第51話 イケメン役者とデート
今日はエリオットさんとデート。
声質変化ドロップで役がうまくいったことのお礼を兼ねてデートすることになったの。
だから、朝からもう胸がドキドキしている。
「今度は恋に発展するかな」
いつも、ひとりで妄想しているだけで、恋愛に発展しない。
前世でも、そうだった。
恋の妄想するのは大好きだけど、それを実際に行動に移すのはすごく苦手。
ただデートに誘うのさえ、怖くてしかたない。
「ビリー君元気かな」
デートの様なデートじゃない様な。
男の人と一緒にふたりで遊んだのは、ビリー君くらい。
でも、今回は正式にエリオットさんがデートとして申し込んでくれた。
「それはドロップのお礼ですよね」
「もちろん、それもあるけど。アリサさんとデートしたいんです。本音は」
そんなこと言ってもらっちゃった。
もう、うれしくて、うれしくて。
もう一回行っちゃおう、うれしーーーい。
「もちろん、ご一緒します。とっても楽しみです」
「やったぁ」
素直に気持ちを表すエリオットさん。なんか、すごく感じがいい。
「待ちました?」
「あ、エリオットさん。ほんと、ちょっとだけです」
本当は1時間も前に来て、待っていたの。
我ながら、落ち着きがないと思う。
「それでは、行きましょう」
「はい」
エリオットさんが腕を組んでくる。
私、慣れていないから「びくっ」としてしまった。
「あれ、お嫌ですか?」
「そんなことありません」
すっごくドキドキしている。本当に心臓がはちきれそう。
「どうぞ」
「ありがとう」
レストランの入り口では、ドアを開けてくれる。レディファーストが当たり前にできる人なんだ。
「こちらです」
従業員さんに、誘導されて向かったのは個室。それも、とってもかわいい部屋。
ロココ調のデコラティブな調度品に囲まれて、お姫様になったみたい。
薄いブルーと白がベースの部屋。
あの宝石箱、かわいい。あんな感じのお店で売りたいな。
ついつい、夢の雑貨屋さんの仕入れを考えちゃったりする。
そのくらい私の好みにぴったりなお部屋。
「こんな感じの所、好きかなと思って」
「大好きです。とってもかわいいわ」
「よかった。このお店、個室はひとつひとつテイストが違うんですよ。みんな見せてもらって、アリサさんに一番似合う部屋を選びました」
「うわぁ、そこまでしてくれたんですね。ありがとうございます」
エリオットさん、女性の気持ちすごく分かってくれる人なのね。あ、私の気持ち、ね。
「まずは乾杯しましょう。乾杯!」
「乾杯!」
エリオットさんの顔が近くにある。
この部屋はテーブルとふたり掛けのソファー席がひとつ。
ふたり並んで座るようになっている。
カップル仕様の部屋ね。
乾杯しているで飲んでいるのは、シャンパンかな。
泡が出ている薄金色のお酒。
「意外と強いので、気をつけてくださいね」
「はい」
確かに強めのお酒。ワイン程度だと思って調子に乗って飲んでいると酔っ払いそう。
「失礼します」
ウエイターさんがオードブルとサラダを持ってきた。
コース料理みたい。
「ここの料理、おいしいんですよ」
「おいしそう。それにすごくきれい」
盛り付けがすごくこだわっている。このサラダなんて、お城の形になっている。
「なんか食べちゃうのもったいない様な」
「でも、おいしいですよ」
エリオットさんは、ばさっとお城のサラダにナイフを入れて食べている。
私も少しづつ、はじっこからサラダを食べている。
「あ、おいしい」
「でしょ」
ドレッシングがおいしい。何を使っているんだろう?
このドレッシング欲しいな。おうちのサラダ畑に常備したい。
「声のドロップ、本当にありがとうございました」
「喜んでもらって、私もうれしいです」
「実はお願いがあるんですが」
「えっ、なんでしょう?」
「あのドロップ。もう少しいただけませんか?」
「はい。また持ってきますね。いつ必要なんです?」
「3日後にオーディションがあるんです。次の劇の主役を選ぶオーディション」
「ええっ、エリオットさんが主役ですか?すっごいです」
「まだ、オーディションに参加できるだけですが。それでも私にとっては初めてのことです」
「よかったですね。今回の好演が評価されたんですね」
「はい。だけど、ドロップがないと主役にはなれなくて」
「もちろん、用意しますよ。オーディション用だけじゃなくて主役になっても困らない数持ってきます」
「ありがとうございます」
エリオットさん、ほっとした顔をした。
今日、このお願いをして断られたらどうしようと思っていたのかな。
そんなはずないのにね。
「私はエリオットさんのファンですから。応援させてもらいます」
「えっ?」
「なんです?」
「ただのファンなのですか?」
じっと私の目を見て聞いてくる。
「えっと・・・」
「私はあなたのこと、一ファンとしてみたことはありません。最初に出会った時から」
「えっ、えっ」
あまりにうれしすぎる展開だから、まともな受け答えができない。
その上、身体が熱くなってきた。
「私はアリサさんとこうやって一緒にいる時間がとっても大切なんです」
「わ、私も同じです」
なんとか気持ちを言えた。
妄想の中では何度も予行練習していた言葉。
でも、男の人に本当に行ってみらえるなんて。
「私はこうしてアリサさんとふたりきりでお酒を飲んで、そして触れられたりする」
「あ、あ」
もう、何も考えられない。
エリオットさんに触れられた手が熱くなっていた。




