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鬼神の子  作者: ラーメン太郎
序章
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二話 暗い霧

稚拙な文章です、勉強しなきゃな


俺はある時目を覚ました。

ここはどこだ、一体何があったんだ?

まるで夢だったかのように思い出せない。

辺りを見回すと

【ダークフォレスト中央政府病院兵士治癒室】

という文字が右の壁に書かれていた。


「……ここは病院か?」

体が柔らかい物の上に乗っているのかすごく楽だ。


「だれかいないのか?」

起き上がるのと同時に左腕に電気が走ったように痛む。


痛みの先である左腕に目を通すと包帯でぐるぐる巻きになっており、包帯からは赤紫色の血がしみ出でている。


「……痛ってぇ……」

とにかく痛い、そして見るに堪えなかった。


「……っ!クロ!!」

前の方から誰かの声がした。

聞き覚えのある、つよくはっきりした声──エミリアだ。

なんでこいつが……たしかあの時……。


──思い出した。

インテグリス(聖王国)に滅ぼされたんだ……。

その時死ぬ気でエミリア達を探してる途中で倒れたんだ。

エミリアは隣にあった椅子に座り、泣きながら左手を握ってくる。よほど心配だったのだろうか、俺はいつもの意地汚いエミリアを想像していたから天地がひっくり返るくらい驚いた。


「……い、生きてる……クロムが……。」

「い、生きてるよ。ほら動いてるだろ?だから泣くなよ」


首を横にずらすように動かして面白おかしくしてみる。

だがエミリアは泣いてばかりだ。

こんなに泣いたのはいつ振りだろう、前も俺が怪我したときだったっけ。


「あんた、一週間ぐらい意識無かったんだよ……」

「……え?一週間もか!?」

「……その間に『ガウル』って人に聞かれたんだよね。あんたのこと。」


一週間だと?

俺はあの時怪我はしてなかったし……。

しかも『ガウル』?誰だそれ……。


「その人はいい人そうだったけどちょっと怖かったわよ。」

「怖い……?」

「うん、少し髪が赤みがかった男の人で、目つきが鋭かったわ……。」

「知らないな……。」

「多分政府関係者じゃないかしら。」

「……そうか、そういえばアリスとシャガルはどうした?」


あいつらがどうなったのか心配になった。

エミリアが生きていた事は嬉しいが妹と親友がどうなったか心配だった。


「それは心配しなくて良いわよ。アリスと私はあの時隣町で買い物してたし。そして今は交代しながらあんたの見舞いにきてるからあの子は元気よ。」

「……よかった。」

「シャガルは……」


エミリアがそう言いかけた時、突然隣の方から声がした。



「なぁ、お前らいつまで無視するんだよ。」

「うぉっ!驚かせんなバカ!」

「俺は隣のベッドにずっといたぞ、気付かなかったのか?」

「すまん……分からんかった……」


壁が薄くて分からなかったが小部屋になってたらしい

シャガルも入院してたのか。


「全く……バカねー、クロは。注意力が無いのよ昔から。」

「ったくイチャイチャしてっから分からないんだよ」

「だーからそんなんじゃないって何回言ったら分かんだよ」

「は~?イチャ……なんてしてないわよ……」

「あれれ~エミリアさぁん?」


茶々を入れるシャガル。

やめとけ、後でとんでもないことが起こるぞ……。


「あ、アリスにバカクロが生きてたこと伝えてくるわね。」


エミリアはそう言ってドアを思い切り開き出て行った。

あれは怒ってるな、顔真っ赤だったもん。


「タハァ~、照れて出て行きやがった。乙女だねぇ……。良かったなクロム、ありゃお前に惚れてるぞ。」 

「は?」


コイツ何言ってんだ?

あれは怒ってるだろ……。


「鈍感だなぁ」

シャガルは飽き飽きした顔をしていた。


────

話題が変わり、これから戦争の話になった。


「そういえば今回の犠牲者すごい多いらしいな」


ミッドナイトを襲撃され、住民がほぼ亡くなった。

約1000人程だった。小さな村とはいえ護衛兵がいたはずだが一瞬にして焼け野原になるなんて……。


「タスクとかいうおっさんも目の前でぶっ殺されたしな。」

「あ、そうだ。お前に見せたい物があるんだった。」


シャガルはある手紙をクロムに手渡した。

火で燃えてボロボロになったものだが、字は読める


「ん?これって?」

「あのおっさんが家族に向けて書いた手紙だ。多分遺書だ。」


俺はその手紙を黙々と読んだ。


────────

愛する妻と娘へ


分かってるとは思うがもしかしたら戦争へ出向く。

大丈夫だ、心配ないぞ。

何人もの有能な兵士が入隊を志望している。


マロ、世界は広い。

俺のように狭い人間にはなるなよ。

元気なマロのままでいろ。それが父さんの幸せだ。



エリ、お前は俺が死んだら代わりのやつでも見つけとけ。

最後の最後までいてくれてありがとう。

お前らと家族で良かっ──


─────────

途中で文章が途切れている。


「多分、直接渡すつもりは無かったと思うぞ。」

「戦場に持ち込んでるんだから」

「自分の弱い所を家族に見せたくなかったんだろうな」


弱いところ……か……。


「俺はおっさんの想いは分からねぇけどお前にお願いがある。」

シャガルは息をゆっくり深呼吸をした後、俺に言った、


「おっさんの妻はもう自殺して亡くなってるらしいんだ」

「そ、そうか……それがどうかしたのか?」

「おっさんには小さなマロという娘がいるんだが」

「そいつはもう両親はいない。だからクロム。そいつの父親代わりになってくれないか。」


シャガルは深々と頭を下げる。



「え……。」


なぜシャガルがこんなにも想ってるのか分からなかった。

酷い話だが他人の子なのに。


「なんでお前はそんなに必死なんだ?」

「親が居ないと殺されるんだよ……。」


シャガルは顔を伏せ、話し始める。

「敵軍のスパイと見なされて殺されるんだよ。」

「捨てられた子、両親を亡くした子は………殺されんだよ。」


「お前と初めて出会う前、友達が目の前メガロスの兵士に殺された。」

「必死に抵抗したけど、当時のガキの俺じゃ何も出来なかった。」


噛み締めるように吐き出す。

その情景が頭の中にへばりついているのか、話が止まることは無かった。


「友達を殺す国なんて国じゃねぇ。だから俺は怖いんだ。」  

「そのマロって子も───殺されるんじゃねぇかって。」


「……。」

何も言えない。

その過去を奥底にしまったまま生きてきたのか、コイツは。 



「それ以来、俺らの平和を戦争なんかで潰すインテグリスも自分のことしか考えねぇメガロスも憎くて憎くてしかたねぇんだよ……」


コイツにはそんな過去がある。

それを目の当たりしたシャガルは二度と起こさせないように心に決めていた。


だから必死なのだ。


「……そう、だったのか。」

「本当は俺が引き取ってやりたい。でも俺のうちは裕福でもなけりゃむしろ貧しい。」

「だからクロム。お前にしか頼めなかったんだ。」


「……分かった。でも家族と相談させてくれ。」

「悪い…ありがとな」


──────────

俺は医者と話し、退院が決まった。

病院を出ると、エミリアがいた。


「お前、待ってたのか?」

「新しい家とか分からないだろうから待っててあげたのよ。」

「新しい家か……」

「さ、行きましょ。」


ミッドナイト襲撃でやっぱり家が無くなっていたのか。

寂しいが、しかたないな。

そう思い、歩く。外は暗くなりつつあり、星がきれいだ。


「そして伝えなきゃいけないこと大事なことが三つあるわ」

「ん?大事なこと?」

「まず一つ目が装備のこと。あんた丸腰じゃない、それでも一国の騎士?明日買いに行くこと、分かった?」

「なるほどな、わかった。」

「……そして二つ目は新しい家族が出来ること。孤児の子らしいんだけどね、その子の面倒を見れないかって国から来たのよ。その代わり住居は無料で提供してくれるって。勝手にごめんなさい。」

「いや、大丈夫だ………。」


『友達を殺す国なんて国じゃねぇ。』

アイツの言葉がよぎった。

なんで国からなんだろう。


「三つ目は……」

「ん?どうかしたか?」


急に言葉が止まった。


「あんたのお父さんが、あんたに会いたいって。」

「……違う型で断っておくよ。」


俺は父を嫌悪していた。

虐待等を受けていたわけでは無い。

もっと違う理由で──父を嫌っていた。


──────

「着いたわよ」

帰ってきた頃には真っ暗になっていた。

その建物は少し古いが気にはしないくらいだった。


「あっ帰ってきた!!」

聞いたことが無い声がした。


「私はマロっていうの!」

「よろしくなの!にぃにぃ!」

この子があの───。

目がぱっちりして肩ほどの茶髪で可愛らしい容姿だった。

そして笑っている。笑うのが好きなのかな。

隠されているものは何もない。純粋な笑顔だ。



「にぃにぃって朝とか昼何してるの?」

「……えっと...」


騎士団ってことは黙った方がいいな。

父親のこと聞かれたら困るし……。


「もしかしてヒーロー!?」

「え?あぁ、そうだ!」

「そうなの!?そうだと思ったぁ!私のパパも世界を守るヒーローなの!ほら!あのマーク!」

マロが指した方向が俺が着ている新人用の軍服。そこに描かれているメガロスの紋章だった。


「いっつも悪いヤツを倒すヒーロー!」

「私のパパと同じだね!」


楽しそうにマロは父親のことを話す。


「うん!君のパパは強いよ!俺も強くならなくちゃなぁ」 

「私のパパは最強だから当たり前~!」


マロの言葉一つ一つがクロムに刺さる。

刺さったトゲが罪悪感と変わる

もし…あの時勝手に行動してなければ、と。


「ほーらマロちゃんー!お風呂入るよー!」

遠くからアリスが呼ぶ。


「はーい!」

マロは元気に駆けていく


いつかこのことをこの子は知る日が来る。

それを知ったらどんな顔をするのだろうか。

その時俺はどんな顔して居ればいいのだろうか。

知らないのことが幸せなのか。

俺には分からない。




……明日に備えて寝るか……。

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