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蜘蛛の床  作者: ただけん
「タランチュラ」
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新しい陽

この物語はフィクションです。

何時間経ったかな。外がだんだん明るくなってくる。割れたままの窓から朧げな明るさが流れ込んでくる。昨日から大体二徹目くらいだが、全く眠くならない。不意に部屋のドアが開けられた。

「…ダレク」

カールだった。

「来い。手術終わった」

正直に言うと今は何もしたくなかった。ただただ放っておいて欲しかった。

「…あとで行く、先に行っておいてくれ」

できる限り普段通りに答えたはずだが、読まれた。

「あのな、いつまで周りを突き放す気だ?ナヨナヨしてんじゃねえよ、てめえも俺も生きてんだから今まで殺してきた奴らの分生きろ。どんな殺し方でも死んだやつは生き返らねえんだからよ」

そしてカールは目線を明るくなってきた外に合わせて言った。

「…俺も惨殺すんのは正義と思ってないけどよ、そんくらいは自分を許してやりな。そうでもしないと精神が持たない」

そして部屋から出て扉を閉めた。そして扉の向こうからぐぐもった声が聞こえてくる。

「…こいよ」


カールが去ってから、数分後。手汗で滲んだ写真をもう一度見つめる。写ってる人は全員絶好調な笑顔だった。ため息を吐き出し、ベッド下に戻した。外はもう明るくなっていた。


「…ふわぁ…寝てたや。ランディはどうなった?」

「なんも、寝てるだけさ。もうそろ目覚めるだろう」

病室の中からクレイとオーロンの声が聞こえる。ドアノブに手をかけたところで一瞬躊躇い、そのまま扉を開けた。すぐにクレイとオーロンの顔が見える。

「おはようダレク。ランディの容体聞いた?」

俺が横に首を振るとクレイは説明してくれた。

「こいつめっちゃ幸運だぜ?手術成功で銃弾は摘出済み、感染症もなし。二週間ぐらいで退院できそうだってよ」

本当によかった。それだけでもかなり精神的に楽だった。

「ダレク、くまが酷いぞ。寝てないだろ」

「そっちこそ、クレイ、なんも食ってないだろ。頬がやつれてる」

と言い合っていると、カールが入ってきた。片手に乗り切らないほどの果物とチョコレートを持って。

「お前ら食え、お見舞いだ」

クレイが開いた口が塞がらないようだ。しかも目がキラッキラに輝いている。

「それどっからとってきたの?」

オーロンがチョコレートを一つ口に放り込みながら尋ねる。

カールは小声で全員に耳打ちする。

「ヘルテル司令から差し入れさ!」

「マジかよ、あの司令甘くないか?」

クレイが3個同時にチョコレートを口に放り込んだのでゲホゲホむせながら聞く。

「さあな、あの人なんだかんだ言って優しいし。あとそのままあの人が司令となるらしい」

カールもチョコレートを食べながらもごもご答える。

「…俺の分のチョコレート残しとけよ!」

ベッドからそんな声が聞こえた。クレイが振り返って言う。

「ランディ!いつ起きたの?」

「たった今。あの男はどうなった?」

「フルボッコにしてやったさ。な?」

クレイが俺の方を向いてニヤッと聞くので、俺は重々しくニヤッと返した。

「…その通りだな」

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