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蜘蛛の床  作者: ただけん
「タランチュラ」
39/57

残る傷跡

この物語はフィクションです。

「カール、入るぞ」

クレイのお見舞いを済ませた後、俺たちはカールの部屋の前に立っていた。扉を開け、カールの部屋に入る。カールはベッドの上から窓の方を向いていた。

「カール、クレイが起きたそうだ」

オーロンの報告に、カールは全く反応しなかった。

「おい、カール?」

「…聞こえてるって」

カールがややだるそうに反応した。相変わらず窓の方を向いたままだ。クレイが起きたってことに一切の感情を抱いていない?そんなことあるか?

「…カール、その反応は…」

というオーロンの発言を遮ってカールが吐き捨てた。

「黙れよ、お前らにこの感情がわかってたまるかよ…」

ランディが割って入る。

「おい、せっかく来たのにその対応はないだろ」

これが間違いだった。次の瞬間、カールが窓辺に置かれていた花瓶を引っ掴み、こちらに投げつけた。花瓶はヒュンッと風を切る音とともにオーロンに直撃した。当たった衝撃で後ろに倒れるオーロン。

「痛って…」

カールがこっちを向いていた。げっそりと痩せ、くっきりとクマができ、元のイケメンが台無しだった。それよりも、表情の方が気になった。何かに怯えるような表情。今自分がしでかしたことの重大さに対する恐怖かもな。

「…」

オーロンが立ち上がり、濡れた服を少し手で払った。そしてちらっとカールを見た後、扉に向かって大股で歩いていった。

「…あぁ…待って…ごめん、悪かった…」

カールが消え入りそうな声で言った。オーロンは振り向きもせず言った。

「もういいよ」

そして、そのまま部屋を出ていってしまった。ランディも続いた。俺とカールだけがその場に残った。気まずい空気が流れた。

「…カール。お前が抱えてる思いなんでも言ってみてくれ。聞くだけしかできないけど、気持ちは吐き出すだけ楽になるぞ」

「…お前には言いたくねぇよ」

カールの発言はいちいち攻撃的だった。

「なんでさ」

「…理由も言えねぇわ」

お互い多少発言がピリピリとしてきていた。

「なんだっていい。俺は友達が苦しんでる姿が嫌だってだけだ」

「…だから、俺はどうしても言えないって」

「そんな時、お前が俺に言った言葉そのまま返してやろうか?」

「…何?」

「お前本当に弱ぇな」

「…!」

カールの表情が変わる。純粋な怒りじゃなさそうだ…と、俺が思った時、クレイは凄まじい速度で俺のポケットに手を伸ばし、銃を奪っていた。そして、俺が反応する前に、

バンッ

と、俺に向けて発砲した。弾は俺には当たらなかったが、後ろにあった額縁に命中した。甲高い音とともにガラス片が崩れる音がする。銃声に医者たちと警備員が入ってきた。カールは構わず二発目を撃った。今度は俺の耳を擦り、また額縁に命中した。警備員が俺とカールの間に入り、カールが抑えられる。続いて俺も抑えられ、人波の間を通り抜け、部屋の外に出された。抑えられた後、カールが叫んでいた。

「お前に俺の何がわかんだよ!!!」

それからまもなく、鎮静剤か何か打たれたのか、物音はなくなった。

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