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蜘蛛の床  作者: ただけん
「タランチュラ」
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白い天使

この物語はフィクションです。

翌日。クレイとペアで見張りをしていた時だ。

「さっむ…そろそろ防寒具が着てきた方がいいな」

歯をガタガタ震わせながらクレイが呟く。今は11月、もうそろそろ雪が降ってきてもおかしくない季節だ。


その日の夜、部屋でくつろいでいると、オーロンが窓の外を見て言った。

「雪だ、ほら見てくれ」

ちらっと見ると確かに雪がサラサラと降っているように見える。

「白い天使が降りてきたって言うんだよね、幻想的だなぁ…。中身は空気中のチリなのに」

カールとオーロンがのほほんと外を見ている中でクレイは顔面蒼白だった(まるで雪みたい!)。

「白い天使が降ってきた?白い悪魔が降臨したの間違いだろ。最悪だ、去年はもうちょい先だったのに」

クレイは極度の寒がりで、毎年毎年冬に苦戦していた。

「まあまあ、冬は必ず来るんだから、早いか遅いかの違いだろ」

クレイは全く同意できないという顔で首を横に振った。


翌日、雪は積もっていなかったが、かなり冷え込んだ。

「おーい、クレイ?起きろ?食堂行くぞ」

「無理、毛布から出たくない、寒いの怖い」

オーロンとカールが二人がかりで毛布を引っ剥がし、クレイを連行していった。


食事をしていると、ヘルテル代理司令から通達があった。

「本日から、この私、エンテーヌ・スタルフィン・ヘルテルが司令となる。これからもよろしく頼む」

タウナーの死後、ヘルテルが司令に就任した。

「いやぁ、これからまた前線で大暴れできるぜ」

ソーセージをかじりながらクレイが言う。心なしか口角が上がっているように見えた。暴れられることに喜んでいるのか、ソーセージの旨さに喜んでいるのか、できれば後者であることを願いたい。が、そうじゃないのが現実だろうな。

「また怪我すんのはやめろよ?ただでさえ物資不足で栄養不足なのに、無駄な怪我はしないようにな」

カールがホットココアを飲みながら言った。

「大丈夫大丈夫、怪我に無駄もクソも無いからな」

クレイがヘラヘラ返すので、カールはため息をついていた。

「…屁理屈が過ぎるぞ」

カールは額に手を当て、やれやれというふうに首を振った。そんなことお構いなしにクレイが捲し立てる。

「んなことより!なんでお前だけホットココアあるんだよ!」

「さぁ…?俺は普通にヘルテル司令からもらったんだがな?」

「はぁ?司令お前にだけ優しくない?どうやってもらったんだよ?脅したのか?」

「いや、食堂入った時に「先の件は災難だったな、これからも頑張ってくれ」ってなんか渡されただけだよ」

「はぁ?」

クレイは開いた口が塞がらないようだ。その時、オーロンがニヤニヤしだしてヒソヒソ話し出した。

「…なあ、ヘルテル司令はカールのことが好きなんじゃないか?」

「「はぁ?」」

クレイとカールの声が重なった。

「それは司令として上下関係がしっかりしてないんじゃないか?あと、野郎に好かれたとしてもな」

カールが冷静に物事を見て言った。が、オーロンには届かなかったようだ。

「あのな、一つ大事なこと言うぜ。ヘルテル司令は女性だ」

え?マジで?ちなみにヘルテル司令はなかなかにイケメンなんだ。

「え?本当かよ?見えないんだが」

クレイが驚きと興奮が入り混じった表情になる。

「よかったじゃねぇかカール!先越すなよ〜」

調子に乗ったクレイがニヤニヤして囃す。

「よかったじゃねぇか、じゃねえんだよ。軍として見たらダメだろ」

とは言いつつも、満更ではなさそうなカール。おい?むっつりスケベ?しゃーない、言ってやるか。

「あのなお前ら、ヘルテル司令がカールを好きだって確証はどこにも無いからな、勘違いすんなよ」

「えーじゃあなんでホットココアくれたんだよ」

口角が上がって仕方ないカールは周りが見えていないようだ。どうやってこいつ説得しようかな、と考えてる時に、ベルがけたたましく鳴った。これは…空襲警報だ。相変わらずわかりづらい。

「もうちょい休ませてくれないかなぁ!?」

そう言いながらもクレイが急いで席を立つ。

「この話はここで終わり、急ぐぞ!」

オーロンが席を立ち、カールも続いた。こうして俺たちは現実に引き戻された。

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