襲撃の後
この物語はフィクションです。
「ほーん、何者だそいつ」
カールが朝食を食べながら言った。あの侵入者が話した目的はUSBメモリだったが、それが本当かどうかは全くわからなかった。
「ダレク〜、なんで撃たなかったんだよ〜」
なぜか当たり前のようにいるクレイが聞いてきた。…お前入院してるはずだよな?
「あいつとやり合ったらまずい雰囲気だったんだって。あと、お前なんでい…」
「そうだダレク、お前の銃の腕なら行動不能にするくらい余裕だろ?」
オーロンが俺の発言を遮って言ってくる。
「だからさ、お互い銃向け合ってる状況だったんだって。一発撃ったら一発帰ってくるぞ」
俺が呆れながら言うと、クレイが立ち上がった。
「そんじゃ、病院戻るぜ。抜け出してきたのバレたらまずいからな」
クレイがよろよろと玄関に向かう。まだ全身の包帯が取れてない状況なのに、なんで来たんだろうか…。全く理解できない。
「ダレク、お前の朝食あるから食いな」
ランディが俺の手に色々を押し付けてくる。パッと見て目に留まるものがあった。
「なんでブラックコーヒー…」
ランディが悪意しかない笑みを浮かべる。俺はコーヒーには手をつけず、パンに噛みついた。
◻︎ ◻︎ ◻︎
「………」
人通りが少ない市街地を通り抜ける。まもなく路地裏に出た。ダレクが言っていたのはこの辺りだろう。
「…流石になんも残してねぇな」
わずかな希望を持って来てみたが、いなかった。おそらくダレクが言っていた人物は、俺の病室に現れたあの少年と同一人物だろう。
「…ルタードの口」
その言葉について、誰にも言っていないことが一つあった。俺とダレクがいた孤児院の門。一度逃げ出したから見ている。あの忌々しいマークが刻まれていた。この記憶はなぜかくっきりと覚えていた。
「過激派組織がなぜ孤児院を?孤児院を卒業した者を狙っているのか?カルンツァミア側ならなぜペルニヒに孤児院を作る?ダメだ、わからねぇな」
考えれば考えるほどよくわからねぇ。路地裏を抜けようとした時、後ろに気配を感じた。
「ッ!!」
振り向いた時にはもう遅かったようだ。
「…ぅあ」
背中に熱い感覚が広がった。…誰がやったかはなんとなくわかる。あのクソ野郎…。このままここにいれば死ぬのは明白なんだよなぁ…じゃあ、道連れにするしかないよな!?
「悪いね。上が君も殺せって言っててさ。ところで、チョコレート美味しかった?」
ドクドクと激しく脈打つ心臓の音が嫌に響く。敵の位置は歪んでよく見えない。でもいい、大体のシルエットがわかれば刺さる。
「…美味しかったぜ!!」
腰からナイフを引き抜き、そのままそいつの体を切りに行った。が、掠りもしなかった。ナイフが手の中から落ちていく。それと同時に膝が崩れる。アスファルトが冷たい。
「そりゃ結構」
そいつはトーンを変えずに言い、その場を立ち去った。あーあ、終わったかなぁ…?間違いなく腎臓に刺さったはずだ。最近腎臓の扱いが酷くないかい?ぁあ…意識が…
⚫︎ ⚫︎ ⚫︎
俺がブラックコーヒーに牛乳を混ぜていると、ランディが呟いた。
「なんか嫌な予感する…」
カールがテレビから目を外して言った。
「奇遇だな、俺もだ」




