死神8
その場を去っていった男に自分のことを気づかれなかったことは良いのですが、少年はある事を思い立って愕然とします。
「あっと、しまった。殺人事件が起こったのは良いけれど、このままじゃあ犯罪そのものが日の目を見ないままになっちゃうなあ。正直あんなに綺麗だったお姉さんが死んだことを誰にも気づかれずにあそこで朽ち果てて行くのは寝覚めが悪いなあ。だからといって僕が自分で警察に通報するのもなあ、第一発見者をまず疑えっていうのが警察のセオリーらしいからなあ。あらぬ疑いをかけられちゃあたまったものじゃあないものなあ。おや、マンションのあたりが騒がしいぞ」
少年がふと気がつくとマンションの周囲がパトカーやら救急車やら見物客やらでてんやわんやです。
「うわあ、いつの間にか人がいっぱいだあ。パトカーも救急車も来て居るよ。そういえば殺されたお姉さんの部屋のドアが開けっぱなしだったなあ。誰かに気づかれるのも時間の問題だったわけか。よし、これでいいぞ。そのうち刑事さんたちが捜査を始めるだろうから、そうなったらこの名探偵の登場っていう塩梅だあ」
少年が今か今かと待ち構えているとテレビの刑事ドラマでよく見るような私服の刑事がやって来ました。少年は待ってましたといったところです。
「あっ、あれは刑事さんだ。制服警官から事件の説明を受けて居るみたいだ。来たのは一人だけみたいだなあ。刑事って二人一組じゃあないのかなあ。たまたまあの刑事さんが何かの用事でこの辺りに一人でいたのかなあ。後でもっといっぱいくるのかなあ。もうしばらく待ってみようかな。いや、我慢できないや。善は急げだ」
少年はやって来た刑事に話しかけます。