第22話 染め工房を見学しよう
配信まちがえました。ビリー君スカウトされるは23話でお昼に再投稿になります。
「こちらが、染め壺ですね」
人が入れるくらい大きな壺がおかれていて、そこに布を吊るしていている。
ここは、街にある染め工房。
錬金ギルドのマチルダさんに紹介してもらった所。
「色は藍色だけなんですか?」
「そうなんですよ。藍色が基本で、時々、茶系の色の染めをすることはあるんですが」
藍染だけしかやらないというのではないみたい。
「ところで、染め工房はおひとりで運営されているんですか?」
「はい。忙しいときは手伝ってくれる友人もいますが、ふだんは私だけです」
彼女は、ジャスミン工房のジャスミンさん。
小柄な彼女は、栗色の髪をポニーテイルにしている。
「それで、お願いというのはこれなんですけどね」
「わー、綺麗」
持ってきた6色入りの染料ボトルを見せたら、嬉しそうに手に取った。
「これ、染料として使えるんですか?」
「たぶん、できるとは思うんです。ただ、染料とか染めに詳しくないので・・・」
「試してみていいですか?」
「もちろん」
奥にある倉庫から、小さめの壺を出してくる。
それに綺麗な水を半分くらいいれて、まずはボトルの赤い染料を注いでいく。
「これくらいでいいと思います」
ボトルの1/5くらいを注いだところで注ぐのを止める。
赤く色づいた水に真っ白な布を浸していく。
「あ、いい感じです。15分ほど浸しておきますから、ちょっとお茶しませんか?」
「わーい。お茶、うれしいです」
彼女もたぶん20歳くらい。同年代の女子とお茶するの久しぶり。と言ってもメンタルはアラサーだけどね。
「ハーブティ入れましょうね」
「いい香り♪」
ハーブティが真っ白なカップに注がれて綺麗な薄黄色を見せている。
ファッション関係の人だけあって、センスいいなぁ。
そういうカップ、うちのショップにも並べたいな。
「本当のことを言うとアリサさんの話を聞いて、すごく喜んでいます」
「えっ、そうなんですか?」
「今、ロイズ商会の3色ストールという商品が流行っていて」
「あ、マチルダさんに聞きました」
「それで他の商会の方から、似たような商品を作れないか問い合わせが多くて」
「そうなんですか」
「はい。でも、藍とか茶とか、そういう色の染料して普通は手に入らないんですよ。だから期待に添えなくて困っていまして」
「そうなんですね」
ちょっと迷っていた。
この染料をジャスミンさんに卸せば、きっとうまく使ってくれるはず。と、思う反面。
ジャスミンさんに染めだけを依頼して、てきあがったのを全部引き取るということもできる。
つまり、色付けした商品の流通に仕方。
自分で流通まで関わるか、それとも材料提供だけで流通は他の人に任せるか、ってこと。
うーん、どうしよう。
決めた。
「実は、ジャスミンさんに頼みたいのはこの染料で私の指示した布を染めてほしいってことなの」
「そうですよね。染めの依頼だけですよね」
ちょっと、がっかりした顔。
「でも、綺麗な色の商品に対する問い合わせが多いと聞いて、ちょっと方針をかえようかなって」
「本当ですかっ」
喰いついてきた♪笑
「信頼できる商会の人と組んで一緒に商品開発しませんか?」
「やりたいです」
「綺麗な色の布を一杯作って、この街のファッションリーダーになるような商品つくりたいですよね」
「作りたいです」
キラキラした瞳で見ている。
その顔をみて、当たりだったんぁと思った。
お金儲けしたいっていうのもあるんだろうけど、綺麗な物を作りたい。着てみたい。
そんな女心も強いっていうのが分かってしまう。
「一緒にやりましょう」
「はい」
「あと、商会の人で協力してくれる人、います?」
「もちろん!それほど大きな商会ではないんですが、友達が仕入れ担当をしている商会があるんです」
「会ってみたいです」
「じゃあ、10分待ってくらえますか?」
「待ちます」
走って工房を出て行ってしまった。
ひとりでハーブティを飲んでみる。
「あー、おいしい」
今ある6色でこんなに喜んでもらえるんだから、12色揃えたらもっと喜んでもらえるはず。
もしかしたら、12色以上作れるかもしれないしね。
『錬金農法の勧め』には12色って書いてあったけど、書いた人そんなに興味持っていない風だったから、
もっと工夫したら、色バリエーション増えるかも。
そんな夢みたいなことを考えていたら、ジャスミンさんが一人の女性を連れてきた。
「うわぁ」
すごく綺麗で可愛いな人。
歳は20歳くらいで私とジャスミンさんと一緒くらい。
金髪で肌の色が透き通るみたい。「ローマの休日」のオードリー・ヘプバーン似。
「こちら、ビル&ボブ商会のプリシラさん」
「プリシラです」
にこっと笑って挨拶してくれる。
あまりに可愛くて思わず見とれてしまった。
「あの・・・・」
「あ、ごめんなさい。私、錬金術士のアリサです」
プリシラさんは、ビル&ボブ商会を経営しているビルとボブの妹さん。
ファッション系の仕入れは任されている。
最近、ロイド商会の新製品が人気でビル&ボブ商会のファッション部門は低迷しているらしい。
「一緒に商品開発しませんか?」
「願ってもないことです」
それから3人で試作品を作ってみた。
6色のスカーフ。
鮮やかな色で、びっくりした。
前世では当たり前だった綺麗な色のファッションアイテムが、こっちの世界はなかった。
草木染みたいな色ばかりで、ナチュラルな色と言えばそうなんだけど、ナチュラルな色が映えるのも、鮮やかな色が当たり前にあるから。
そう思える環境にいると、鮮やかな色をどれだけ羨望していたのかって実感した。
たぶん、上流階級の人はどうか分からないけど、普通の街の人はきっとびっくりするはず、この鮮やかな6色は。
「プリシラさんは、この色が合いそう」
6色のスカーフを順番に当ててもらって、合う色をチェックする。
カラーコーディネーターの資格が活きてる。
「この色、一番好き」
「でしょ」
「私は?」
そうね。ジャスミンさんはピンク、と言いたいところだけど、少し冒険してこれかな。
「赤が一番、似合うと思うなぁ」
「ええっ、赤なんて無理よ」
「そんなことない。ジャスミン、赤のスカーフすごくよく似合ってる」
「でしょ」
ついついドヤ顔しちゃった。
でも、楽しいな。
女3人で新しい商品を創っていくの、楽しいかも。




