さよなら、金木犀
金色に輝く金木犀の香りが
辺り一帯に広がる
あまい、あまい良い香り
僕の中でふと記憶が蘇る
あの秋の放課後
揺れる黒髪
君がいたところには
いつも
金木犀の香りが残る
初めて会ったときから
綺麗な人だった
咲った顔が花みたいで
目が奪われてゆく
こんなに惹かれる人は
きっと君だけだろう
君と過ごす四季は
鮮やかに彩られていった
椿に出会って、
山桜に恋を。
向日葵に想いを告げ、
金木犀に、愛を──。
季節が巡ってゆくように
移り変わっていくように
初恋なんてそううまくはいかない
いつしか君と会わなくなっていた
君が冷たくなっていった
僕が何かしたのかもしれない
『別れようか。』
謝る前に、君は言った
嫌だと言う前に、君は去っていった
あとに残ったのは
真っ赤に燃える夕焼け
怒りとかそんなものではない
寂しさと君への想いの深紅
そして
ふわりと香る金木犀の香り
あまくて、苦い
初恋の香り
金色に輝く金木犀は
昨日降った雨のせいで
地面に散らばっていた
踏み潰されて
香りが強くなる
さようなら。
苦い記憶は
あの落ちてゆく夕陽に
一緒に連れていってもらおうかなあ
それでも
忘れたい初恋は
きっと一生の思い出で
一生忘れられないだろう
秋が訪れるたびに
金木犀の香りが広がるたびに
僕はきっと思い描くだろう
あの金木犀に、君の姿を。
ご覧いただき、ありがとうございました。
椿は「控えめな優しさ」「気取らない優美さ」
山桜は「あなたに微笑む」「美麗」「純潔」
向日葵は「あなただけを見つめる」
金木犀は「初恋」「陶酔」
という花言葉があります。
初恋の香りに、さよなら。
誰かに届きますように。




