何者?
この物語はフィクションです。
あの少年はそもそも何者だったのか。殺し屋だとは思うが、殺す対象は?にしても少年まで殺し屋になる時代か、世紀末かな?俺も人のこと言えないがな。殺し屋なら、殺す対象は?まず、俺ではないな。考えられる人物としては、カスピオス司令、くらいか。
「…にしてもなんで病院?目撃情報2日前?敵の方々の情報網ってそんな古いんかな?」
俺がまともに動ければなぁ…捕縛して軍に引き渡すんだけど。待てよ、あれはただの偵察の可能性も…じゃあなんで病院?あー頭痛いのに考え事はするもんじゃないな。
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「…おはよー」
ふかふかのベッドから身を起こすと、人影が見えた。珍しいな、このメンツだと俺かカールが一番先だけど、カールはソファにいるのが見えてた。その影は俺が声を掛けると驚いて振り向き、足早に玄関を飛び出して行った。寝ぼけ眼を擦り、周りを見ると、メンバーは全員起きていなかった。つまり…侵入者だ!
「クソ!待て!」
急いでパーカーを着、銃を引っ掴んで外を確認する。まだ朝四時にもならない薄暗い時間だ。でも見える。闇に溶け込もうが、雪のせいで多少見える。
「チッ、3階分駆け降りるのは無理だな」
俺は窓を開き、下に掴める場所があるのを確認した。
「よぉっと!」
上手く下の階の窓枠を利用して下まで降りる。パーカー一枚のせいでものすごく寒いが、それよりも。
「待て!」
町に消えていく侵入者を追う。相手の足は速かったが、ギリギリ追いつけるレベルだ。人が少ない早朝の街中を全速力で走り抜ける。路地裏まで追ったところでそいつがこちらに向き直った。
「どこまで追ってくるつもりだよ…はぁ、疲れた」
見た目こっちと年齢差がたいして無さそうだ。左手で銃を構え、そいつに聞く。
「答えろ。俺たちの部屋になぜ侵入した?」
そいつはにこりともせず銃を構え返してきた。サイレンサー付きだし、かなり使い込まれてる。
「銃向けるのやめようか、君怪我してるでしょ、戦って大丈夫?俺、強いよ?」
無表情を貫いてくるあたり、言ってることはハッタリじゃなさそうだ。
「別に俺は君に対して敵意はない。逆に質問するけど、カルンツァミアの国旗が入ったUSBメモリ知らない?」
見てないな。
「いや、全く」
そいつは笑って言った。
「それなら用はもう無いよ、お互い時間を無駄にしたくないだろ?」
俺はこいつのことを一切信用していなかった。部屋に入られた以上、カルンツァミアの工作員とかだったらまずいからな。
「お前は何者だ?それだけ答えろ」
そいつはまた無表情に戻って言った。
「深入りしない方が身のためだよ。何者か?そうだな、人消す仕事してる人だよ」
俺は銃を降ろした。相手も同じように降ろした。
「じゃあ、またいつか会うかもね」
そいつはそう言い、闇の中に消えていった。たった1時間にも満たない時間のはずだが、まためんどくさい事案に巻き込まれたようだ。ここは前線じゃないのに…。
「…戻るか」
ゆっくりとホテルへの帰路につく。まずはこのことをあいつらに話さなとな。




