第1話 錬金畑の朝ご飯
チュンチュンチュン♪
小鳥の啼く声で目が覚める・・・気持ちの良い朝だ。
お腹すいた。何か食べよう。実は私、料理が大の苦手。だってめんどくさいんだもん。
でも、おいしい物は大好き。だから、前世ではしょっちゅう、コンビニご飯していた。
「ふぁーーー」
両腕を大きく上に伸ばして、起き上がる。
「さて、ご飯の準備しようかな」
と言っても、料理はしないんだ。だって、きっとおいしい物、実っているはずだから。
パタン。
白くペンキで塗られた玄関ドアを開けて、外に出る。
「あ、ポーションラディッシュの芽が出てる♪」
昨日種を撒いた『ドラッグ畑』に、ちょこちょこと小さな芽が出てきた。
でも、今はそこじゃない。隣の畑。
そこは、『レストラン畑』。
もちろん、正式な名前じゃない。単に私がそう呼んでいるだけ。
「えっと、何にしようかな。今日はパンがいいかな」
そう言うと、『レストラン畑』のパンの木のとこに行く。
パンの木はだいたい1.5メートルくらいの小さい木。おいしいパンが実る木なんだ。それも色んなパンが実る。今日はクロワッサンがいいな。半月形のクロワッサンをふたつ、パンの木から収穫する。
となりにあるのがドリンクバーの木。色んな色のつるが下がっている。その中のカフェオレ色のつるをひっぱって、もって来たカップに入れる。
ジャワッ、プシューー。
暖かいカフェオレが簡単にできる。
あとは、軽食草のとこに行って、ベーコンエッグとシーザーサラダを収穫する。
どっちも、木のお皿に盛った形で実っている。
すべて木で作ったトレイに載せて、朝ご飯セットできあがり。
いい天気だから、お庭の丸いテーブルで食べよう。
朝日が海に反射してキラキラ美しい。ここは、岸から沖に3キロぐらいのとこにある浮き島。
正方形に近い形をしていて、だいたい一辺100メートルくらい。
その真ん中近くに家と庭がある。
「あー、おいしいっ」
ぺろりと朝ご飯を食べてしまった。
この女性は、アリサ、21歳。この浮島の唯一の住人にして、錬金術師。もっとも、錬金術のアトリエはもっていない。
彼女が錬金術を使うのは、畑。彼女は、とっても珍しい、『錬金農法』を実践している。
「今日のお昼には、『ダンジョン近くの浜』につく予定。天気もいいし、予定通り着きそうね」
そう言って、浮島の北端にあるお店にいく。
昨日準備しておいた、商品を確認している。
すると、白い鳩みたいな鳥が彼女のとこにやってくる。この鳥は、伝言鳩。
ちょっと離れたところに行って、そこにいる人に話を聞いてきて、教えてくれる。
「えっ、そんなにケガ人がでているの?」
伝言鳩によると、ダンジョンの浅い階層に強い魔物が現れて、冒険者に多数のけが人が出たみたい。もっとも、強い魔物は高レベル冒険者パーティに倒されたから、安心。
「これじゃ、ヒーリングポーション足りなくなりそうね」
お家の前にあるドラック畑に来ている。ここには、いろんなポーション作物が植わっている。
そこから、ヒーリングポーションのラディッシュをひっこ抜いて収穫する。
ポーションラディッシュは、成長すると蕪の様に根に近いところの茎が大きくなって、ガラス瓶のポーションになる。
どんなポーションになるかは、育て方しだい。高レベルなポーションも手間はかかるけどちゃんと作れる。
「うん。まるまる太ったポーションが収穫できた♪」
ヒーリングポーションを30本くらい収穫して、竹て編んだかごに入れる。
ヒーリングポーションをお店に追加して、準備完了。
後は、畑の手入れをしておこう。
最近、雨はふっていないから、畑にお水をあげないと。農具の倉庫から、キラキラ光る小さな結晶が入った袋をもってくる。
「雨よ、降れっ♪」
結晶の山を両手に盛って、空に向かって投げ上げる。
キラキラキラっ。
「いつみても、きれいねっ。おっと、のんびりしてちゃダメなんだ」
倉庫の前の軒下に移動。しばらくいると、灰色の雨雲が浮島の上に集まってきて、ざざーっと雨になる。
もっとも10分もすると、雨は止んでしまう。また、快晴に戻る。
そんな感じで錬金術も使いながら畑のお手入れをしていると、目的地の浜の近くになる。