虐殺兵の青年
プロローグ(前編)
私は罪のない人々を「安楽死」という名目の元、大勢殺害した。上官に逆らえず、自分の命と引き換えに大量の魂を葬り去ったのだ。耐えられなくなった私は上官の命令に背き自らの意思で収容所に入った。
かつて私が虐殺した人々の家族や友達が私の元同僚達によって、まるで物を扱うかのように無造作に、独房くらいの部屋に詰め込まれて殺された。鉄の匂いに耐えられなくなった私は精神を病んでしまい、ついには食事も喉を通らず死にかけた。上層の兵達に異常者だと判断された私はある「シゴト」を与えられた。
外でやる仕事らしい。運動場まで歩かされ、立たされた私は銃を背中に突きつけられた。1本のスコップを手渡された後、真後ろの兵に塹壕を掘れと命令され、何故か目隠しをつけられた。両隣に居た捕虜や村人と一緒に、何も視えない中で穴を掘る。撃たれたくなかった時分はスコップを一心不乱に地面に突き立てては許多の土砂を側に山積みにしていった。
何時間経っただろう。間断なく掘り続けた私の両手はマメが潰れて肉が剥き出しになっていた。ゴム手袋に水を破裂する程注入したかのような手の平に最早感覚はない。手遅れになった両腕とこれから待ち受けているであろう前途に絶望していた私は、何処に居るかも分からない監視兵達に気力を振り絞りながら聞いた
「何の訳があってこの穴をほらされているのですか」
数刻後、私は絶望の淵に立たされることになる。
続きます。