誰かの為の弾丸
声のする方へする方へと足を進める。気を抜いて足音ひとつたてたら見つかる。
二階には誰もいないとヤマを張ったが本当に誰もいないとは限らない。常に神経は張り詰めている。背中に冷たい汗が伝うのがわかる…
階段はすぐに見つかった。建物の隅にあり、下の階の様子がわからないL字型の階段だ。
ワタシはゆっくりと階段を降り下の階へ行く。出会い頭に見張りなどに出会ったら危険だ。耳を澄まし慎重に進む。少なくとも1人、下の階には見張りがいる。
ワタシは壁から頭だけ出し次に進むべき部屋の様子を探る。そこには探しているものはなかった。だが…
「!!」
いた。玄関で会ったガタイのいい男だ。ドアの前に椅子を置き座っている。見張りだ。いや、ちらちら外を伺っていることを考えると誰かが来るのを待ってるとも見て取れる。
そのことが幸いし男の視線はほとんどドアの外。
ワタシは男の死角を静かに通った。これで障害物は一つ突破した。
声をたよりにある一室にたどり着いた。そこにはシンプルな家具と床にぽっかりと開いた地下への階段があった。
ワタシはピストルを構え階段を覗き込む。急な階段の下に明かりが見える。そして今までより鮮明に声がする。野獣のようなくぐもり呻く男の声。水の音。冷たい空気が階下から伝わって来る。
階段に足を踏み込むと凄まじい悪寒が襲ってきた。逃げ出したい。この先にあるものを見たくない。目を塞いで耳を塞いで、見なかったことに聞かなかったことに、なかったことにしたい。
しかし、ここまで来て引き下がれなかった。まだ希望はあるのだ。どんなことになっても人は生きている限り立ち上がれると、そう心に思い込んだ。
明かりを目指す。
声は大きくはっきり聞こえる。あの部屋で何が起きてるのかは嫌でもわかる。
ワタシは、明かりの中を覗き込んだ。
血の匂い。色々な匂い。
人だったもの。
並べられた体の一部。
ワタシは言葉を失った。
頭の中が真っ白になり、視界が明滅する。
なんだろう、ここは。
3人の男たち。
赤く染まった大きな机。空っぽな女の子。並べられた臓器。様々な刃物や工具が無作法に並べられている。どれも真っ赤に染まり、灯りの下で不気味に輝く。
狂気的な光景。
様々な感情、感覚が押し寄せ…気持ち悪い。ただただ気持ち悪い…胃の中のものが全て吐き出されそうになる。
「おい!こいつはいいぞ。おまえらも…!!?」
ワタシの視線と男の視線があった。男が急にワタシの方を振り返ったのだ。どうやら情事が終わったようだ。ことを終えた男はその清々しいまでの顔を私に向けて硬直していた。
ワタシは…その男の顔を見て憎しみや恨みの感情に近いが…それとは別の何か違う感情を得た。自身が危機的状況に置かれているにもかかわらずむしろ頭は冴えていた。澄み渡るように清々しい。
ワタシは男の頭に狙いをつけ、引き金を引いた。
戦闘ないやん。戦闘が見たいからアクセスしたの!