エルフの剣士は旅に出る
「行ってまいります」
見上げてもなお頂上の見えない巨大な木。それに一つ礼をして、わたしは腰に刺した一本の剣を見つめる。
魔に通じていない人間が見れば、ただの木剣。修行中の見習い剣士のように映るだろう。
しかし魔に通じた者が見れば、その雄大にして暖かな、清浄なる魔力を感じることだろう。
わたしの正面に聳えるこの巨木。この樹こそは、我らが世界樹、ユグドラシル。わたしの剣はその一片をいただき作り上げられた一品なのだ。
我々エルフは、ある程度の齢になると、世界を周り見識を深める。わたしもその時期が来たのである。
年不相応に堅苦しいと、よく村の者たちに言われるが、祖父である村長にこう言う喋り方でいろと、幼いころから口を酸っぱくして言われ続け、間違えば杖や魔法で怒られていてはこうもなる。
おっと、いけない。このままでは感傷に浸ってしまいそうだ。我らが母の樹に背を向けよう。そして、仲間たちの待つ村の出口へ急ごう。
ーーよっしゃ、いくぞっ。
「……やはり。いつもの方がいいな」
ザクザクと短い草木を踏みしめながら、苦笑するわたしなのだった。
同じお題に答えていた、みわかずさんの回答に刺激を受けた結果出て来た物です。
なので、みわかずさんにここで感謝を。