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蜘蛛の床  作者: ただけん
「タランチュラ」
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炎の後日談

この物語はフィクションです。

最悪のクリスマスから一日経った。ベッドの上でゴロゴロしてるだけだから、ものすごく暇なはずだが、クレイの容体のせいで気が気でなかった。昨日、カールとオーロンが見舞いに来た。

「目覚めてよかったよダレク」

オーロンは笑顔を浮かべていたが、クレイの件もあって心の底から笑っているという訳ではなさそうだった。カールの表情は全く変わらなかった。真っ暗な顔でずっと俯いていた。動いたのは、部屋を出る時、少し左手を上げたくらいか?


2日目。一つの拳銃を医者が差し出してきた。ところどころ黒サビが付いた拳銃。真新しかったであろうドットサイトが取り付けられていた。医者が言うには、ほぼ全焼した部屋から見つかったらしい。弾が入っていなくてよかったな。

「クレイ、実戦でこれ使うまでは死ぬなよ…」

黒カビを擦りながら独り言が漏れ出る。


3日目。オーロンがまた来た。

「オーロン、カールは?」

オーロンは苦い表情で言った。

「あいつは、寝込んでるよ。今日はベッドから起きれないってさ。黙って部屋から出ていけって」

「え?」

思わず聞き返してしまった。冷静なカールがそんな受け答えするか、と思ったからだ。オーロンは遠慮気味に話し始めた。

「理由はわからないけど、相当精神にきてるんだろう。医者から聞くと、一日中ベッドから起き上がってないらしい」

どうして…俺とクレイはカールに助けられたのに、なんでそんなに気を病むかな。もっと自信持っていいんだけどな。

「ランディは?」

オーロンはまた顔をしかめて言った。

「あいつは心労で体調崩したよ。当たり前といえば当たり前だな。あいつ、全然寝れてないらしくて、クマが酷かったよ」

ランディまで…タランチュラメンバーはボロボロの状態じゃないか。


4日目。午後一時。オーロンが部屋に駆け込んで来た。そして言うには、クレイが起きた、と。まさに九死に一生を得たようだ。医者たちも奇跡だと驚いていた。俺はオーロンに連れられ、クレイの病室まで急いだ。


病室の前まできたら、ランディが来ていた。目の下のクマとは対照的に満面の笑みだった。

「ダレク、久しぶり」

「そうだな、ランディ」

病室のドアを開けると、点滴の管が何本も繋がったクレイが寝ていた。顔の大部分は包帯で覆われていた。

「クレイ!よかったぁ…」

駆け寄ると口角をニヤッと上げ、掠れ声で言った。

「俺、生き残ったぜ」

抱きしめたいくらいだが、ぐっと堪えた。クレイは続ける。

「カールの野郎は?」

オーロンが答える。

「気を病んでるかも、としか言えない。部屋のベッドから起きてこないって聞いたよ」

クレイは掠れ声で言った。

「俺が起きたこと言ってきてやれ。多少気が楽になるんじゃねぇか」

オーロンが頷いた。こうしてタランチュラメンバーは全員生き残った。

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