第45話 観劇しましょう
「へぇ、アリサさんの友達が出るんだ」
「ええ、だから花束持って応援に行くの」
近々、騎士団が任務でどこかに行くらしく、アリサに作ってほしいアイテムの依頼をしてきた。
その打ち合わせの後、食事に誘われたけど予定があると断ってしまった。
「僕も一緒していいかな」
「えっ、でもチケット1枚しかないし」
「なんとかなるでしょう」
エリオットにもらったチケットは最前列。
本当の観劇好きはもっと後ろの席で全体が見える席を好むがミーハーな観客は顔が良くみえる席を好む。
「この席が私を観るなら最適な席です」
なんて言われてもらった席。
さすがにもう一席欲しいとは言えないし。
「窓口で交渉してみるよ」
「それなら」
本当のことを言うとちょっと迷っている。
せっかくのエリオットさんの好意なのに男連れでいくというのは。
もちろん、ただのお礼だろうけど。
「ほら、窓口空いているし。ちょっとここで、待っていて」
「はい」
最前列は無理だろうなぁ。主役の人の追っかけのおばさんいそうだし。
ほら、なんか言い合ってる。無理言っちゃ駄目よ。アンソニーさん。
あれ、窓口の女性いなくなっちゃった。アンソニーさん待ってるの?
窓口の女性がおじさん連れてきた。ん?なんか、深くお辞儀している。
「アリサさんの横の席とれたよ」
「アンソニーさん、騎士団長の権威かなんか、使ったでしょう」
「こういう時くらい、使わないと思ったいないでしょ」
いたずらっ子みたいな笑顔で応える。
ちょっとかわいいって思ってしまった。
「アリサさん。お友達はいつ出てくるの?」
「第2幕。最初は出番ないの」
妙にアンソニーさんがエリオットさんのこと気にしている気がする。
まさかね。
紅炎の騎士団長なんだから、モテモテだろうしね。
「ほら、場面が変わったわ。王様って声を掛ける忠臣役なの」
「ほう。それは楽しみだ」
御前会議で王様が出兵を決意した。
いよいよね。
「王様!・・・よく考えてください!これは敵の策略です」
エリオットさん、カッコいいっ。
愚直な忠臣役をしっかりと演じている。
ただ、ちょっとイケメンすぎるかな。
主役の王子役の方が似合うのにね。
周りの人を見ると、舞台に釘付けになっている。
王様に嫌われのを分かって忠言しているエリオットさんに感情移入しちゃう。
「そんな弱気でどうする。お前はこの会議に必要ない。でていけ」
失意のまま、エリオットさん退場。
もう、出番はないわね。
あと、別の役でセリフないし。
エリオットさんすごいな。
本当は王様の方がいい役なのに、観客の視線一気に集めてしまった。
退場するシーンでは、涙を浮かべている人もいた。
それからの劇は滞りなく終わり、終幕を迎えた。
エリオットさんに楽屋に行く許可もらっていたから、花束を持って行こうとするとアンソニーさんもついてくる。
「えっ、アンソニーさんも来るの?」
「大丈夫、大丈夫。さっき、支配人に挨拶しておいたから」
さっきのおじさんが支配人だったのか。
劇が終わってみんな出口に向かうのに逆らって、関係者入口から中に入る。
楽屋がいつくかあって、その中の一番大きな部屋をノックする。
「どうぞ」
エリオットさんの声が中からした。
「エリオットさんカッコよかった。すごい演技じゃないですか」
「アリサさんにもらったドロップのお陰さ」
「そんなことない。エリオットさんの実力だって。ただね。ひとつだけ言ってもいいかしら」
「何?」
「あの役より、主役の王子さん役の方が似合っていた気がする」
「実は・・・私もそう考えていたんだ」
ふたりで顔を見合わせて笑った。
「あ、そうそう。これ」
持ってきた花束を手渡す。
「あれ、そちらは?」
「お友達のアンソニーさん。紅炎の騎士団長をしている方」
「えっ、騎士団長?えっ、アンソニーさん?えっ、えっ」
急に顔色が変わったエリオットさん。
にっこり笑っているアンソニーさん。
「お、アンソニー王子殿下ですよね」
「そうですが」
えっ、何?
アンソニーさんが王子殿下?
どういうこと?
「殿下、こんなむさくるしい楽屋ではなく、こちらへ」
支配人さんがぺこぺこして登場した。
え、殿下?王子様って・・・・アンソニーさんって王子様なの?。
「どういうこと?」
「やっぱり気づいてなかったんだね。騎士団長っていうと一般的には王族がなるものって普通は思うんだけど」
「じゃあ、本当に王子様なの?」
「王子と言っても第三王子だけどね。今は騎士団長しているから、王子の公務はしていないさ」
騎士団長だから偉い人だとは思っていたけど、王子様なんて。
支配人が誘導して、私とエリオットさんとアンソニーさんを主役の楽屋に連れて行く。
そこには、王子役の主役さんが待っていた。
深くお辞儀をしてアンソニーを迎える。
王子役の主役さんと、本当は王子の騎士団長さん。
なんか、頭がごっちゃごちゃになってくる。
「アリサさんって、すごい人とお友達なんだね」
「知らなかったけど、そうなのね」
エリオットとアリサは、ぼーっと見ているだけだった。




