第8話 錬金畑特製の焼き魚定食
「今日は焼き魚が食べたいな」
なんとなく、そう思う日ってあるわよね。
肉が食べたいとか、魚が食べたいとか。
今日は朝から焼き魚の気分なの。海が近い街に住んでいたら焼き魚を食べたかったら食堂に行って頼めばいいよね。
だけど、ここは浮島で食堂なんてないの。
「焼き魚が食べたい」となったら、まずは魚を手に入れないとダメよね。
そんな時は釣りをしようってなるわ。浮島の周りは海だから、魚だって一杯いる。それも沖を航行しているから、あまり漁師もやってこないところ。
ちゃんと釣りのスキルがあれば簡単に釣れる・・・んじゃないかなと思う。
だけど、私、釣りはやったことがなくて、あんまりやりたいと思わない。じっと待っているのって、ストレスになるタイプなの。
子供の頃、兄に連れられて釣り堀に行ったけど、結局、釣らないで見ているだけだった。
そんな私が焼き魚な気分の時、どうやって魚を捕まえるのかというとね・・・ジャジャーン♪
《釣りツリー》
とっても、便利な木が浮島には植えてあるの。
釣りツリーは、釣りをしてくれる木で、錬金進化をした木。元々、柳の様に長くてしなやかな枝を持つ木だったんだ。
錬金進化してことで、しなやかな枝をびゅんびゅん動くことができるようになったの。
「お願い。今日はおいしい焼き魚を食べたいの」
まずは、釣りツリーに話しかける。
枝を揺らして、「オッケー」と答えてくれる。
で、私は鯛の姿をイメージして、釣りツリーの幹にハグするの。
「おいしい鯛を釣ってちょうだい」
もちろん、鯛が釣れるとは限らないけどね。でも、鯛じゃなくても焼き魚に向く魚はきっと釣ってくれるはず。
私が離れてみていると、釣りツリーが枝をしならせてそこから伸びた弦を海に向けて投げ込んでいる。
いち、に、さん。数えてみると7本の枝が海に弦を伸ばしている。
釣りツリーの釣り方は基本はルアー釣り。
弦の先についている小さな葉っぱを小刻みに動かす。すると魚が餌だと思って喰いついてくる。
その瞬間を見逃さず、枝が動いて小さな葉っぱの横についた刺に魚を引っ掛ける。
今日はそれほど忙しくないから、しばらく釣りツリーが釣りをしているのを見てみる。
あ、さっそく釣れたみたい。枝がグインと後ろにしなって、弦を引き上げている。
でも、残念。弦の先についていたのは、小魚ね。あれじゃ、焼き魚には使えない。釣りツリーの横に用意してある魚肥の畑に投げ込んでいる。
また、掛かったみたい。今度は大きい魚ね。枝がぐぐぐっーって引っ張られている。負けじと釣りツリーも逆側に枝をしならせる。
「がんばれー、釣りツリーっ」
応援すると一層強く後ろに引っ張るように弦を引き出す。あ、失敗したみたい。急に弦が軽くなってビヨンと引き戻される。魚に逃げられた様子。
うーん、見ていると気が散るのかな。魚釣りは釣りツリーに任せて、釣れた後のこともちゃんと用意しておこう。
魚焼き網を用意して、炭をおこして・・・と普通はなるじゃない。
たけど、焦がさないように、生焼けじゃないように、魚を焼くというのも、そんなに簡単じゃない。
なんと言っても、私は料理が下手なのだ!
つまんないことを自慢してしまった。でもね。半端にやるよりも、いっそのこと一切やらないと決めてしまう方がいいのよ。
やりたくないなら、代わりに何を用意したらいいのか、考えるようになるからね。
私が用意するのは、もちろん錬金料理よ。ジャジャーン♪
《網焼きひまわり》
ひまわりの花が太陽に向かって咲いていて、太陽のエネルギーをしっかりと受けて、熱々になっているの。
花の真ん中が網みたいになっていて、そこで魚を焼いてくれるの。
もちろん、錬金進化したひまわりなの。
だから、最適な焼き具合でやいてくれること間違いなし。居酒屋の厨房で10年働いた友人と同じくらい綺麗に焼いていれる優秀なひまわりなのさ。
その隣は《フライパンひまわり》も大きな花を咲かせているし。今日は出番ないけどね。
網焼きの準備ができていることを確認して、釣りツリーのとこに戻ってきた。
釣りツリーの前の浮島の岸には、大きめの魚籠が掛けてある。
覗いてみると・・・わーい。魚が入ってる。
アジ、と、小鯛ね。うーん、どうしよう。どっちも美味しそう。もっと大きな鯛が釣れたら、焼き魚は鯛にしたいんだけど・・・。
もうちょっと待ってみようかな。
お昼寝した後、釣れた魚を網焼きひまわりにセットして。
軽食畑で、おにぎりとお味噌汁を収穫する。
晩御飯は、獲れたて鯛の焼き魚定食。なんか、贅沢っ。
アジは干物にするために干してあるあら、また焼き魚定食ができるわね。
「うん。サイコー」
おいしいご飯がちょっとした手間で出来てしまうのが、錬金畑のすごいとこ。
まだまだ、錬金進化が続いているから、どんなおいしい料理ができるようになるか、楽しみにしているんだ。
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