたらしいのよね。それを微妙に恨んでいるそうよ」

「ああ、そういう事…………って、ええぇっ!それ、本当なの!?」

「あら、知らなかったの?」

 そう問われて一部の者達は驚いた表情で首を横に振った。

「まったく、これほど有名な話は無いわよ。シェーンも決めた理由が単純明快。面白くないから、だったわね」

 それを聞いた瞬間、一部の者達が「うわ、ひどっ」と呟いていた。

「あともう一つあるんだけれど、勇者と魔王の二人がシェーンの創り出した子ら、って事は皆も知っているわね」

「ええ」

「もちろんだわ」

「で、本題はここから。シェーンはね、本当にあの子たちに力を入れてたのね。そのせいか本当に特殊になっちゃったのよ。それで精霊王さまもね、企んでる訳」

「企む?何を?」

「あの子達、と言うよりは勇者を焚きつけてシェーンを倒してもらうんだ!って」

「……なんだかものすごい事聞いている気がしてきたわ」

「当然よ。だってトップシークレットですもの。その事に関して勇者もかなり揺れ動いてるって噂だし」

「あー、そう言われてみればそうかも」

 幾人かは勇者の様子を思い出しているのか、うんうん、と頷いていた。

「でもあの子たち、一応人間よね?」

「そうね。普通の人には不可能よ。でも、あの子たちになら可能。といっても、勇者一人だけならそれは不可能だったの」

「どういう意味?」

「今では片割れであるもう一人が見つかり側にいるでしょ。以前魔王をしてたあの子。あの子たちは二人で一人。共に在るのならばその資格は与えられるわけ」

「資格?何の?」

「神になるための、よ」

 辺りを沈黙が支配した。

 そんな沈黙の中、一人が恐る恐る口を開く。

「…………確か勇者って、目指せ凡人!!ってよく言ってたわよね」

「ええ。平凡こそ最強だ!!とも叫んでたわね」

「シェーン倒したら、次の神様になる訳?」

「そうらしいわよ」

「それ、勇者達は当然……」

「知らないわよ。知らないのを知ってて精霊王様も焚きつけようとしてるんだから、相当あくどいわよね。何でもシェーンも『一通り必要な事は成し遂げたし、そろそろ隠居しても良い頃じゃない。私を倒したものが次の頂点よ!倒しても別段消えるわけじゃないけどね。別に倒さなくてもいいんだけど、世界が落ち着いてきたのだからそろそろ次代に位を譲ってもいいと思うでしょ。そう思ってたんだけど、他の神達には絶対面倒だから遠慮しますって拒否されてるのよ。自分達の仕事で手一杯ですから、って。けど今ならあの子たちがいるわ。あの子たちなら現在進行形でフリーだから、何なら焚きつけてもオッケーよ。二人揃ったから、あの子たちにもその資格は与えられているし』って」

 しばしの沈黙の後、一人がポツリと言った。

「色々と終わってるかも」

「その気持ちはよく分かるけど、それ勇者には絶対に言わないであげてね。あの子きっと、本気で泣くから」


 あまりにも酷い内容に、その場にいる者達は思わず地上に住む二人に同情の念を送った。






 そんな会話が終了した後。

 数人がふと思い出した事を話していた。



 ――そういえば噂の女神様シェーン、昔は勇者達の様子を真剣にを覗き見していたわよね。


 ――今じゃそれほど感心無いみたいだけどね。そういえば、覗き見していた当時、時折薄い本を大量に抱えてフラッと何処かへ出かけている時があったわよね。


 ――そういえばそうね。何処に行っているか誰か知ってる?


 ――私は聞いた事が無いわ。あ、でも誰かが以前一度だけ聞いたけど、うふふって笑って誤魔化されたって言ってたのを聞いた事があるわ。


 ――わたし、何時だったか『くっつくか、どうか』とか『こういう展開もありかも』とか不気味な呟きを聞いた事があるわ


 ――あ、私も聞いた事があるわ。『あれとあれがくっついて』とか呟きながら楽しそうに勇者の仲間を眺めているのを見た事がある。でもそのときいたのは男達ばかりの時なのよね。どうくっつくのかしら?


 ――コワッ。それにしても帰ってきた時は、出かけるときとは違う薄い本を山のように抱え込んでるのよね。


 ――あの本、一体何なのかしら?




分けた方が……とも考えましたが、面倒なので一気に放り込んでおきます(笑)


…………最初、2千字ぐらいだったのに、気付けば6千字突破。

ドコで間違えた?



8/24追記。慌てて投稿したせいで、文章が途中で切れている事に気付かず投稿してました。失敗。

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