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帽子男の短編集

完璧でないロボット

作者: TK

2135年、世界はロボットであふれていた。仕事の約90%がロボットによってこなされている。人々の人口は減ったが今の社会は人との見分けがつかないロボットで何不自由ない生活が送られている。俺が生まれたときにはもうすでにたくさんのロボットたちが働いていた。受付係ロボット、学校事務ロボット、警備ロボット、タクシー運転ロボット・・・上げていけばきりがないがそういうことだ。初めのころは反対運動などもやっていたらしいがここ20年ほどはもう収まってもう過去のものだ。今日のロボットたちは冗談も言えるし気配りもできる人間そのものといってもいい。最高のロボットたちだ。

 ただし、私が一緒に住んでいるロボット、彼女は別だ。


「おはようございます。今日の朝ご飯は和食と洋食ご飯どちらになさいましょう?」


 ベットから起きて、顔を洗いリビングに降りてくると、彼女はいつものセリフを表情一つ変えないで毎朝聞いてくる。


「和食で」


「かしこまりました」


 短いやり取りをすまして席に着き、いつもと同じ料理が運ばれてくるのを待つ。新聞を読みながらうちの彼女を見る。もう10年ほどの前に買ったものだ。カタカタと台所のほうで音がする、いつもの食事を作ってくれているようだ。


「朝食ができました。旦那様」


 彼女が作ってくれた朝食を無言で口に運ぶ。こいつが作れるのはご飯と目玉焼きと焼けたソーセージとサラダと味噌汁(豆腐)だ。洋食の時はパンとスクランブルエッグとサラダと焼けたソーセージとコンソメスープになる。このどちらかを30年ほど食べ続けてきたかと思うとかなりこいつといるのだなと感じる。今では科学技術が発達してはるかに良い性能のロボットが買った時の10分の1程度で買えてしまう。食べ終わると寝間着を脱ぎ、洗濯用ロボに渡し、彼女が持ってきた昨日私が選んだ服に着替え、ネクタイを締め、眼鏡をかける。靴を履く途中で彼女はいつも通り


「本日の最高気温は16度、降水確率は40パーセント傘を持っていくことをお勧めします。」


「わかった」


「今日の夕食は何時にいたしますか?」


 いつもセリフが出てくる。


「いつも言っているだろう。夕食は準備しなくていい」


「かしこまりました。どうぞいってらしゃいませ」


 最新型のロボットはレシピをダウンロードすれは完ぺきに再現できる、だが彼女はにはもちろんそんな機能はついてはいない。なので、朝食は洋食か和食、夕食ならカレーライスかチキンライス、昼食はナポリタンしかない。そして、掃除も洗濯も最新型のロボットには必ず付いているものが付いていなかったりする。ため息を一つつき私は会社に行った。


 会社に着いた。父から受け継いだ会社だ、30年ほど前に私が継いだ。会社にいつも通りの時間に出勤し、いつも通り自分の席の着く。それから、やることは何もない。単純に仕事がないのだ。営業は営業ロボットが、事務は事務ロボットが、部長は部長ロボットが、雑用は雑用ロボットがすべてやってくれている。私は全く手を出す必要がない。良くて権利書に判子を押すくらいなものだ、これらのロボットがすべての仕事をこなしてくれる。素晴らしい世界である。30年ほど前からこんな感じだ。めんどくさい作業、苦痛が伴う作業の等々はすべてロボットが完璧に速やかにこなしてくれている。最高だろう。

 機械ばかりではつまらないのではないか、その心配には及ばない。ちょっと雑用ロボットを呼んでみよう。


「おーい、高町君」


「はい、社長何でしょうか?」


「悪いんだけど、お茶を入れてくれないか」


「分かりました、少々お待ちを」


 そういって笑顔でお茶を持ってきた。


「うまい、いつも通りうまいな」


「そんな普通のお茶ですよ。あっ、もう一杯持ってきましょうか」


「頼むよ、何度も行かせちゃってわるいね」


「お気になさらず」


 このように外見は完全に人間と同じ、優秀なロボット達が私達を盛り立ててくれるのだ。さらに、これだけではない気軽に話も振ってくれる。


「そういえば社長知ってます?営業ロボットの山崎さん、最近すごく頑張ってるんですよ。この前なんて俺は昇進するぞーなんていてましたよ」


「営業ロボットが昇進するのかよ、部長ロボとかに改造させられんのかな」


 ハッハッハっと二人で笑いながら話す。仕事だけではない、柔軟な会話、幅広い知識、相手の表情を読むことすべてが完璧なのだ。今あるすべてのロボットに搭載された人間以上の感受性。いや、すごい世界になったな。高町と話している間に12時を超えてしまった。そろそろお昼でも食べるか。


「おっと、もうこんな時間か。高町君としゃべるとつい時間を忘れてしまうな」


「あっ、すみません。お仕事の邪魔になってしまいましたか?」


「いや、大丈夫だ。これからちょっとご飯を食べてくるから。もう戻っていいよ」


「分かりました。ぞうぞいってらっしゃいませ」


 会社を出て少し歩くと飲食店がずらりと並んだ商店街に足を運ぶ。ここの少し奥のほうに人間が料理を作っている店がある。この時代に信じられないことだが一人の元気な爺さんが店を切り盛りしている。時代遅れの店、そして対してうまくもないそんな店にここ最近は足を運んでいる。ロボットも買えないような爺さんの店は私以外にも何人か常連のような変わり者がいた。何回か通って出来た人間の友人だ。そいつが店の前で立っている。


「どうしたんですか」


私が訪ねると、彼は少し悲しそうな顔をしてこっちを向いた。


「ここの爺さんが老人ホームに入ったんだとさ。で、新しく入ってきた料理ロボットがここで料理を作ってんだよ」


「何だいいことじゃないですか、効率化もはかれて料理も前と比べてうまくなったでしょう」


「まぁ、うまくはなったかもしれないけど。あの不均等な具が入った味噌汁とか、ちょっと辛めの生姜焼きとかが食べれないのは少し残念かな。今日はもう帰るよ。」


「そうですか、じゃまた」


 軽く挨拶をして、彼は去っていった。私は古臭いのれんをくぐり店の中に入っていった。


「いらっしゃませ」


「今日は爺さんはいないのかい?」


「老人ホームへ入られたんですよ。ほら隣の駅の大きなやつです」


「そうか、今来たお客さんは何か言ってたか?」


「そうですね。お店に入ってから生姜焼き定食と豚汁を頼まれてしばらくすると1000札を置いてふらふらっと出ていっていかれたんですよね。私、何か粗相をしましたでしょうか」


「いや、大丈夫だと思うよ。生姜焼き定食一人前と豚汁で」


「かしこまりました」


 そう言って料理ロボットは厨房で料理を始めた。いつもならそこは爺さんがいた場所はなんだか物足りなく思えた。少しすると頼んだ定食が出てきた。料理はいつもとは変わらなかったが味噌汁の中の具や、付け合わせのキャベツなんかはすべて均等に切ってあり、まるでロボットが切ったようであった。味は前よりはおいしかったが何かが足りない気がした。いつものうるさくしゃべりかけてくる爺さんの声が聞こえてこず代わりに料理ロボットの起動しているエンジン音と作業音だけが店の中には響いていた。半分くらいの残し席を立った。私はお札を出しいつものように「釣りはいらないよ」と言ってロボットに渡した。ロボットのほうはかなり戸惑ってお釣りを渡そうかどうか迷っていた。いつもの爺さんがいれば釣りなんかは「悪いね」なんて言ってもらってしまうのだがこのロボットにはそういう回路はないらしい。


「うまかった。また寄らしてもらうよ」


そういうとお釣りを持ちながら、ロボットは「ありがとうございました」と言った。


 会社に戻ってきた、仕事は特に問題なく進んでいるようだった。特にやることはなさそうだった。今日は早く帰らせてもらおう。社長権限だ、なに誰も文句は言わないだろう。

 町の道はとても歩くやすい。道はすべて道路整備ロボットが定期的に掃除してくれるので文字どうりごみの一つ落ちていない。道に植えてある街路樹もすべてが美しい。駅前の飲食店、雑貨店、ショッピングモール・・・すべてがロボットが店員で、人間のような粗相はまるでない。素晴らしい。この世界はとても完璧だ。


「ただいま」


家に少し早めに帰ってきた。いつも通り彼女が玄関に立って出迎えてくれた。


「お帰りなさいませ。旦那様」


「風呂に入る。夕飯はそのあと用意してくれ」


「申し訳ありません。旦那様が帰ってくるのがいつもよりも早かった為、まだお風呂の支度がすんでおりません」


「え?そうかい、沸いてないのか。じゃ先に食事にしてくれ、今日はあまり食欲がなくて昼はあまり食べてないんだ」


「申し訳ありません。朝、旦那様が夕食は必要ないとおっしゃっていたので材料を用意しておりません」


「まいったな、夕食もなしか。何かできないか?」


「朝ご飯の洋食ならすぐに作ることが可能です」


「パンか、まぁいいか。それで頼む」


「かしこまりました。それと旦那様、本日は関節パーツの交換の予定日です交換をお願いいたします」


「ああもうそんな時期か、めんどくさいんだよな。ご飯食べて風呂に入ってからじゃダメかい?」


「今日中であれば問題ありません。面倒であれば関節交換用出張ロボットを呼びますがいかがなさいますか?」


「いや、金がもったいない。それに自分でできるしな、私がやろう」


「よろしくお願いいたします」


そう言って彼女は朝食の準備もとい夕食の準備に取り掛かる。カタカタと台所のほうで音がする、いつもの食事を作ってくれているようだ。その間に私は湯船に湯をためる。ボタンを押すだけのことだが湯につかる前のワクワクは子供の時から変わらない。彼女が食事を作っている間、私は彼女の関節パーツを納屋のほうから運んできた。これらはかなり重い、腕のパーツ一つにしても5kgはあるだろう。三往復ほどして彼女の呼ぶ声がしたので、一度居間に行った。


「旦那様、食事の準備が出来ました」


「悪いんだが先にお茶を入れてくれないか、のどが渇いた」


「かしこまりました」


椅子に腰かけると私は二の腕のマッサージをしながら彼女を見た。


「おいおい、零れてるぞ。ストップ、ストップだ。流石にお茶を入れる機能くらい追加したいな、能力拡張カードって今どれくらいするんだっけ?」


「新品の販売、製造はすでに終了しております。中古の相場ですと一枚4万円ほどです」


「そんなにするのか、お茶を入れるだけでかなりかかるな」


それもそうだろう、彼女ももう10年ほどの前に買ったものだ。今はもう最新のロボットでさえ中古の拡張カードの6枚もあればたいそうなものが買え、さらに彼女よりももっと高性能だろう。お茶を入れることはもちろん、料理のレパートリー、洗濯、掃除、マッサージ、ベットメイク、家のことなら何でもできてしまう。しかし私は何とはなく新しいロボットを買うことはしなかった。


「ついでに料理のレシピのカードも買ってくるか。もう2、3種類はレパートリーが欲しいな、さすがに」


「能力拡張カードが4枚ですともう少しお金を出せば私よりも最新のいいロボットが買うこともできます」


「いや、いいや。まだ当分君には働いてもらうよ。お金ももったいないしな」


「ありがとうございます。今、食器をご用意します少々お待ちください」


彼女はそう言って台所に戻った。少しするとテーブルにはパンとスクランブルエッグとサラダと焼けたソーセージとコンソメスープが並び、私が入れたお茶がそろった。「いただきます」と私が言い、彼女は「お召し上がりください」と言う。久々の自宅での夕食である。パンの甘く焼けたにおいが私の鼻を刺激して思わず手を伸ばす。それから、コンソメスープをスプーンですくい飲む。間にスクランブルエッグやソーセージなどを食べる。夕食の後は万能ビタミン剤を飲み一息ついた。食事はいつも通りの味だったがいつもよりもおいしい気がした。彼女が食器を洗っている間、また私は納屋に行き彼女の関節パーツをすべて持ってきた。


「では、よろしくお願いします」


そう言って彼女はスリープモードに切り替わる。スリープモードに切り替わるとまるで本当の人間が眠っているようである。まずは彼女の関節をすべて外し、新しいパーツを潤滑剤を薄く塗りはめ込んでいく30分もすればすべてのパーツは彼女の手足になる。外したパーツは出張ロボットがいれば持っていてくれるのだが、今日のところは玄関あたりにおこう。明日にでも回収ロボットをよんでおけばいいだろう。すべての作業が終わると彼女をスリープモードから起こした。


「おはようございます」


「おはよう、関節の調子はどうだ?」


彼女は手足を軽く動かして「特に問題はありません」と答えた。私はそれを聞くと頷き風呂に入ることにした。

どんな時代が変わっても風呂の心地よさは変わらないものだ。100年前もこの温かさは変わらないだろう。こんなにも発達した人類がわざわざ裸になってニホンザルなどと同じように湯につかるというのもおかしな話ではあるが。宇宙なんかでも今の時代風呂はあるらしい、私は入ったことがないからわからないが一度は行ってみたいな。私は風呂が好きだ。とあれこれ考えているとだんだん視界がぼやけてきた、少しのぼせてきたようだ。のぼせて溺れてしまってもすぐに彼女が助けてくれるので溺れてしまっても問題はないが、大の大人が裸で女性の格好をしたロボットに助けられるのは絵的には好ましいないのでそろそろ出ることにする。


「さて、ちょっと雑談でもしようか」


「はい、旦那様」


「君がうちに来てからもう何年くらいになるかな」


「今日で10年と7か月7日になります」


「10年半か、そうりゃかなりお世話になってるな。ところで、ロボットの買い替え周期の標準はどのくらいだったかな?」


「メーカーは標準的に3年が推奨されています。しかし、実際は2年2か月ほどで新しいロボットに買い替えらているようです」


「そんなに早いのか。それじゃ何だ君はざっと5世代前のロボットになるのか、まさにアンティークだな。パーツなんかも値上がりするし、拡張カードも高いし何とかならないもんかね」


「御心配には及びません、旦那様。私のパーツは間もなく市場からなくなります。」


「なくなったら、もっと探すのが大変になるじゃないか」


「いいえ、逆です。そうなれば旧式である私を破棄し、新しいロボットを買うことができます。最新型のロボットのパーツの価格は私の10分の1以下です。交換も私よりも頻度が少なく、手間もありりません。大変経済的です」


「・・・」


「新型であれば料理のレパートリーも500円ほどでダウンロードでき拡張性やメモリーは私とは比べ物にならないほどです」


「新型を買ったら君はどうなる?うちの納屋は君を入れておくほど大きいわけではないが」


「ご安心ください。下取りプログラムがございます。旧式のロボットであれば新型の20%で買い取り可能です」


「・・・なるほどな、よくわかった。今日は眠くなったから寝るよ。明日は休日だがいつも通りに起こしてくれ。」


「かしこまりました。お休みなさいませ、旦那様」


そう言って私は寝室に歩いて行きベットに潜る。明日は特に予定はないがいつもの時間に起きてゆっくりするとしよう。それではおやすみ。


「おはようございます。今日の朝ご飯は和食と洋食ご飯どちらになさいましょう?」


 ベットから起きて、顔を洗いリビングに降りてくると、彼女はいつものセリフを表情一つ変えないで毎朝聞いてくる。


「和食で」


「かしこまりました」


 短いやり取りをすまして席に着き、いつもと同じ料理が運ばれてくるのを待つ。いつも通りの朝だが今日はなんだかいつもとはいつもと違う。彼女が朝食を運んでくると私は彼女に言った。


「なぁ、今日は買い物に付き合ってくれないか?」


「買い物ですか?」


「そう、買い物」


「私は旧式ですので連れて歩くのはお勧めいたしません。おかしな人だと思われてしまいます」


「どうせ街中にはロボットしか歩いてないんだから大丈夫だろう。たくさん買って荷物が多くなるんだ手を貸してくれよ」


「荷物が多くなるのであれば運送ロボットサービスがありますが」


「ないな、知らないなそんなもの」


「昔からあるサービスですが」


「存じ上げないな。とにかく今日はたくさん買い物をする、そして、お前がそれを手伝う、わかったか?」


「それがご命令とあらば」


「そうそう命令だ、ご命令。なにただで手伝ってもらうつもりはないぞちゃんとお礼はするつもりだ。そうだな・・・そうだ、新しいロボスーツを買おう」


「今の販売しているロボスーツでは旧式の私では耐熱の問題があります」


「そうか。じゃ行ったら考えるか」


「旦那様、最新式の娯楽対戦兼家事ロボットですと能力拡張カード4枚分でご購入できます、それにロボスーツの耐熱の問題もありません」


「いらない」


「そうですか」


「よし、決まりだ、今日は買い物をする。お前のパーツを買って、お前の気に入りそうなものも買って、ついでにお前と私が一緒に遊べそうなものも買う。いいな?」


「かしこまりました」


こうして私達は出かける準備をする。彼女は特に何もせずに椅子に座って待機している、自分身支度が終わるまでそのままなのだろう。支度が終わると彼女を呼び、外に出た。

ロボットができてからこの世界和本当に素晴らしい世界になった。人間がする面倒な仕事は機械がやってくれるから人間は苦労をする気遣いが無くなったのだ綺麗な街の綺麗な家一歩も家から出なくともほとんどのことをロボットが代わりにやってくれるのだから人間は毎日楽しく遊んでいればいいのだ。

まぁ、そんな中、汗水たらしながらロボットと一緒にクソ重いパーツを買って歩いている人間もいるぜひほっといておいてほしい、好きでやっているのだから。


「かなり買ったな」


私は彼女に呟いた。それもそうだろう、四肢パーツと結合部分の細かなパーツそれにロボスーツに拡張カードさらには拡張カードを読み込むための専用のディバイスまで買ったのだから。しばらく歩いていると会社の近くまで来てしまった。


「腹減ったな」


「データによりますとこの近くに旦那様の行きつけの店があるはずですが」


「ああ、あそこはつぶれたよ。店主不在でな」


「そうでしたか、メモリーに記憶しておきます」


すると突然路地裏のほうから怒鳴り声が聞こえてきた。少しするとガラスが割れるような音と何かがぶつかるような鈍い音がした。


「何だ、誰かが喧嘩でも始めたか」


「音の方角から察するに旦那様の行きつけのお店から聞こえますたが」


「とりあえず行ってみっか」


爺さんの店に歩いていくとかなりひどい状況であった。窓ガラスは割れ、その近くには足の折れた椅子が落ちて、中のほうからはまだ怒鳴り声が聞こえていた。


「ああ、本当だ。こりゃ酷いな、爺さんの店の窓ガラスがすっかり割れちまってるじゃないか。とうとうロボットが人類を滅ぼす為に動き出したかな?チキショー、負けねーぞ、人類の底力を思い知らせてやる。あれだったら過去に人間を守るロボットだって送ってやる」


冗談含みにそんなこと言いながらさっき買った物をその場において店に近づいていく。ロボットがもし暴れているのであればまずロボットセンターに連絡しなければならないし、強盗がいるならばロボット警察センターに連絡する必要がある。こんな時代に強盗なんているわけはないがとりあえず店の中の様子を窺うとしよう。


「人を年寄り扱いして老人ホームなんぞに叩き込みおって!見くびるんじゃないぞ!ワシは生涯現役じゃ! いいか!お前ら!ここの店の定食はわしのもんじゃあ!」


「・・・」


私は彼女を見ながら言った。


「潰れたというのはどうも思い違いだったみたいだ、今日はあの店に行く事にしよう」


「旦那様、店の中は危険です。ガラスが飛び散っています」


「あれは店側の演出なんだよ。さて今日は何を食べるかな」


店の中からはまだ爺さんの声が聞こえる。やっぱりあの爺さんじゃないとこんな店は成り立たないよなという安心感と誇らしさが胸の中にあった。


「効率性!?知ったことか!ワシは好きで店やってるんじゃああ!!」


そう好きでやってるのだ。好きでやっているものに効率も時代の流れも関係はないだろう。今日はここで飯を食べたらすぐに帰って彼女に拡張カードをインストールしよう。なに、私も彼女と住み続けているのだから。

「ロボットたち」で連載中作品です。良かったら読ん見てください。他の作品も書いていきます。

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― 新着の感想 ―
[一言] ポンコツロボット可愛いですね
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