未来予想図II
ぐうううう。
俺の胃袋の叫び声は 何もない家の中、変わり果てた家の中に響き渡った。
最期にカレーが食べたかったなあ。
腹の虫よりも小さな声しか出ない自分の情けなさに頬を濡らす。
こんな地獄が始まったのは30日前、初めてあいつの存在が確認された日だ。
その名も「カミクウイルス」。
致死率は107%。かつて流行ったコロナウイルスなんて目でもない程恐ろしく凶悪だ。
その脅威性の高さから人々は皆、自粛。すなわち家を出なくなった。
外には出られないし、万が一、リスクを承知で食料を調達しようとも、スーパーやコンビニ等の施設が機能しているはずもない。
そうしたことから、食糧難による餓死が世界各国で相次いでいる。
そして俺ももうすぐ、その内の一人になるってとこだろう。
俺、まだ20なのにな。
どうにもできない悔しさと悲しさを潰すかの如く拳を握りしめる。
いらないことを考えてたら眠たくなってきた。そろそろお迎えが来たみたいだ。
最後ぐらい安らかに眠れるように電気を消しておこう。
残っているわずかな体力を使い、昼に食べたカツとじ丼が収納された重い腹と重い腰を上げ、電気のスイッチの方へと足を運ぼうとした。
どすん。
何かにつまづいて転んだ。
いててー!なにしやがるんだ!てやんでい!
振り返るとそこには、昨日先に逝ってしまった 弟 エセコロナの亡骸が横たわっていた。
エセコロナ。。お前は死んだ後でもお兄ちゃんを困らすんだな。バカ野郎。。
独り言になってしまったその声は、かけていた日向坂の音楽に揉まれて消えた。
人間というものは限界状態が続くと、普段考えようのないことも思いつくようになるらしい。
俺の目に映ったエセコロナは、少し、ほんの少しだけ美味しそうに見えた。
「生き延びたい。」
その想いだけを原動力に動いた獣は、いつしか口周りを綺麗な紅色に染めていた。
久しく味わった肉の味は、身体に、脳ミソに、その更に奥に、鮮明に、こびりついて離れなかった。
もっ、、と、、、、もっとたべタイ、、
マズは、、アいつラ、、、、
オれヲ、、バカニシたアイツラ、ゼんイン、、
オマエラゼンイン、、、、、
話は変わるけどさ、
すなあらしって鋼に効くん?