表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/33

10. 心中、誰か察してください

長らくお待たせしました。

サボっていたわけでは無いです。行き詰っていただけです。


最終改訂9/18



 前日の夕方から起こった、内容の濃い一幕に頭を抱えた翌日の朝。


 勇者は一縷の望みをかけていた。

 全てが夢だったらいいな、と。


「勇者、おはよう」


 にっこり笑顔で現れた娘のその一言に、なんともいいがたい思いのまま「おはよう」と力無く返したのは仕方の無いことだと思う。

 念願だった娘の笑顔を浮かべる姿に正直喜びが隠せないが、内面が魔王というのが何ともいい難い。というか内心非常に複雑だ。

 だが前日の騒動を考えると、日常の挨拶程度なんてはっきり言って素直に喜ぶべき事なのだ。

 娘との強制ゴールインなんていう、洒落にならない結末にならなかっただけでもましと思うべきなのだ。




 目じりに浮かんできそうになっている液体は、あくびが出たから出てきただけであって、決して他の要因が混じっているわけでは無いからな。


 チクショウっっ!!



   ―――――― ※ ――――――



「少し待っていろ。すぐ用意する」

 そう言って準備していた食事をテーブルの上に出した。

「美味しそうだ」

 目の前に並べられた食事に、魔王は目を輝かせながら言った。

「昨日も思ったが、こんな美味しそうな食事を見るのは初めてだ」


 これ、単純な一般的でありふれた朝食なんだが……。

 それで美味しそうって、今までどんな食事を取ってきていたんだ? 


 だが勇者は余計な突っ込みをする事はしなかった。うっかりそんな事をした場合、確実に食欲が減退する返答が来る予感がしていたから。

「まあいいや。早く食え」

 そう言って始まった食事なのだが、一体どんな会話をすればいいのだろう。

 お互いがそんな事に頭を悩ませていたときだった。

「そういや、お前これからどうするんだ?」

「……私は追い出されるのか?」

 勇者は何気なく聞いたつもりだったのだが、悲壮な感じで返事が返ってきた。


 どうしてそうなる…………、いや。俺が悪かった。確かに俺達二人の前歴を考えると、そうなってもおかしくは無いな。


 おかしくは無いが……娘にそんな風に考えられていたと思うと、地味にへこむ。


「違う。この食事が終わった後お前は何をするんだ、という単純な話だよ。そもそも、何故自分の娘をわざわざ追い出さなくちゃいけないんだ。まったく、失礼にも程があるぞ」

 その言葉に魔王も、素直にすまないと一言謝った。そして、ふむ、と首を傾げ………………。

 どれくらい時間が経っただろう。

「勇者。重要な問題が一つあるのだが……」

 十数分近く悩み続け、先ほどの問いに対し返ってきたのは困惑した表情と問題が一つ。

「何だ?」

「私は一体何をすればいいのだ?」

 その言葉に思わず魔王の方をまじまじと見つめ、ポン、と手を一打ちした。





 昨日、三人で夕食を食べながら簡単に話しを聞いたのだが、魔王の意識はあの戦いの直後あたりで途切れているらしい。

 三人、という所で察しのいい人間は分かっただろう。

 あの女神、あの後何事も無かったかのようにしっかりと夕食をご相伴に預かって帰っていった。

 結局何しに来たんだ、と言ってやりたいのは山々だったが、聞いた場合どうも嫌な予感しかしなかったので結局何も聞かなかった。

 食事の準備をしているとき魔王がこっそり、今回は諦めてくれたようだ、と教えてくれた。が、気を緩めてうっかり聞いた瞬間、おそらくここぞとばかりに話しの続きが展開されうやむやのうちに話をまとめられてしまっていたに違いない。確実に。

 人外の生き物、というのはどんなものでも一癖も二癖もあるものなのだ。特に長い生を生きたものはその特徴が顕著に現れる。

 旅の最中でこれでもかというほど教えられた、忘れがたい貴重な教訓である。


 ちなみに神なのだから食事をする必要の無い存在なのでは。

 そう思ったので率直に聞くと、それはどちらでも可能なのだそうだ。食事で糧を得る必要性は無いが、現在の彼女にとって楽しみの一つらしい。

 様々な神が生まれたおかげで、私もようやく自由が満喫出来るようになったのよ。だから色々と楽しんでいるの。姿を変えてあちこちに出没してみたり、とか。食事もその楽しみの一つよ。味もしっかりばっちり分かるから食べ比べが楽しくて……とか言っていた。

 フリーダムな創造神だ。


 ついでに、隠していたはずの俺の酒も何本か胃袋に処分して行った。

 美味しかったわよ、という一言を残して。

 俺の秘蔵の酒ェェッッ!!




 話が逸れた。

 とにかく、魔王は気付けば俺の娘へと転生していたらしい。

 目を開けると長閑な風景が広がっていてびっくりした、なんてのんきな感想が返ってきたのには少し呆れもしが、そんな感想を抱いたのは、おそらく突然の状況変化に混乱していただけなのだろう、とあたりを付ける。

 だが、この展開には多少複雑な思いもあるがお前もいるからそれほど困った状況では無いな、とよく分からん信頼を寄せられたのは謎だ。

 なんだか楽しそうだ、と笑っていたのもさらに謎だった。


 まあ諸々気になることもありはするが、とにかく、魔王も突然こんな事になったのだ。何をすればいいのか思い付かないのも当然の事だろう。

 それ以上に、俺も娘が今までどんな事をしていたのかはっきりと把握していなかった事に、今更ながらに気付かされた。いや、娘の行動は大まかには把握はしていたが、普通のこの年頃の娘が何をするのかをまったく知らない事に気付いた。


 だが娘のこれまでを思えば、連れていって逸れたりするとそれは恐ろしい事になりかねないからだ。


 ……主に周りにとって。


 彼女の外見は整った顔かたちをしているから、もしかしたら人攫いにあったりするかもしれない。

 そんな事になった場合、うっかり手加減を間違えると街が一つ地上から消える。

 それに俺の仕事の関係上、危険な場所にもちょくちょく行ったりしていた。そんな場所に彼女を連れて行くわけにもいかなかったのも理由の一つだ。

 うっかり娘が人質にでもされた場合、一部地域が突如として地形を変貌させる危険もあったし。



 そんな事を考えながら、何をしようかと頭を悩ませ始めた。

 自分の予定も念頭に置きながら。




 そして……。

 魔王にとってはあの戦いの直後(?)なのに、何故俺と普通に接していられるのだろう?


 そんな疑問が脳裏を掠めつつも、朝から唐突に降ってきた最大の問題、『この後どうしよう』な事態に頭を悩ませるのだった。




先に書いていた部分を付け足すと、尋常では無い長さになるためこの辺で切る事に。

中途半端ですみません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ