第7話 初めての武器錬成
チュンチュンチュン♪
朝になったけど、そんなに明るくないとこを見ると曇っているのかな。
窓の外を見ると、どんよりとした雲に覆われている。
「そんなに暑くならないからちょうどいいかも」
アリサの住んでいる浮島は岸を左に見て、3キロ沖の海を航行中で、予定ではあと5日は接岸しない。
次に寄るのは『闘技場のある島』。島と言っても実際には半島で幅10メートルほどの狭い天然の橋で結ばれている。
「どうかな。あと5日でちゃんと育つかな」
せっかく闘技場がある島にいくんだから、それまでに剣が収穫できるまで育っているとうれしい。もっとも、どのくらい日数がかかるのかは、剣の育成は初めての経験だから皆目わからないの。
いつもの農作業ができる服装に着替えて、家を出る。朝ご飯はもちろん、ちゃんと食べてからね。
『武器畑』と大きく書いた札が刺さって畑にやってきた。まだ、ほとんど何も生えていない畑。
ここがいつかは、伝説の剣も育つ畑になるのかな。
すみっこにだけ、7株だけ直径1メートルに広がった大きな草がある。どう見ても雑草にしか見えない。その草は強剣草。
ほとんど知られていない草で、『錬金農法の勧め』ちょっとだけ載っていた物。
剣と共に植えると剣を錬金強化する作用がある植物。ただし、強化に失敗すると剣は失われてしまうことがあるので注意が必要だ。と書いてあった。
でも、細かいことは書いてなくて・・・
だから、勝手に解釈して武器を強化してみる。
もっとも失敗するのが前提だから、ボロボロの安い剣を使ってみることにしたんだ。
まずは土に剣を垂直に刺してその上に強剣草を載せて植える。1日ほどで剣を同化するように根を伸ばしていく。周りの養分も取り込みながら、剣の部分に錬金をしていくはず。
どうも、元々の剣を錬金強化して、より上級の剣にしてくれると期待して土をかけてみる。
ただし、強剣草は収穫タイミングが難しい草で、早く収穫すると半端な状態になり、遅れると何も残らないみたい。
収穫タイミングは、花が咲いてすぐがいいと書いてあるが、いつ花が咲くのかが書いてない。もちろん、いろんな条件が関係するから、とのくらいでとは書けなかったのではないかと想像しているの。
「まだ、花芽もでていないから、待つしかないのね」
それぞれの強剣草には、色々なポーションを追加肥料として与えてみている。ポーションの肥料で剣に付加されるパワーが変わってくると書いてある。
初級ヒーリング、中級ヒーリング、パワーアップ、スピードアップ等々。どのポーションを与えたらクオリティーが上がるかが、ちゃんとあの書物には書かれていない。ただ、剣士が使うポーションが良い、とだけ書いてあるのよね。
「ポーションの一杯エネルギーを吸い込んで、剣を強くして頂戴ねっ」
ひとつひとつの強剣草に話しかけてみる。そんなの意味がないという人も多いけど、植物って愛されていると感じると綺麗な花を咲かせるという人もいる。
錬金畑では植物にイメージを伝えることが大切で、同じ作物でもしっかりとしたイメージを伝えることで品質が格段にアップする。
だから、愛情持って話しかけるのは、「こんな感じで育ってほしい」とイメージを伝える意味でも重要なのよ。
もっとも、武器畑は初めてなので、どんな剣ができるのかは全く分からない。もしかしたら、全部使い物にならない剣かもしれないね。
だけど、錬金畑は試行錯誤が大切なの。まずはどんどかとやってみて、結果を見てうまくいかなかったら、別の工夫をしてみる。その繰り返しで品質の良いものができる秘訣ね。
ヒーリングポーションは、もうずいぶんと作ったから、だいたいのポイントは分かっているわ。だから、安定的に品質の良いポーションができるの。
剣もきっと慣れれば、ドワーフのベテラン鍛冶屋さんが鍛えた剣に負けないものになるはず。
「錬金畑でも最後は聖者の剣も収穫できる」
『錬金農法の勧め』には、そう書いてある。それを信じて試行錯誤を繰り返す予定。
まずは第一歩として、ボロボロの鉄の剣を鋼鉄の剣に強化してみるつもり。あと5日でお花が咲いて収穫できるかな。ドキドキ。
錬金畑は気長に待たないとダメなんだけど。
早く結果が知りたいなと思ってしまうの。
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