後編
桜と別れ、家に着くと、冷たい玄関を開ける。
「ただいま、っと。」
鞄をおいてカーディガンを脱ぐ。
冷蔵庫に向かって、中からペットボトルの水を取り出す。
一口飲んだら戻して、部屋に戻った。
「…………・・さん。私、友達、できちゃった。」
「…楽しかった,ナー。」
布団の上で、つぶやいた私は部屋着に着替え、目を閉じた。
朝、学校に入りクラスに向かう。
『あんな奴いたか』
という視線がすでにいたい。
クラスの扉を開けて自分の席に座る。
「えっ…?」
私の前の席の子が驚いた表情でこっちを見た。
「えっと、い「lovely!!」」
「おはよう、苺。」
「おはよ、桜。」
桜は笑顔で私に挨拶をする。
クラス中が一日、私のことをちらちら見る。
声をかけてくれる子もいる。
先生までもが私だと一瞬じゃ気づかなかった。
桜の光を、少し分けてもらえたみたいだった。
ああ、まぶしいなぁ。
窓の外には太陽が輝いていた。
「ほんとに来てくれたのね!嘘かと思った!」
放課後、屋上にいる私のもとへ桜がやってくる。
「……水曜日は、友達と帰るひなんじゃないの?」
「ああ、あの子たちね。私をお財布だとしか思ってない人たち。
苺といたほうがよっぽど楽しい。」
そう言ってまた、手慣れた手つきでタバコに火をつけた。
「ねえ、なんでそんなの吸ってるの?」
「これ?私のいた国じゃ今の年齢でも吸ってよかったのよ。」
「そうなんだ。」
風が吹いて太陽が温かい。
しばしの間。
「苺は?」
「ん?」
「なんでここにいつも来るの?」
「……今日でやめるの。ここに来るの。」
「?そう、なの?」
「うん。ここにいる意味、なくなったから。」
首をかしげて大きな目を丸くする桜。
私の言ってることが、質問の答えになっていないという表情だった。
「私ね、ここには死にに来てたんだよ。
毎日毎日、ああ、ここから飛び降りたら、死ねるなあ、って。」
「…………」
「でもさ、私、友達っていう友達とか、中いい人とか。子の学校にはいなかったの。つまり、私がここから飛び降りても、だれも悲しまないし、だれも喜ばないし、なんにもないんだろうなって。」
「クラスの端にいたやつが、勝手に自殺した。」
「なんでだろうね、それよりさ。」
「そうなると思わない?」
桜は困ったような悲しいようなよくわからない表情で私のことを黙ってみていた。
「でも桜がね、友達になってくれて、今日、こんなかわいい格好で来て、クラスの人たちともしゃべって。『クラスの端にいたやつ』じゃなくなったの。」
「……だから、自殺を考えるのをやめる、ってことだよね。苺…?」
桜はやさしいな。
こんな私のことを心配して、悲しんでくれてる。
きっと私が死んだら悲しんでくれる。
だから、私は・・・。
「さよならだよ、桜。ありがとう。」
柵を越えて、私は目を閉じる。
お母さん。ごめんね。
私はそっちには行けないや。。
近かった太陽が遠ざかった。
―BAD END-
苺からしてみれば最高のHappyendでした。
桜かわいそう。
誤字脱字報告してくれるとうれしいです。




