第4話 錬金術師が高級ディナーを食べる理由
今日のディナーは高級宿の隣にある高級レストラン。
相当有名なお店らしく、他の街からわざわざ食べにくる人もいるらしい。
大理石の入口を入ると、キラキラした世界。
「わっ、おしゃれ」
シャンパンゴールドとオークブラウンを基調とした内装や調度品。
ひとつひとつ精密な絵が周りに絵がかられたお皿やカップ。
ぴかぴかに磨きあげられた銀のフォークやナイフ。
ひとつひとつ高級感がすごい。
もっとも、そこでこれから食事をしようとしているアリサはごく普通の人。
ちょっと場違いだったかな。
お客さんはみんな貴族みたい。
私みたいな庶民ぽい人はほとんどいないなぁ。
このお店のディナーコースは金貨1枚と銀貨2枚。いつもは贅沢すぎてこういうお店では食事はできない。
今日はお客さんが多いりだったのでちょっと無理してみました。
「うわっ、何これ。おいしいっ」
どうみても、ただのコーンスープ。だけど、一口飲んでみるとふくよかな香りと微細な組み立てを感じさせる味が
幸せな気持ちにさせてくれる。
最初に出てきたスープですらそうなのだ。
その後に出てきたサラダも綺麗でおいしいし、前菜なんて5種類もあり。ひとつひとつ手が込んでいる。
「おいしいっ」
周りも見るとお金持ちそうな人たちが、特別感動もしていない表情で食事をしている。
あの人達にとっては日常なのだろう。
「すごくおいしいです」
「でしょ」
ウエイターさんに、にっこり笑って伝えてみたら、いたずらっ子みたいに、にっこり笑って言ってくれた。
そしていよいよ、メイン料理。
ワイバーンのロースト肉、特製ソースをかけて、だって。
うーん、なんだこの肉の味わい深さは。
そのうえ、なんともやわらかい。
ジブエと霜降り肉を両方兼ね備えた感じの味ね。
ある種の魔獣って食べてみると「とってもおいしい」って話は聞いている。だけど、固い肉が多く噛み切れないほどだって話も聞いたことがある。
だけど、これならナイフもいらないくらいに柔らかい。きっと焼く前にいろいろと特別な処理をして料理しているんだろう。
そのあと、魚料理も出てきて、最後にスイーツ盛り合わせと紅茶。
お酒は苦手だから頼まなかったけど、最初から最後まですべてがおいしかった。
「ふー満足。そして、とっても勉強になった」
絶対、こんな料理できるはずがない。
料理が苦手でめんどくさいと思っているアリサには、到底届かない料理達。
ただし、それは料理をすることが前提の場合。
私は得意な錬金畑で高級料理を作ればいい。
それには、どんな料理手法を使っているとか、どんな高級材料を使っているかと、実は関係ない。
まったくそういうものがなくても、できてしまうのが錬金畑なのだ。
ただし、錬金畑でもできないことがあっても味わったこともない料理を実らすことなの。錬金畑で出来上がる料理の味はお世話をしている錬金術士のイメージによって変わってくる。
だから、自分で料理できなくても、味をイメージできるようになれば錬金畑で、美味しい料理が作れる可能性があるのよ。
高級レストランで食事をするのは、錬金畑の実る料理のクオリティーアップにつながるの。
もっとも、一回食べたくらいでイメージをしっかりとできるはずがないから、すぐには味の向上にはつながらない。
だから、機会を見ておいしいものを食べるのは、錬金術士にとって、大切な経験なの。
「おいしかったぁ」
美味しい物を一杯食べてとっても、満足した。でも、なんか肩こってしまったなぁ。
なれない高級レストランもいいけど、いつも行っている食堂とかも美味しいのよね。
食べ過ぎてちょっと苦しいお腹を抱えて、高級宿の自分の部屋に戻ったら鉄の剣7本が届いていた。
ひとつひとつ油紙で包装されて。
ずいぶんと丁寧な仕事をしてくれるお店なのね。あのおじさんは細やかな心遣いとかありそうもないけどね。
「うん、これで今日のミッションはすべて完了しました」
ひとりで敬礼してみる。
残念ながら報告する人はいない。自分でミッションを決めて実行するだけ。
ちょっと寂しいかも。
高級宿が用意してくれた、真っ白で肌触りがいい寝間着に着替えてベッドに横になった。
本当は湯浴びしないといけないんだろうけど、疲れてしまったので明日の朝にしよう。
お休みなさいっ。
たくさんのブクマ、ありがとうございます。アリサはどんどんと新しいアイテムづくりにチャレンジしていきます。