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221  作者: Nora_
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08

「二人で話し合ったんだけど……」

「駄目か、それなら仕方がない」


 家以外の場所限定になるが付き合えればけいだって満足してくれるはずだ。


「ううん、いいよそのままで。でもね、ちゃんと言ってくれたからだよ? そうじゃなかったら許可はしていなかった」

「そうなのか、ありがとう」


 ならこれで……って、こちらははっきりしなければならないか。

 まだけいは下りてきていないし、学校前ということで動くのは放課後にすることにして朝ご飯を食べていると「おはよう……」とやけに眠たそうな状態で下りてきた。


「おはよう、ご飯はもうできているからね」

「うん……」

「どうしたの?」

「暑くて寝られなかったんだ……」


 気が付けば俺より影響を受けてしまっている、やはりちゃんと見ておかなければならない存在だった。

 歩きにいくと言って参加しなくなったときにはもう遅いため、そうなる前に色々な対策をさせなければならない。


「夏の間は一階の方がいいかもね、客間はあっても誰も来ないからけいちゃんが使えばいいよ」

「うーん……それもどうなんだろう……」

「遠慮しないの、あるのに誰にも使われないよりもいいよ」

「そっか、じゃあ今日帰ったらちょっと過ごしてみるね」

「うん、それがいいよ」


 必要なことを済ませて玄関のところで待っていると「お待たせ」とけいがやって来たから鍵を閉めて歩き出した。

 外は依然として暑いが去年よりも気にならない、できればこのままなにもないまま夏を乗り越えたいところだった。


「終業式まで短い時間で終わる日ばかりだからちょっと慣れないな。そこが中学校とは違うところだよね、なにをしようかな?」

「俺は歩く」

「はは、それでこそてつさんだよ」


 俺らしいとかそうではないとかどうでもいいから足を止める。

 まだ学校まで数百メートルはある場所だから当然「まだ学校は先だよ」と言ってきた。


「許可を貰えた、だから後はけい次第だ」

「許可……? あっ」

「ああ、けいがいいなら受け入れる」


 結局、放課後ではなくて朝にしたのはなんにもなさすぎたからだ。

 ないだろうと考えていても不安になるから出させてもらった、けいからしても中途半端な状態を終わらせられるのだから勝手にいいと判断してのことだ。


「眠気がどこかにいっちゃった」

「はは、いいことだ」

「あっ、これで二回目だね」

「いや、俺は何回も笑うからその反応はおかしい」


 長く一緒にいる慎がいちいち指摘してこないことでわかると思うが。


「いやいや、てつさんっていつもその顔だから新鮮だよ、あと可愛い」

「男に言うことじゃない」

「可愛いから安心してね、よし、じゃあ行こう」

「けいはハイテンションになってもすぐに戻る」

「うん? ああ、それはずっとそのままでいたら迷惑をかけちゃうからね」


 部屋にこもってから一人の時間が増えた分、冷静になってしまったみたいに見えるからやめてもらいたかった。

 それでもとりあえずは学校だ、椅子に座っておけば複雑さもどこかにいく。

 

「よう、てつの親友が来たぞ」

「慎――」

「おいおい、そんなに見つめられても――って、そうか、関係が変わったんだな」

「遮らなくても言うつもりだったがそういうことになる」


 けいの方は早くも飽きかけているようなレベルではあるが。

 でも、仕方がない、だって冷静になればなにをしていたのかはよくわかる。

 慎は喜古という相手がいて難しいが意識を他に向ければ沢山の魅力的な異性がいるのだ。


「おめでとう。ただ、てつがよく受け入れたな」

「俺を求めてくれるような異性がいなかっただけだ」

「なるほどな」


 だから喜ぼうにも喜べないまま時間が経過した。

 今日はなんとなく歩きたい気分ではなかったから教室に残っていくことにする。

 テスト勉強というわかりやすくやらなければいけないことがあってよかった。


「やっほー」

「喜古は距離が近い」


 けいがまだ飽きていないのならまた止められてもおかしくはない距離感だ。

 あまり言いたくはないが続けるようなら慎に対してした方がいいと言わせてもらう。


「え、そうかな?  なんてことはどうでもよくてさ、あのさ、慎から聞いておめでたい状態なのになんで岩二君はそんなに暗いのかな?」

「やらなければいけないことがあるからだ、けいは関係――なんだ」

「はい嘘だね、うんうん、わかりにくい変化だけどいつでも同じ表情のままということはないんだよねー。ということではい、けいちゃんは連れてきたからしっかり話し合うんだよ?」


 余計なお世話などと言うつもりはないが……。


「木村先輩も今日のてつさんは暗いって言っていたよ? ……もしかして後悔しているの?」

「違う、けいがもう飽きているように見えたからだ」

「ええ!?」

「最近は大きな声を出しているけいも珍しくなくなった」


 元気でいてくれているのはいいことだ、だが、彼女の出した答え次第ではこちらは駄目になるから普通に怖い。


「じゃ、じゃなくて、どこをどう見たら飽きているように見えるのっ?」

「両親が許可をしてくれる前の方が、つまり告白をする前の方が積極的だったからだ」

「ん……? え、いやそれは告白をされてからまだ時間が経過していないだけだよ。というかさ、抱きしめてからかわれたのが昨日なんだよ……?」

「なら飽きたわけじゃなかったのか、よかった」

「なっ!?」


 あれか、喜古と一緒に過ごしたから喜古に似ていっているのかもしれない。

 慎もたまにふざけてハイテンションになるときがあるから影響を受けているのだろう、悪いわけではないがもう少しボリュームを下げても聞き逃したりはしない。


「ど、同情とかじゃなかったんだ……」

「悲しい顔を見たくなかったのはあるが俺はけいとの時間をすぐに好きになっていた」

「ちょ、ちょっと待って、いきなりぐいぐいこられても追いつけないよ」

「普通にしているだけだが嫌ならやめる、それにこれをやらなければならないのは変わらないから」


 ちょっと待ってほしいのはこちらだった。

 同情なんかで受け入れるわけがないだろう、経験がないからこそ求める理想も高いのだ。


「私もやるよ……と言いたいところだけど、関係が変わったその日ぐらいはその……」

「わかった」

「い、いや、やりたい分をやってからでいいよ、これは私がわがままなだけなんだし……」

「気にしなくていい。だが、どうすればいいのかがわからないからけいが頼む」

「え……経験とかないけどしたいことならあるから……こうかな」


 なにかいいことがあった場合にだけ抱きしめるというわけではないらしい。

 あ、でも、それこそ関係が変わった日ということならそこに該当していて、またなにかがあるまではしたりはしないのだろう。

 何回もなにもないまましていたら価値も薄れてしまうからきっとそうだ――というのは言い訳で、結局のところは強く影響を受けてしまうからそうであってほしいという願望が込められているだけだ。


「少し熱い気がする、水分はちゃんと摂っているか」

「部活動で運動をしていたときよりは少なくなっているけどちゃんと飲んでいるよ――じゃなくて……私はこうできて嬉しいけどてつさんはどうなの……?」

「前は心臓が落ち着かなかった」

「あ、じゃあなんにも影響を与えられないということはないんだね、よかった」

「当たり前だ」


 だからなにも影響を受けないならこうはなっていないということだ。


「や、やっぱり家に帰ってからでもいい? いまにも誰かが来るんじゃないかって――あ」

「やっほーいやー関係が変わってからは岩二君もちゃんと抱きしめ返していていいねー」

「きゃ」

「あれ? おーい」

「運んで帰る」


 だが、何故喜古が相手のときだけ冷静になれなくなってしまうのか。

 まあいい、早く家に連れ帰って休ませよう。


「おけ、それなら私も一緒に帰るよ」

「ああ」


 続きはけいが回復してからとなった。

 ただ、俺としてはああいうことをやればやるほど不安になるからテスト勉強をできていた方がよかった。

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