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第3話 錬金素材のお買い物

「おーい、いるかぁ」


お店の中で片付けをしていると、男の人の声がする。一番最初に来たお客さんで戦士の姿をした冒険者。


「はーい」


さきほど買い物をしてくれた彼に護衛を頼んでおいたの。この後、歩いて一時間半くらいのところにある街に行く予定で、ひとりで行くのはちょっと怖いからね。



「わざわざ、ありがとう」

「何、どうせ、今日中に街に帰る予定だったしな。他の連中よりちょっと遅れたくらいだから気にするな。それにほら」

「あ、キジ鳩」


彼が右手に下げていた物をあげて示す。キジ鳩を3匹ほど紐に結んで手にもっていた。


「あの後、時間があるから狩りをしてさ。その成果がこれさ」

「弓、うまいんですね」

「今日は運がよかったのもあるがな」


そんな話をしているうちに、アリサの街へ行く準備が完了した。女の準備は時間がかかると元いた世界では言われていたけど、こっちに来てからは言われなくなった。もともとあっちの男がせっかちなだけよね。

今日は、ちょっとおしゃれな、白くてピンクのラインが入った上着を羽織る。


「どうだ。今日は売れたか?」

「もう、ばっちり。だから、ちょっ街で贅沢しちゃうと思っているの」

「それはよかったな。まぁ、あれだけのポーションがあるなら、冒険者がほっておくはずないからな」

「ありがと」


街に行く途中、街に関する話をいろいろと聞いてみた。この街に行くのは初めてでだいたいの状況をつかんでおきたいとおもっていた。

どんなお店があるのかな。治安はいいのかな。商人や冒険者ギルドはどんな人がやっているのかな、と。


「ところで街へ行くのは遊びが目的か?」

「もちろん、それもあるけど、もうひとつ目的があってね。これから必要になる素材の仕入れ」

「素材?商品ではないのか?」

「うん、素材。うちのお店に並べている商品は素材から私が作っているのよ」

「えっ、そうなのか。あの効果が高いポーションも作ったのか?」

「うん。ちょんと決まった手順どおりに作ると、普通にお店で売っているポーションよりもずっと質がいいのができるのよ」

「へぇ、そういうものなのか。すると、ねぇちゃんは薬術士ってことだよな」

「薬術士ではなくて錬金術士なの」


ポーションをはじめとした薬を作る専門職は薬術士と呼ばれている。錬金術士はポーションも作るが、もっと色々な物を作る職業。

錬金術師士はそれほど知られた職業ではない。アリサは本当のことを言うと、錬金術士というより錬金農士だと思うけど、錬金農法が知られていないので、そんな職業があるとは誰も知らないから、いつもは錬金術士で通している。


「街でどんな素材を仕入れるんだ」

「いろいろと買うとは思うけど、今回のメインは鉄の剣」

「そんなの買って、冒険者になるのか・・・あ、それも錬金術の素材になるのかな?」

「そうなの。実はまだ作ったことはなくて、今回初チャレンジグなの。どうも剣も錬金術で作れるらしいと知ってね」

「錬金術は難しそうだな」


そんな話をつらつらとしていると、街道では魔物も出ずに予定通り街に到着する。


「それじゃ、俺はこことで」

「護衛と案内ありがとう。これお礼ね」


護衛の謝礼として銀貨1枚を手渡す。


「おっ、すまないな。なんか困ったことがあったら、遠慮なく訪ねてきてくれ」

「ありがとう、知らない街でそう言ってくれる人がいると心強いわ」


彼と別れてひとりになった。


さて、まずはどこへ行こうかしら。お腹はまだ空いてないし、お買い物は・・・あ、まず宿を決めなきゃ。


実はアリサは今夜宿泊する宿をだいたい決めていた。街の中心にある高級店が並ぶエリアにある宿。その宿は高いけど居心地のいい部屋を提供してくれると聞いていたのだ。


ちょっと贅沢だけど、今日は儲かったからいいよね。


高級宿を見つけて入口から入ってみる。


ロビーの上には、キラキラした大きなシャンデリアがある。壁には花瓶が取り付けてあり、綺麗に活けられている。

ロビーの受付デスクには、美人のお姉さんがひとり、笑顔でこちらを見ている。


「あのー」


美人のお姉さんにに声をかける。


「はい。ご用件は何でしょう?」

「今日、ここに泊まることはできます?」

「ええ、大丈夫です。どのクラスのお部屋を用意しましょう?」


美人のお姉さん宿帳を確認しなから答える。


「私ひとりなんですが、金貨2枚程度のお部屋ってあります?」


どんな部屋があるのか、護衛してくれた男は知らなかった。だいたいの料金は教わっていたので、料金指定で部屋をリクエストしてみる。


「それですと・・・デラックス・ダブルになりますね。ふたり部屋ですが、おひとりだと金貨2枚になります」

「あ、そのお部屋をお願いします」


ちょっと、どきときしちゃった。こんな高級な宿、転生前も転生後も泊まったことないし。すごく有能そうな美人のお姉さんと話していると、なんかおかしなことを聞いてしまわないか、ドキドキする。


「それでは、鍵はこちらです。お部屋にご案内しますね」


丁寧な対応にうれしくなる。こっちの世界の宿は転生前と比べると雑なとこが多くて最初泊まった宿なんて、2度と泊まりたくないと思ってしまうレベルだった。もっともその分安くて銅貨3枚だったなぁ。


この部屋は高いだけあって、清潔感がすごくあるしとっても広い。ベッドも大きくてふっかふかでちょっとした調度品が凝っていて、素晴らしいの一言。窓からは街の壁の外に広がる山々が見えて気持ちがいい。


「ふぅー。疲れた・・・・・・・・・」


ふっかふかのベッドが気持ちよくて、つい眠くなってくる。


「おっと、いけない!」


寝そうになって跳び起きた。そうそう、今日中にやっておかなきゃいけないことがあったんだっけ。


荷物は部屋において、お金を持って高級宿を出る。


このあたりは高級店ばかりだから、ちょっと移動して普通の旅行者が立ち寄るエリアに来る。


目的は武器屋さん。冒険者をしたことがないアリサは武器屋に入るのが初めて。ちょっと覗いてみてみると、ピカピカな剣や大きな斧が飾ってあるのが見える。その下には、もうすこしお手頃価格だと思われる剣が並んでいる。


「ここにしてみよう」


入口を入って、奥のテーブルに座っている40代くらいのがっちりしたおじさんに声を掛けてみる。


「こんにちは」

「おっ、何か用かな?」


服装からして冒険者には見えないんだろうなぁ。武器を買いにきたのでも、武器を売りにきたのにも見えないらしい。


「ちょっと聞きたいんですが・・・使い古した剣ってないですか?」

「中古の剣を探しているのか。ごめんな。今は、状態が良い剣はあんまりないんだよ」

「あ、状態は気にしてないんです。というより、ボロボロの剣がいいんですが。錆びたのとか、刃が欠けたのとか。そういう鉄の剣があれば欲しいんですが」

「それなら、裏にいくつかあるな。持ってこよう」


ガサゴソ言う音がしばらく続いて何本も剣を持って戻ってくる。


「ボロボロでいいってことは、こんなのが欲しいのか?」


出てきたのは、全部で8本の鉄で出来た剣。どれも古そうで、そのままでは使えそうもないくらいボロボロの剣。メンテナンスをし直しても、ちょっと武器としては使えそうもないんじゃないかなぁーとも思う。

だから、店頭に並べていないのだろう。


「あ、いいですね。これなんてサビサビでちょっと力かけたら折れそうですね」

「そうだな。ただな、屑鉄にするにはもったいなくてな。そのうち、駆け出し鍛冶屋でも鍛えなおしの練習用に買ってくれるかなとさ」

「私は鍛冶屋じゃないけど、それ、ほしいんです。全部で8本ですよね。全部だといくらになります?」

「そうだな。全部一緒に買ってくれるという条件で金貨5枚でどうだ?」

「うーん。ちょっと予算オーバーだわ。どうしようかな・・・」

「それなら、この剣を除いて7本で金貨4枚ではどうだろうか?」

「その7本を金貨3枚と銀貨5枚でなら、今、すぐに買います」

「よし、売った!」


こっちの世界では、定価という考え方はあまりない。だから値切って買うのは普通のこと。たけど、値切りすぎると相手の印象が悪くなってしまう。


この7本の剣だと、もうちょっと値切れたかも・・・でも、これならのことを考えたらこのあたりで手を打つのもいいかもね。


結局もちょっとだけ状態が良い1本を除いて7本の剣を買うことになった。全てが鉄の剣で一本一本がなかなか重い。7本を一度に持とうと思ったら、持ち上がらない。


「うわっ、重たい!」

「そんな細腕じゃ無理だろ。街中ならどこでも配達してやるよ」

「あーよかった。持って帰れって言われたら困るとこでした。配達は高級宿『シャングリラ』までお願いしますね」

「そんなとこに泊まっているのか」


やっぱり高級宿は一般人には縁がない所らしい。


用事が終わって、アリサは武器屋から道に出た。


「よーし。後は晩御飯ね。ディナーよ、ディナー。ちゃんと調査しておいたのよ」


わーい。初日なのに、ブクマしてくれた人。感想を書いてくれた人。評価してくれた人。がいた。

うれしいよっ。

反応があると、また一杯、書きたくなってくるので、よかったら、ブクマ等、よろしくです。

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