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蜘蛛の床  作者: ただけん
ヘレヴェール奪還作戦
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敵襲

この物語はフィクションです。

「援軍は?」

「さあね、すぐ向かうとは聞いてるけど」

オーロンと合流し、現場に向けて走っている時だった。

「間違いなく駐留軍と俺らだけじゃ止められない」

オーロンが苦々しく呟いた。

「貝殻から聞いたんだ。あの紋章は、カルンツァミアの山岳部隊だ。特殊訓練受けたエリートだらけの部隊らしい」

「ほー、とうとう正規軍のお出ましかぁ」

クレイが呑気に話を聞きながら双眼鏡を覗いていた。

「包帯、山岳部隊って言った?」

「そうだよ」

山岳部隊…てことは、ラァーク川前線を迂回して国境付近の山脈を突っ切ってきたのか?相手もなかなか頭が悪いな…。ともかく、前線が落ちたってわけではないようだ。クレイが双眼鏡を離し、こっちに向き直って言った。

「つーかさ、無謀にもほどがあると思うんだけど」

「何が?」

「何が?じゃねぇーよ!なんで俺だけ銃ないんだよ!」

確かに、言われてみればそうだ。

「でもさクレイ、お前スナイパーライフル扱えないだろ。訓練生の時スナイパーライフルの講習なかったし」

「そうじゃなくて!武器屋とかないの!?緊急時だし、少しくらい取っても大丈夫だろ!?」

「…あるわ、ここだ」

オーロンが左を向いた。ちょうど武器屋だ、幸運にもほどがある。

「ラッキー!もらっていこうぜ」

「金は払うぞ」


「店主、これで、好きなもん持ってていいな?」

「は、はい」

中にいたおっさんに今月の給料を全部出し、黙らせる。今は軍服着てるからいいが、私服なら立ち入りすら禁止される。まあ、少年兵とはいえ、側から見れば14、13歳の少年だからな。

「すげー最近のライフルってこんなんなんだ」

「暴風、選んでる時間ねぇからな!あと、お前訓練の時ライフル嫌い嫌い言ってたのに、んなもん使うな」

ベーっと舌を出し、ライフルを棚に戻すクレイ。早く選べ。

「あーロマンが遠のいてく…」

クレイがブツブツ言っていたが、気にせず俺も弾を補充する。結局、普通に拳銃を選んでいた。


「店主ありがとーな!」

クレイが陽気に声をかけ、扉をバタンと閉める。店主はほぼずっと放心状態だった。

「さて、こっからは別行動。俺はビル上るから」

全員が目を合わせる。

「…死ぬなよ」

「当たり前ぇ!」

クレイの目が狂気に満ちていた。やる気満々でとてもよろしいと思う。うん。

「じゃあ、作戦開始」

その言葉とともに、ビルの中に消えていったオーロン。俺たちも現場に行こう。すぐそこだけど。

「よっし気合い入れて…」


ドゴォン!!!


視界が揺れるほどの衝撃が走る。目の前のビルに砲撃が命中したのだ。幸いオーロンが入ったビルではなかった。

「クソ、なぜ砲撃が…?」

クレイがビルの影から双眼鏡で敵を覗いた。

「…戦車?なんで山岳部隊が戦車を?…待って!あれうちの戦車だ!」

…はぁ?

「うちの国旗が上からカルンツァミアの国旗に塗られてる。鹵獲されたのか…」

ビルの影に再び隠れたクレイは悪態をついた。

「戦車兵ってポンコツしかいないのか?銃で戦車にどうやって対抗しろってんだよ。どっかの白い死神ほど射撃の腕はよくないんだけど!?」

「クレイ、落ち着いて」

まあ、実際、勝ち目が無くなったようなものだ。対戦車砲か何かあればいけるんだが。こうしている間にも機銃の音が聞こえてくる。クレイが呟いた。

「…無抵抗の民間人への銃撃って国際法で禁止されてなかったかな?」

「多分」

「てなると、戦車の前に飛び出して一対一でやれって叫んでもそのまま撃たれて終わりか…」

何考えてんの?そんな作戦命が何個あってもやる気にならんわ。

「そうだ。包帯にキャタピラを撃ってもら…」

「無理、対物ライフルでもむずいのに」

いつのまにか降りてきたオーロンが後ろから声をかけてきた。

「ビル上るんじゃなかったのか?」

「身の危険を感じたからな。あと、その戦車には覗き窓はついてるか?ぶち抜けるかもしれない」

おお!と目を輝かせるクレイに現実をぶつけないといけなかった。

「ついてないよ」

肩を落とすクレイ。そして言った。

「じゃあどうすんだよ、このまま待ってたら死ぬだけだぞ」

「…使うか」

「何?何を使うんだ?有効手段あるなら早く言え!」

オーロンが狙撃銃をしまう巨大なアタッシュケースみたいなやつを開いた。中にはいつも通り、オーロンの銃が入っている。銃を取り出し、さらに保護材のような周りのものも取り外した。そして出てきたのは手持ちのベルみたいなもの。

「…これは」

「手榴弾型対戦車擲弾ってやつ。めちゃくちゃ古いんだけど、使えるはず」

そんなもんどうして持ってるんだとツッコミたかったが、今の状況では救世主だ。

「道路は狭い。先頭の戦車の履帯を狙えば後続も動けなくなるだろう」

チャンスは一回だけだ。このチャンスを逃すわけにはいかない。

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